表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライム 特殊個体につき  作者: たにし
2/2

スライム誕生

とある森の奥深くに一つのお墓がある。

丸い石を4つ積み重ねただけで、見る者にとっては誰かが遊びで積み重ねたとしか言えない代物ではあるが。

このお墓の前に1匹の魔物がいる。その魔物はこの世界のどこにでもいると言われ、子どもでも装備があれば倒せると言われている魔物=スライムである。

ただ、1つだけ違う点がある。それは普通は青色なのに対し、色が赤いという点である。


その赤いスライムはお墓の前で考え事をしている。

「1匹になるというのは寂しいことなんだな。」

吸血鬼に助けられるまではずっと1匹でいたが寂しいと思ったことはなかった。そもそもスライムに感情と呼べるものは存在しなかった。

あるのはただ近くにあるものを食べるという食欲のみであった。スライムがスライムを襲うという話は聞いたことが無いため、なんらかの手段で見分けているのだろう。

しかし、それ以外の動くものには反応し、近くにあるものをひたすら食べるために動いている。そして、魔物や魔獣、魔人、人間にも近づき、討伐されるというのがこの世界のスライムである。

スライムは水がある場所に少し魔力がたまれば発生するため、土壌の水分からでも発生する。それがこの世界でどこにでもいる理由となっている。

少し昔なら街の中でも発生することはあったが、現在は魔法の進歩により街中の魔力を分散させることでスライムなどの魔物が発生することはなくなっている。


この赤いスライムも動くものを食べようと近づいた結果、それが人間であった。そして、剣で切られ動けなくなり、あと一撃で死んでしまうというときに人間が何者かから逃げるようにその場から消えていった。

そのあとに現れたのが吸血鬼であった。吸血鬼は死にそうなスライムに近づき、いきなり噛みついてた。その直後、スライムの色が赤くなり始め、傷も無くなっていた。

「スライムに血を入れると赤くなるのだな。」

吸血鬼は独り言のようにつぶやいている。


スライムは今までは他の種族の言葉など全く分からなかったが、そのつぶやきを理解することが出来た。しかし、感謝の気持ちを伝えることも、お礼になにかあげることもできなかった。

ただ、この吸血鬼と一緒にいたいという気持ちが芽生えたので、足元にこすりつくようにもぞもぞと動くことにした。


「私とともにいたいのか?」

吸血鬼は言葉をかけるが返事はできない。ただ、うなずくように足元を動くだけである。

吸血鬼は頬をゆるませ、嬉しそうにしている。


「私の名前はクリアベールだ。よろしく。」

赤いスライムをなでながらあいさつした。クリアベールは赤いスライムにも名前が欲しいと思い、自分と同じ血が流れていて、親子のようなものだなと認識しているため、自分の名前の一部をそのまま使いクリアと名付けられた。

それから、死ぬまでの数日間ではあるが、クリアベールはクリアに多くのことを教えていた。この世界はもっと広大であり、この森はほんの一部でしかないこと、海という一面水の場所があること、人間・魔物・魔獣・魔人という種類があり、その中でも多くの種族が存在していることなど食べることしか知らなかったスライムにはすべてのことが新鮮であり、誰かが話しかけてくれるというのがとても嬉しかったのだ。


一緒にいた時間は短く、クリアベールは死んでしまったが、自分に新しい命と名前と感情をくれたクリアベールが大好きであり、死んでもなお離れたくないと思いお墓を作りその前で一日を過ごすことが日課となっていた。途中クリアベールの最後に一緒にいた人間が現れ、お墓を見て驚いた顔をしながら赤いスライムを見るということもあった。その男は、お墓の前で手を合わせ、「またな」と一言声をかけて来た道を戻っていった。その言葉はクリアベールとクリアに向けて話したのだということをクリアも理解できたので少し嬉しくなり、もぞもぞと動きながらその男を見送った。


どれだけ日が経ったか分からないが、お墓の周りの草を食料としていたのでその一帯が更地になったことで意識を今後のことに向け始める。

「このままここにいても寂しいな。クリアベールはずっとこんな思いをしていたのかな。」

思い出すのはクリアベールとの会話がほとんどであり、その中でもこの世界の広さと海という存在に興味があった。

「クリアベールが今まで行った場所を私も見てみたいな。」

一度思ったら外の世界のことが頭から離れず常に考えるようになっていた。スライムにとって頭の定義はわからないが・・・。


そこから数時間も経たないうちに決断する。

「外の世界を見に行こう。」

クリアベールのお墓をどうしようか悩んだが、一番上に置いた一番小さな石を位牌代わりにスライムの体の中に入れて持ち歩くことにした。スライムに核があるようにも見える。この世界には魔石や核などといったものは存在しないのだけど。


