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2日目の1 マルコ=シァス

 

2日目・・・最初の講義。

朝の強い日差しが大地を照らす。

食堂の隣には、

広めのプレハブ小屋が用意されていた。

クーラーなどはなく天井にいくつか扇風機がまわっている。

南国らしいといえば南国らしい。

もっとも、

屋内や日陰に入れば、

それほど暑さは感じないので不快感はない。


すでに受験生は全員集まっていた。

プレハブ小屋には黒板が備え付けており、

発展途上国の学校を連想させる。

教壇らしき位置に、

黒衣をまとったカーリーがやってきていた。


 「みなさん、おはようございます。

 昨夜は眠れましたか?

 では、本日より早速講義に入りたいと思いますが、

 改めて自己紹介から始めさせていただきます。

 ・・・私がこの島の責任者、

 『黒の神殿』のカーリー・・・

 そして、みなさんの指導役として、

 3人のスタッフを紹介します。」


プレハブの戸口から紹介された者達が入ってきた・・・。

なんと三人とも男だ。

 

ザワザワと受験生達が落ち着かない。

確かに男子禁制とは言われてないが、

その場にいる数多くの「メリーさん」候補達には、

あまりにも意外な事だったろう。

しかも先頭は、

迷彩柄のベストを着たヒゲまみれの野獣のような男だ。

 「ほぉーっ!?

 いいねぇ、こんなに華やかだとぉ?

 わざわざ、

 海を越えて来た甲斐があるぜぇーっ!

 ・・・と、ゆーわけで、お嬢さん方、

 オレの名はマルコ=シァス、

 マルコと呼んでくれ!」


「革命戦士かよ!」

と突っ込みたくなるような風采のマルコは、

おおよそこの場では完全に浮いている。

先程、野獣といったが、

むしろ狼男のイメージかもしれない。

程なくして、ざわめきは落ち着いたのだが、

二人目の男が口を開こうかと言う時、

いきなりとんでもない騒ぎが起こった。

 

 「うぁあああ!!」

受験生の中から叫び声があがった!

髪の長い女性が一人立ち上がり、

教壇に向かって突進し始めたのだ。

 「きゃあっ!」

 「はっ、はさみっ!?」

周りの女性たちが怯えるのも当然だ。

暴れだした女性の手には、

異様に巨大な切り裂き鋏があったからだ。

彼女は奇声をあげながら、

その危険な凶器をマルコに突きたてようとした!


・・・だが。

その巨大な切り裂き鋏が、

マルコの顔面に突き立てられることはない。

彼の左手が、

女性の右手首を完全に押さえつけてしまったからだ。

そして同時に、

マルコの右手が髪の長い女性の顔を鷲づかみにする。

 「はッはなぜぇ!!」

女性は空いている左の腕でマルコを引っ掻こうとするが、

マルコはニヤニヤしてまるで意に介さない。

 

 

 「ハッハ~ン、

 ・・・君はとっても恥ずかしがり屋さんみたいだねぇ~?

 メリーになったら、

 野郎共をこのでっかいハサミで切り裂いていくつもりだったのかあ?

 いいねぇいいねぇ?

 ・・・ま、生きていたら、またチャレンジしてくんな?」


    グシャァッ!


・・・頭蓋骨が砕けた・・・。

あれだけ騒がしかった髪の長い女は、

ダラーンと腕を落とし、

二度と声を発する事はなくなった・・・。

数秒後、

ガチャンッ・・・、

と鋏が床に落下する・・・。


マルコはそのまま、

女を抱きかかえ表に出てゆこうとして、

戸口の辺りで振り返った。

 「・・・取り合えず、

 コイツ捨ててくっからよ、

 自己紹介続けてくれや?

 それより・・・カーリー?

 アンタも人がわりぃなぁ?

 どうせ、こうなるのは『わかってた』んだろぅ?」


これだけの騒ぎの後なのに、

責任者であるはずのカーリーは、

涼しい顔のままだ・・・。

 「フフフ、

 最初からその子には縁がなかったのですよ。

 それより、マルコ?

 言っときますけど、

 ここではセクハラ発言禁止ね。」

 「はぁん?

 仮にも『メリー』を目指してる女が、

 そんなネンネでどーすんだよ!?」

 「いいえ。

 ・・・わたしが嫌いなのです。

 わ か り ま す ね ?」

 


 

・・・マルコは、

カーリーに強くは出られないらしい。

頭を片手でボリボリ掻きながら笑う。

 「・・・ハイハイ、わかりましたよ。

 そんじゃ、また後でな・・・。」


受験生達の大半は、

あまりの急展開のため、

大人しく座っているままだ。

・・・いや、

ショックで身動きすら取れない。

ほんのわずか、

豪胆な者だけが平然としている。

例えば・・・ローズ・・・、

彼女は豪胆なのか、呑気なのか・・・?

そして怯えてはいるが、

自分がその状態でいることに耐えられないメガネッ子、シェリーが手を挙げた。

 「あ、あのっ、

 質問はよろしいのでしょうか・・・!?」


一同の目は、

勇気有るシェリーの行動に注がれた。

カーリーはやはり、

涼しげな笑みを浮かべたまま優しく答える。

 「ええ、どうぞ?

 ・・・あなたはシェリーですね?」


シェリーは、

なんとか自分を奮い立たせながら立ち上がった。

 「は、ハイ、有難うございます。

 い、今の騒ぎに、

 皆さん落ち着いて対応されてましたけど・・・、

 あ、あんな事はよく起こるのですか?

 わたしには、

 何が起きたのかさえ

 よく理解できないのですが・・・!」

 


 

緊張した白い肌のシェリーに、

浅黒いカーリーの表情は対照的に映る。

 「・・・そうですねぇ?

 なにぶん、ここへは個性的な方が多いから・・・。

 ただ、先程の方はね、

 パメラと仰ったかしら?

 あんまり無闇に他人の過去を喋るのは、

 褒められた行いとは言えませんけれど、

 ・・・もう心臓は止まったようですから、構いませんかしらね?

 パメラは可哀想な女性で、

 13歳の頃、

 近所の男達に集団で輪姦されたらしいの。

 以来、それがトラウマになって、

 まともに恋愛が出来ず、

 ようやく18歳になる頃、

 いい人ができたみたいなのだけど、

 その人は、

 彼女の過去を知らなかったために、

 ベッドでパメラと喧嘩になって、

 ・・・ついに彼女は、

 恋人の男性器を切断してしまったの。

 その時は、

 心神喪失と判断されて病院に閉じ込められたのですが、

 最近退院なさったそうなのですよ。

 ・・・本当に可哀想な方ね・・・

 心から同情いたします・・・。」

 


次回は黒十字団について少し説明があります。

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