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1日目の1

 

・・・暑い日ざし・・・

ムワっとするような湿気・・・、

甲板には何人かの人間がいたが、

殺人的な紫外線をモロに浴びる者はいなかった。

船は一路、

インド洋の南に浮かぶセントメリー諸島に進む。


 「あーつーいー・・・」


そんなに着込んでいれば当たり前だ、

ローズの服は、

綿素材中心の風通しいいものだが、

手首部分にゴムが入った長袖の上に、

ダークカラーのノースリタンクを着込んでる。

下はタックプリーツの入った長めのスカートに、

黒のハイソックスといういでたちだ。


 「スコールが来たり、

 風が強いと気持ちいいけど、ヒマだなぁ? 

 みんな冷たそうだし・・・

 持ってきた本もみんな読み終えちゃった。

 ・・・まだつかないのかなぁ?」


船のクルーたちは黙々と働いている。

ただ、彼らは雇われ人のようで、

あまり多くのことは知らされていない。

金持ちの依頼で、

客を目的地にまで運ぶだけである。


 「・・・ねぇ、船員さん?

 あと、どのぐらいで目的地に着くの?」


聞かれた船員はたるそうにローズに答えた。

 「明日の朝だよ、お嬢ちゃん、

 ・・・それにしても、

 みんな変わった客ばっかだな?

 陰気な女が多すぎるぜ、

 商売女でもなさそうだし・・・?」

 


 

ローズには、

世間一般的な知識が不足しているらしい。

 「商売女ってなに? 奴隷の事?

 あたしは違うわよ!」


船員は首を振って笑う。

 「ハハ、わりぃわりぃ、

 気にしないでくれ、

 ・・・ヒマなら、

 向こうで踊ってる姉ちゃんがいる、

 見るだけでも飽きないかもしれないぜ?」


ロ-ズは船員の言葉に興味を持って、

言われた辺りに場所を移動した。


 えーっと・・・、

 確かこっちの方だって・・・あーいたいた!


その女性は踊っているわけではなかった。

ローズは目を真ん丸にして、

その女性の動きに見とれる。

・・・これは中国拳法?

彼女はローズに気づいて演舞をやめる。

 「・・・こにちわ・・・、小さいコね?」

 「あたし、ローズ、

 ・・・ローズメリー!」

 「わたしはメィリィ、

 ニポンから来た・・・よろしくネ。」

 

 

・・・ローズは、この船で初めて他の女の子と会話が出来た。

それまでは、

さっきの船員がそうだったのと同様、

話しかけても無視されていたため、

しょーがないから、一人で歌を歌ったり、

本を読んでいたりしていたのだ。


 「おねーさん、日本人?

 あんまりそーは見えないけど・・・?

 それ、カラテともジュードーとも違うわよね?」


ローズの的確な指摘に、

メィリィは照れくさそうに笑った。

 「ハハッ、ゴメンなさい、

 嘘ついたんじゃないヨ?

 ホントにニポンから来た・・・。

 生まれもニポン、

 ・・・でも、パパ、ママ日本人違う。」


メィリィは、

日本ではポピュラーなジャージ姿だ。

髪も後ろで束ねて、

確かに日本では街中で見かけても違和感はない格好だ。

 


 「ローズ、まだ小さいネ、

 ローズもメリー目指すか?」

 「うん!!」


ローズは満面の笑みを浮かべて答える。

あまりの素早い反応に、

メィリィは吹きだしそうになりながら、タオルで汗を拭く。

 「おしゃべりいいけど、

 練習続けていいか? 毎日の日課ネ。」


再びメィリィは、

足を開いてゆっくりと構えた。

 「ありがと、メィリィ!

 それ、なーに?」

 「・・・コレ、昔から伝わる伝統武術、

 子供の頃から練習してるね。」


動く範囲は狭いが、

円を描いた緩やかな動き・・・。

 「ふぅーん、それがアナタの得意技?」

 「ハハッ、そんな簡単に手の内は明かさないヨ、

 ・・・でも、これは役に立つよ!」


 「もしかしてメィリィ、・・・殺し屋さん?」


何も知らない純情そうな顔をして、ローズはとんでもないことを言う。

・・・メリーに志願するだけの事はあるのかもしれない。

メィリィにもそれがわかったようだ・・・。


 (ただの子供ではない・・・?)


 「・・・そう、わたし殺し屋、

 祖国はもうない・・・、

 でも、かつては皇帝の守護者の血筋の者ヨ・・・。」

 


しばらくは平和です。

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