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2日目の8 カーリー達の反応

そうそう、

この物語は推理ものではありませんから犯人捜しをする必要はありません。


メィリィは、

自分の所見を他の三人に説明し、

ナターシャは頷きながら改めて遺体を観察する。

 「・・・しっかし、

 あたしも爆弾で吹っ飛んだカラダを何回か見てるから耐えられるけど、

 メィリィだっけ?

 アンタも落ち着いてるねぇ? たいしたもんだよ。」

 「・・・チャイニーズマフィアえげつナイよ。」


その言葉に、

「納得」とでも言うような顔でナターシャはメィリィを見る。

しかしメィリィは、

小さなローズの方に注意が向かっていた・・・。

ローズはメィリィたちの会話など耳をもくれず、

一心に遺体の現状に見入っていたのである。

並みの集中力ではない・・・いや、

死体を見ても何の恐怖を抱いている風でもない・・・。

ローズもこの歳で、

既に多くの者の死を見つめてきたのだろうか?


 「あ・・・あの、あの・・・け、警察に・・・?」

シェリーが一番普通の反応だろう、

・・・しかし、

残念ながらここはそんな甘い島ではない。

ナターシャの冷たい言葉が、シェリーをその現実に引き戻す・・・。

 「警察? ここ、警察あったっけ?」

 「あたしたち、ここにいても仕方ナイね、

 カーリー達に報告しようカ?」


恐らく、最後にメィリィの言った言葉が最も現実的な対応に思われる。

ようやくシェリーはカラダを起こし、

4人はグェンの部屋を出た。


カーリー達が常駐している管理棟は、

食堂の少し先にあるが、やはり大して距離もない。

途中でナターシャが、

まだ食事を楽しんでる他の受講生に事件を知らせた。

 「・・・あたし達はこれからカーリー達に報告してくる!

 誰がやったかわからないが、あんた達も気をつけるんだね!」


当然、食堂は軽いパニックに陥ったが、

ナターシャはそんな事、気にしない。

 詳細が知りたければ現場を見て来い!

と、そのまま4人は管理棟に向かう。

管理棟は、

面積そのものは広くないが、

高い塀に囲まれている4階建ての建物だ。

灰色のコンクリートで覆われた無機質の建造物・・・。

まるで秘密警察か捕虜監禁所のように見えなくもない。

正面入り口のインターホンを押すと、

しばらくしてから女性の声が返ってきた。

 「はい? どういたしました?」

今日何度も聞いた特徴的な声、

それは黒衣のカーリーの涼やかな声だった・・・。

 

 「あ、あ、あ、あの、大変なんです!

 しゅ、宿舎で人が殺されたんです!」

シェリーは、

恐怖を感じるカーリー相手でも、

彼女なりに必死に勇気を振り絞っているのだろう。

彼女自身、この程度で怯えるわけにはいかない事はよく判っているのだ。


 「まぁ、わざわざ知らせに来てくれたのです?

 今、門を開けますわ。」


四人は建物入ってすぐの、警備室のような場所で待たされた。

そこには近隣で雇われたようなガードマンが詰めていたが、

彼は部屋が狭くなるせいか、

それともカーリーの指示があったのか、ガードマンは外へと出て行った。

カーリー、マルコ、ルキが降りてくるのにそれ程時間はかからない。

今度はナターシャが事の経緯を説明する。

カーリーは、根気よくナターシャの話を聞き終えると、

 「・・・判りました、ご苦労様。

 部屋の処理はこちらで手配しますから、

 どうぞ後はゆっくりとお休みなさい。」


・・・は?

さすがのナターシャやメィリィも、

あまりのそっけなさに二の句が告げない。

もちろん、シェリーが黙ってない。

 「ちょ、ちょっと待って下さい、

 そ、それだけなんですか?

 所轄の警察に連絡とか、警備体制を引くとか・・・

 なにかこう・・・緊急の・・・!?」

 「・・・あら?

 私たちのほうこそ理解できませんわ・・・、

 みなさん、メリーになるためにここに来てるのでしょう?

 受講生が一人減ったからどうだというのです?」


そのカーリーの言葉に、

ナターシャは事件の背景を推理したようだ。

そして興奮してきたらしい、

肩の関節をグリグリ回しながらカーリーを問い詰める。

 「・・・なぁ、もしかして、

 今度の事はあんたたちの差し金かい?

 大して驚いてないもんな?

 そーかよ、そういうことかよ、

 ・・・いくらなんでもえげつねーよ!

 そりゃあ、メリーになるにはこの程度の事、

 想定すべきなんだろうがよぉ!?」


さすがにカーリーも、

ナターシャの剣幕に、両目をいつも以上にさらに大きく開いて釈明する。

 「まぁ、とんでもない!

