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2日目の9 ローズの過去とシェリーの過去

まだ2日目だというのに思ったより長くなりました。


ちょっと更新遅れてすいません。


四人は管理棟を後にした。

 「メィリィ・・・

 あんたはどう思うんだい?」


歩きながら尋ねるナターシャに、

メィリィはすぐには答えない・・・。

少し考え込んでから、ゆっくりと答えた。

 「・・・んん、

 あの人たちは何か知ってる思う・・・。

 ただ、犯人は受講生の中にいるて話もすごく判りやすい。

 それよりアタシが気になるのは・・・

 ネェ? みんな蠱毒って知ってるカ?」


他の三人は興味深くメィリィに耳を傾ける。

 「蠱毒・・・巫蠱の術ともいう、

 古い呪術ね・・・、

 大きな甕の中に、

 蠍や蝮、毒虫や蝦蟇を入れて互いに殺しあいさせる・・・。

 最後に生き残ったモノからは、

 最高に効き目の有る猛毒が取れた言うよ・・・。」


シェリーは、

メィリィの言わんとすることが理解できない。

・・・勿論、シェリーだけでもないのだが。

 「東洋の古い迷信ですね?

 それが何か?」

 「迷信かもしれナイ・・・。

 でももし、

 アタシたちがその蠱毒の材料だとしたら・・・?」

 

 「何だって!?」

 「何ですって!?」

ナターシャとシェリーの反応はほぼ同時だった。

無理もあるまい。

それが事実かどうかはともかく、

メィリィの考えは、

二人にとって余りにも衝撃的すぎる。

しかも、そう考えれば一つの筋道が見えるのだ。

 「待ってください、じゃ、じゃあ、

 試験内容を発表しないのも、

 戸籍を抹消されたのも、全て・・・ 」

 「・・・最後の一人にまで絞るが目的かもネ・・・?」


四人はそのまま口を閉ざしてしまった・・・。

ナターシャもシェリーも・・・

いや、メィリィでさえも、

他人を蹴落としてでも目的を達成する気でいた。

だが、ここにいる全てのものと殺し合いをするとしたら・・・。

ここにいるのは、

同じ目的を持つ同志という連帯意識が芽生えかけ始めていたのだが・・・、

もし、メィリィの仮説が正しければ、

今、それぞれ自分の周りにいるものは全て敵となる。

彼女達は、

いざとなったらここにいる者を自分は殺せるのか?

・・・その覚悟を自らに問いかけていたのだ。


・・・夜の闇の中を、

さらなる暗い空気が四人の上に覆いかぶさる・・・。

 

 

 「ねぇ、メィリィ!」

その重い空気をぶっとばすように、

天真爛漫なローズの声が夜道に響き渡る。

メィリィだけでなく、

シェリーにナターシャも驚いたようだ。

 「な、ナニ?」

 「あたしはメィリィ殺す事になったら逃げるからね?」


唖然・・・。 

しかし、メィリィは最後にプッと吹きだしてしまう。

 「アッハッハ、

 ・・・わかたよ、アタシもローズと戦うことなたら、逃げる・・・

 約束するヨ。」

 「ええ、一緒に逃げましょう!」

 「でも、ローズ、アナタの目的はどーするカ?」


ローズは歩きながら器用に腕組みして考えた。

本人は絵本の主人公の気分でも演出したいらしい。

 「う~ん、・・・なんとかなるでしょ?

 いざとなったら、

 この島でメリーになった人から秘密を聞き出す・・・とか!」


それを聞いてナターシャも大笑いした。

 「それ、いいアイデアだな!?

 あたしも混ぜてよ!

 三人がかりならなんとかなっかもな!?」

 

当然、

その後はシェリーに視線が注がれる。

どうすんの?

 「わ・・・私は!

 ・・・ほ、保留でお願いします!

 そりゃ、無益な殺生はしたくないですけど・・・!」


この先、実際どうなるかは、

誰にも予想できなかったが、

場の空気だけは明るくなった。

それにナターシャも、

そろそろローズの存在を重く受け止めるようになってきた。

 (戦闘はムリだろうけど、

 それ以外ではいい味出してんじゃん?)