外の世界を見に行こうと決断したはいいものの大きな問題がある。

それは、スライムが最弱であるということだ。吸血鬼の血が混じることで思考能力を手に入れることはできたが、他の能力がどうなっているか全く分からない。

この状態で外に出ても魔物や人とエンカウントした瞬間に死ぬんじゃないかと思い、対策を考える。

クリアベールとの会話を思い出しながら、参考になりそうなことがないか考える。会話といってもスライムはしゃべることが出来なかったため、一方的に話を聞くだけであったが、思考能力はあったのでいろいろと内容は理解している。


会話の中で吸血鬼の能力について話ていたことを思い出し、自分も少しは使えるのではないかと思い試してみることにする。

個体によって差はあるものの主に吸血と身体強化といった能力がある。

吸血は魔力のあるものから吸血することで自分のなかに魔力を蓄えることが出来る。基本的には魔力をもらうだけで他の能力などを奪うことはできないが、例外というものが存在する。人にも魔物にも魔人にも特殊個体ともいえる存在がいて、もともとその個体が持っている魔力によって使用できる特殊スキルというものが存在する。特殊スキルといっても全く役に立たないものや魔法で似たようなものが再現できたりとそこまで価値がないものから、その個体でしかできない唯一のスキルといったものまで存在する。

特殊スキルは遺伝的要素を含まないが、珍しいというわけではない。人間でいうと1%は存在が確認されているため持っていると少し特別に思えるぐらいだ。しかし、その1%の中でもごくわずかに信じられないような能力は存在する。例えば、回復魔法とは比べものにならない回復量があり、死んでさえいなければ一瞬で全回復できる治癒のスキル、時間軸にはたらきかけ瞬間移動や時空をこえるスキル、方法は様々だが一瞬で国を消すほどのスキルも過去に存在が確認されている。

デメリットとして一つのものに特化しすぎると他のことはなにもできなくなるという欠点はあるが、それ以上の価値が特殊スキルにはある。

そういった、特殊スキルを吸血鬼は吸血による得ることが出来るため、どの種族からも恐れられている。

そして、身体強化。基礎能力でも人よりはるかに高いが、吸血して蓄えていた魔力を身体強化することで、魔族の中でも最強に近いスペックを持っている。


クリアは自分にも吸血と身体強化が使えないか確かめてみる。

まずは、身体強化。しかし、今まで魔力を意識したことが無かったが、ふんばるように意識して早く動いてみる。すると、さっきと比べて倍ぐらいの速さになった。

「身体強化は出来るのか。しかし、いつもより疲れるな。魔力が消費してるからかな?」

思ってはみるものの近くに試せるような魔力があるものがない。自分で倒せるような動物は魔力を持たない。しかし、魔力を持つもの相手だと倒せるか分からない。

どうしたものかと考えていると、目の前に水たまりがあり、自分の姿が映る。

「私でも倒せる魔物がいるじゃないか!スライムを倒そう!!」

水があり、そこそこ魔力が存在しているならスライムは勝手に出現するはず。そう思ってた直後に水たまりから一匹のスライムが現れた。

「身体強化して体当たりしてみるか」

自分の中で力をこめるようにして思いっきりぶつかってみた。すると、ぶつかった瞬間スライムの体はまんべんなく飛び散りスライムは消えてしまった。

予想外の力に呆然とするクリアだが、なんとか意識を戻して考える。

「身体強化使わなくても普通のスライムよりは強いのかもしれない。クリアベールの血が少し混じっているからかな。」

次のスライムを見つけて身体強化をしないでぶつかってみると、相手はふっとび動かなくなった。

「大幅にとはいかないけど少しだけ普通のスライムよりは強そうだ。」

倒したスライムを吸血しようとしたが、スライムに血はない。

とりあえず食べてみる。倒れているスライムにまとわりつくようにくっついたあとそのまま体の中に吸収していく。さっき身体強化を使った分の魔力が回復したのか少し体が軽くなった。

「吸血の効果かは分からないけど疲れがとれたみたいだな。身体強化使えばゴブリンぐらいなら倒せそうだな。このまま森を出て他の地域に行ってみようかな。」

自分の力を確認して、クリアは移動を始めた。目的地はない。ただ、クリアベールが見てきたいろんな地域を自分でも見てみようという気持ちをもって。


まだまだ続ける予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