 私たちは無関係ですわ。」

 

 「信じられるかよ!?

 昼間だってあんなに簡単に人を殺してるじゃねーか?

 それとも、何か?

 『組織』でなく個人の行動とかってか?

 ・・・確かにあの死体は、

 殺すことだけが目的じゃないだろう?

 あんな猟奇的な殺害方法は化け物か変態か・・・、

 ・・・そういや、この場にもいそうだな!?」


ナターシャの目はマルコに向かう。

時間差で、シェリー達、

さらにルキやカーリーも視線をヒゲのオヤジに注ぐ。

当のマルコはキョロキョロ首を動かして慌ただしい。

 「お・・・おいおい? 

 オレは午前中に・・・すませたばっかだぜ?

 第一、カラダはメチャクチャになってんだろ?

 いくらなんだってオレにも限度がだな・・・!」


ルキは無表情なまま、マルコの肩に手を置いた。

 「・・・しょうがない、白状しろ。

 今なら罪が軽くなる。」

 「ばぁか! 真顔で言うな!

 お嬢サン達が信じちまうだろがぁ!!」

と言いながらもマルコは笑ってる。

本当に彼らの仕業ではないのだろうか?

 

 「またあなた達は・・・不謹慎ですよ。」

カーリーはため息をついた。

こめかみを手で押さえて、本気で彼らの言動に頭を痛めているようだ。

・・・そしてあらためてナターシャたちに向き直る。


 「身の潔白を証明するつもりもありませんが、

 マルコはずっとこの建物の中にいましたよ。

 それに何度も言いますが、

 私たちはこの島での講義期間中、

 あなた達の自由時間にまで関知しません。

 たとえ、あなた達の間で殺し合いが起きたとしても、止めもしませんよ?

 ・・・過去にもありましたしね。」


シェリーがわめく。

 「えっ? 待ってください?

 犯人は受講生かもしれないってことですか!?」

 「・・・そういうこともあり得るという話です。

 まだ試験方法は発表する予定もないですが、

 受講生の中には競争相手を減らして、

 自分の合格率を上げよう、

 と考えてる人だっているかもしれないでしょう?」

 


・・・確かに冷静に考えれば、

その可能性も十分あり得る。

だが、

カーリーたちの話も信用できるかどうかは・・・。


ここで、しばらく会話を傍観していたローズがマルコを見上げた。

 「ヒゲのおじさんはやってないわ。」


一同の目は小さいローズに向けられた。

マルコは嬉しそうだ。

 「ローズ、どしてそう思う?」

メィリィがローズの顔を覗き込んで尋ねる。


 「血の匂いがしないもの、

 ・・・シャワーやお風呂に入った後でもなさそうだし。」


ヒュ~♪ 

思わず口笛を鳴らすマルコ。

 「お嬢ちゃんやるなぁ? 今から見所あるぜ!」

そして相方(?)ルキの、こなれた突っ込み。

 「・・・お前、

 いくらなんでもこんな小さいコに・・・ケダモノ。」

 「いい加減にしろ、この野郎、

 オレはロリコンじゃねぇ!」


普段なら、

こういう下品な会話にもついていけるナターシャだが、

今はそれどころではない。

ローズの先程の聴覚や、

今回の嗅覚に感心しながらも、次の行動を起こすべきだろうと考えた。

 「わかった・・・

 取り合えず、アンタ達の立場は理解した事にする。

 でも、アタシたちの行動に関知しないってことは、

 アタシ達で犯人探しをしても・・・

 それから、

 例えば二人一組の部屋割りにしても問題ないわけだな?」

 「ええ、もちろんですよ。」

 

メィリィも聞きたいことがあるようだ。

カーリーの正面に立ち彼女の黒い瞳を見つめる。

 「アナタたちは受講生のデータ持ってる・・・、

 今回みたいな手口で殺しスル者、知ってるか?」


だが、

この問いについては、いつものように涼しげにカーリーは微笑むだけだ。

 「ごめんなさい、

 存知ませんけど、知っていたとしてもお教えするわけにはいきません・・・。

 全てあなた達で解決してくださいね。」


ナターシャは振り返り、

他の三人に「行こうぜ・・・。」と促すも、

ローズは最期までその場に立ち尽くしカーリーを見上げていた。

 「先生? 見つけたら殺していいのね?」


・・・涼しげ・・・いや、

というか、今回はローズの年齢に合わせたのか、

カーリーはいつも以上に優しい笑みを浮かべる。

 「・・・ええ、どうぞ、

 期待しているわ、ローズ・メリー・・・。」

 


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