・・・だが、そんなローズへの先入観は、

後々裏切られる事になる。

無論、メィリィやシェリーにしても、

自分の奥の手は早々見せるつもりもないが、

子供のローズに、

「あんな」能力や過去があるとは、

誰にも想像できやしなかったのだから。

・・・それは徐々に明らかになっていく・・・。


ナターシャは上機嫌のまま、

調子に乗ってローズの顔を覗いてみる。

 「そういえば、さっきもカーリーのとこで勇ましいセリフはいてたな?

 例の猟奇殺人犯をやっつける自信あるのかい?」

だが、他の人間が陽気になりかけていたのにも拘らず、

ここでローズは沈痛な声を絞りだした。


 「・・・アイツはあたしが殺すわ・・・!」

 


 「お、おいおい、

 まるでヤッたのが誰だか知ってるみたいなセリフだな・・・!?」

ローズは無言のまま歩き続ける・・・。


 「ローズ・・・まさか?」

メィリィが心配そうに声をかけると、

ようやくローズは強い調子で言葉を発した・・・。

 「・・・絶対かどうかわかんないけど・・・アイツの仕業・・・、

 アイツ本人か、

 それとも別の同じ『化け物』なのかはわかんないけど、

 あれは・・・

 私のパパとママを食べたヤツと同じだわ!!」


彼女達をさらなる衝撃が襲う。

 「何だって!?

 あれは・・・太ももを持ってかれたグェンは食べられたってぇのか!?」

 「そ、それより、ローズ、

 アナタ前に殺さなければならない言ってたのは・・・!?」


道は明るくなっていた・・・。

食堂の明かりが彼女達を照らし始めていた。

 


食堂の入り口を前にして、

一同は足を止めてローズの答えを待つ。

しばらくしてからローズはにっこり笑って微笑んだ。

その声は再び明るい。


 「ごめんね、みんな?

 それより気をつけてね?

 もしソイツなら、

 外見に騙されちゃダメよ?

 いくら人間の格好に見えたとしても・・・。」


ローズはそれだけ言うと、

まだ何人かの受講生が騒いでる食堂に入っていった。

食堂は大きく分けて、

完全屋外スペースと、

調理場所と同じ屋根の下のスペースとに分かれている。

屋根はあっても、

壁は調理部門側とその対面にしかないので、

建物との境にいれば、

そこにいる全てのものに声を聞かせる事が出来る。

ナターシャは大声で、

カーリー達の対応を伝えた。

それに抗議の意を唱えるものや、

疑問の声を上げるものなどいたが、

もちろんそんなことはナターシャの知ったことではない。

 「・・・当面、あたし達は二人一組で寝泊りするよ!

 アンタたちは好きにしな!

 まぁ、これからコンビ組む相手が安全なヤツかどうかは、

 神のみぞ知る・・・

 てヤツだろうけどね?」


実際、これ以上はどうしようもない。

 「ローズさん?

 ここにいない人たちはどうします?

 あ・・・、危険を知らせる事も大事ですが・・・、

 あなたの嗅覚で、彼女達を調べられたら・・・。」

 

シェリーの案ももっともではある。

だが、

 「ん~、でもお風呂やシャワー浴びちゃったらわかんないよ?」

ということで見送られた。

ただ実際、知らせに行く事自体は人道的(?)なので、

二人一組で、食堂にいなかったと思われる受講生の部屋を尋ねに行った。

もっともらしく、メィリィとシェリーが、

「部屋に盗聴器や不審な物音・備品がないかどうか」確かめる振りをして、

手がかりが残ってないか確かめる役を行った。

もちろん、中には入室すら拒む者もいて、

有力な情報は何一つ得られなかった。


その後、彼女達は情報交換を終えた後、

部屋の引越し作業に入る。

メィリィは昨日の不審な物音が気になったのだろう、

ローズの部屋に移動した。

ナターシャはシェリーの部屋に入った。

ナターシャの方が荷物が身軽だという事らしい。

 


