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プロローグ
――……
『キリムはリムということで、よろしいですね』
『はい』
『あと、そろそろこちらの音も出してみましょうか』
言われて、相手が出した音を女はまねる。
口をすぼめて言ってみる。だが、なかなかスムーズにいかない。
発声が難しいのだ。
『……まずまずですね。それは練習課題ということで……』
『はい』
鍋の煮える音がする。
薬草の匂いだ。
女はもういちど習った音を口にしてみながら、いつかこの匂いにも慣れてゆくのだろうと思った。
それは自分にとって良い選択だった。
女は再び、口をすぼめ、その音を練習した。




