1日目の2
気がついたらブックマーク増えてました!
どうもありがとうございます!
・・・船は順調に目的地への旅を続ける。
ローズとメィリィは二人で夕食をとった。
形式的にはバイキング式の食事だ。
ワインもある。
「お料理おいしいね、ここ!」
「デザートがいっぱいあるネ、
料理は炒め物が少ないのがさみしい・・・。」
「やっぱり中華料理みたいのがいいの?」
「あ~あたしの悪い癖ネ、
バイトが中華料理屋なの。」
「へぇ~、そうなんだぁ?
今度、食べさせて?」
「オーケー、
向こうで食材あったら作ったげるネ!」
「うん!」
話は弾んでいたが、
メィリィはこの年若い少女に興味を覚えていた。
本来、メィリィも、
「メリー」を目指すためには他の参加者などどうでも良かったのだが、退屈していたのは彼女も同じだったからだ。
「・・・聞いていいか、ローズ?
何故、アナタはメリーを目指す・・・?」
今まで明るく振舞っていたローズの顔が、
その時初めてこわばった。
一瞬、メィリィは後悔してしまう。
・・・聞いてはいけなかったかな?
しばらくローズは顔を下に向けて考えていたようだった。
「・・・あ、ローズ、
もし答えにくかったら無理には・・・。」
メィリィの気遣いの途中でローズの答えが返る。
「殺さなきゃならない人がいる・・・
今はそれだけ・・・。」
ローズの顔から表情は消えていた・・・。
それが精一杯の反応なのだろうか。
メィリィもそれ以上は聞かなかった。
大体、
恐怖の対象である「メリーさん」になりたがる者などまともな人間のわけがない。
むしろ復讐や、
自分のようなそれなりの目的を持つ者の方がまだ健全だ。
メィリィは周りを見回した・・・。
他の志願者達も、
一癖も二癖もありそうな者ばかりだ。
一体、試験にはどれぐらいの人数が参加するのか?
・・・そして翌日、
船はセントメリー諸島のある小島に着いた。
港のデッキには、
黒づくめのサリーを着た、
妖媚な雰囲気の女性が来訪者達を待ち構えていた。
「・・・ようこそ、皆さん、
私はここの総責任者カーリー・・・、
『黒の巫女』なんて呼び名の方が覚えやすいかしら?
皆さんを歓迎いたしますわ。」
黒い衣に包まれた女性・・・カーリーは、
新たに島へやってきた志願者達を島の中へと案内した。
「・・・みなさん、
みなさんのこれからの予定ですが、
まず、あなた方を試験会場へご案内します。
あ、今日は見学ですよ。
・・・それと、
食堂、購買所、運動場や簡単なジムもあるから、
使いたい方はどうぞご自由に。」
浅黒い肌のカーリーは、
手馴れた調子で各施設を案内する。
途中、一人のメガネをかけた少女が質問をした。
いいとこのお嬢さんみたいな外見だ。
「・・・カーリーさん?
でよろしいでしょうか?
試験とは具体的にどのようなことをするのでしょう?」
カーリーは優しく微笑みながら口を開く。
「フフ、気が早いわね、
呼び名はカーリーで結構よ、
それと・・・今回集まったのは、
貴方たちを入れて、20名・・・。
明日、講義を受けてもらって、
明後日から実技よ。
ま、実技といったって、
研修みたいなもの・・・。
一週間後の最終試験が全てよ。
・・・それに合格したものだけが・・・
メリーになれる。
フフッ、・・・フフフフフ・・・。」
最後に意味深な笑いをカーリーは浮かべた。
話を聞いていたメィリィは静かに考える。
(メリーになれるったってぇ・・・?
警察官や消防士じゃあるまいし、
資格をもらったって、意味ないんじゃ・・・?)
メィリィをはじめ、
その場にいる誰もがこの試験の正体を把握してはいない。
ただ、
「メリーさん」という神秘的な存在に、
各自それぞれ何かの目的を持ってここに集まってきたのだ。
・・・そんな事を考えていると、
メィリィは突然視線を感じた。
顔を上げると、
「黒の巫女」カーリーが、
横目で自分を見つめていた。
「な、なにカ・・・!?」
カーリーの表情は変わらず、
柔らかい笑みのままだ・・・
それが何か得体の知れない感じを受ける。
「・・・ご心配なく・・・
その時になればわかりますよ・・・。」
まるで自分の心を覗いたのかのようなカーリーの言葉に、
メィリィの背中に冷たいものが走った・・・。
ドン ドン ドン
「もしもーし、メィリィー?」
試験参加者達は、
各自、南洋風のバンガローを割り当てられている。
完全個室だ。
寝るときは波の音が聞こえてきて超気持ちいー。
ちょうど、メィリィは、
シャワーを浴びて昼間の汗を流していた所だ。
カラダにピッチリフィットしたタンクトップを着て、戸口に向かう。
「ハーィ?」
「あたしー、ローズぅ!」
「オーケー、いらっしゃいマセー!」
扉を開けるとローズがニコニコして立っていた。
「くすくす、
・・・そうやってお仕事してるの?」
「ハハッ、お飲み物ナンになさいますカ・・・ってね。」
「ごはん、どうする? 食堂行く?」
「んー、今日はワタシも船で揺られて疲れてる・・・
外で食べたいネ。」
「あたしも、まだ景色が揺れてるみたい。
おっし、じゃー行きま・・・!」
・・・ガタタッ・・・
「・・・ローズ?」
「何か聞こえたわね・・・?」
二人は、音の聞こえたほうを向く。
広いとは言え部屋はワンルーム・・・、
音はすぐ外からのようだ。
「猫・・・?」
「もっと大きそうヨ・・・。」
メィリィは、
上着を羽織って慎重に外への扉を開ける。
辺りは夕暮れで紅く染まってはいるが、
まだ視界は良好だ。
・・・音の聞こえてきたほうには、
何も怪しいものはない・・・。
「メィリィ?」
「ローズ・・・気をつけたほうがいいカモ、
ひょっとしたらもう試験始まってるとしたら・・・。」
メィリィはそう言いながら、
胸ポケットから厚みのある紙の束を取り出した。
「それなーに? メィリィ?」
「・・・アタシの武器の一つネ・・・。」
メィリィは取り出した紙の束から、
奇妙な札を一枚ずつ窓や扉に貼り始めた。
その度に、
右手の二本の指を口元に当てて呪文を唱える。
それを見たローズは、
飛び跳ねながら興奮していた。
「すごいすごい!
なにそれなにそれ!?」
「・・・経文の入った呪符ネ。
魔物はこれで入ってこれない。
でも・・・泥棒には効果ない~。」
「ふわぁぁぁ~!」
普通なら、
泥棒や変質者を疑うべきだろう。
だが、ここは普通の状況下にはない。
メィリィの危機察知能力は、
現実的な対応策より、
不可思議かつ非科学的な対応を取る事を選んだ。
無論、札の効果が必ずしも絶対とも過信してはいない、
あくまでも気休めだ。
・・・何しろ、
ここは「メリー」に関わる謎だらけの島なのだ。
なお、
キャラの何人かは、3Dボディが用意されていますが、
ローズは結構手軽に作った奴なので公開しようか迷っています。
メィリィも今ひとつ色気にかけてるので、改造できないかお悩み中。
カーリーは、サリーの作成に苦労したり、Windows updateのせいでデータ飛んだりBLENDER消えたりしましたが、先日復活しました。
タイミング合わせて公開します。