それに口では強がっていても、

やはり細身のシェリーでは、いざという時は心細すぎる。

なんだかんだで、

シェリーは心の中で気持ちよくナターシャを歓迎した。

ようやく、長い一日が終わり、

二人ともベッド(ナターシャはソファー)に入ってから、

シェリーはメガネを外してナターシャに声をかけた。

 「ナターシャさん・・・。」

 「ああ?」

 「私、ローズさん、

 あんな小さい子がこんなとこに来てどうするんだって思ってましたけど・・・、

 あんな子にも複雑な事情や過去があるみたいですね・・・?」

 「・・・そうだね、

 あたしも見くびってたよ・・・。

 でも、あんたもどうなんだい?

 あたしから見ればあんただって・・・。」

 「仰る事はわかります・・・、

 私も悩みましたから・・・。

 私の場合は姉・・・ですね。」

 「お姉さん? どうしたんだい?」

 「私には二つ違いの大好きな姉がいたんですけど・・・、

 ある日行方不明になりました。

 数日後見つかったんですけど、

 意識不明で植物状態になり、

 三年前に亡くなりました。」

 「・・・残念だったね・・・、

 それでどうしてここに?」

 


 「姉が失踪した時、

 私も幼かったんですが、

 父が買ってくれたアンティーク人形を取り合って、

 大ゲンカしてしまったんです。

 そして姉はその人形を持ったまま行方不明に・・・。

 見つかったときは、人形がなくなってました・・・。

 でも、その後、

 不気味な噂が街に溢れて・・・。」


 「不気味な噂?」

 「ちょうど、姉が見つかる前後、

 街で何人かの人間が、歩き回る人形を目撃したと・・・。

 その人形の特徴が・・・

 私たちが取り合ってた人形と同じようなのです・・・。

 それどころか噂によれば、

 その人形が、

 『シェリー、どこにいるの、ごめんなさい』

 『シェリー、おねがい、でてきて』

 とつぶやいていたというのです・・・!」


 ゾワワッ!


ちょちょっと待って!

と、ナターシャは完全に油断しまくっていた。

まさか戦闘能力も経験も低そうなシェリーから、背筋が逆立つような話が出てくるなんて全く想定していなかったんだから無理もない。

グロやスプラッターには耐性のあるナターシャも、科学で説明できないオカルト事象には免疫がないようだ。


シェリーの最後の話はあまりナターシャの耳に届いていなかったかもしれない。

 「最後には、

 その人形かどうかはわかりませんが、

 赤いフードの男が、

 人形を抱きかかえて、

 霧の街に消えていったという話まで・・・。」

 「・・・。」

 

 「メリーとは、

 人形であるという説もありましたよね?」

 「つ、つまりあんたは、

 メリーになりたいというよりも・・・。」

ようやくナターシャは会話に応じることに成功した。


 「そうですね、

 できればあの時の真実が知りたい、

 メリーの世界に入れば何かわかるのではと思って・・・。」

 「・・・他人の人生をどうこう言うほどあたしは立派なもんじゃないけど・・・、

 まずは、自分の命を大事にしなよ・・・、

 お姉さんもそう思ってるんじゃないか?」

 「・・・そうですね、

 危なくなったら私も逃げますわ・・・。」

 「なら、もう寝たほうがいいよ、

 明日も早いんだ。

 あたしは職業柄、

 いつでも眠れるようなカラダにしてあるからね、

 先に眠るかい?

 4時間経ったら起こすよ、

 交代で眠ろうぜ?

 あたしが先でもいいし・・・。」

 「ではお言葉に甘えて、

 お先に眠らさせてもらいます。

 私とナターシャさんの二人がかりのトラップがあるから、

 まずは入って来れないとは思いますが・・・。」

 「ま、油断は大敵ということで。」

 「そうですね、

 では失礼してお休みなさいませ・・・。」

 「ああ・・・いい夢を・・・。」

 

ナターシャ

「ね、眠れねぇ・・・!」

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VRoid版メリーさん幻夢バージョン
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