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え、えっと、こ、これは、言わないとダメな感じでしょうか・・・
「あ・・・の・・・、ユーリと言います。アークには色々お世話になっています。よろしくお願いします・・・え、と・・・お、お父さん・・・?」
私は軽く会釈した後、ぎこちない笑顔でしたがハロルドさんを見ながら言いました。
ハロルドさんは、何故か目を見開いて妖艶な微笑を凍らせてしまいました。
あれ?
お父さんって言ってって、あれ、冗談だったのでしょうか。
どうしましょう。
「あ、あの・・・」
「コホンッ・・・失礼。ユーリ。とても可愛らしい名前ですね。昨日アークからあらかたの事情は聞いています。一人で見知らぬ世界に来て、さぞかし心細かったでしょう。もう私達は家族です。どんな事があってもユーリの味方でいると誓いましょう。たとえアークの事が嫌になっても、私とは親子でいてくださいね。」
ハロルドさんは一気にそう話すと、さらに妖艶な笑顔でアークの手から私の手を取り、軽く引っ張られたかと思うと優しく抱きしめ、そっと背中をなでられました。
突然の事になすすべもなく、しかし、一瞬の事で、すぐにハロルドさんは私を離しました。
その時、ふわっと顔が近づいたかと思うと、そっと私の耳元で囁いたのです。
「・・・この世界が、あなたに求めるものはとても厳しいかもしれません・・・」
?
ハロルドさんの言葉が何を意味するのかよく分からず、聞き返そうとしましたが、アークに遮られてしまいました。
「父さん、ユーリに気安く触るのはやめろ。さっさと、本題に入るぞ。」
アークはキッとハロルドさんを睨んで言うと、すごい勢いで私の手を取り返して、さっさとソファーに座りました。
ハロルドさんは軽くため息を吐いて、エイムズさんと一緒に向かい側のソファーに座りました。
私はさっきのハロルドさんの言葉が気になりましたが、とりあえず、皆の話を聞こうと思いました。
「昨日、父さんとエイムズには大体の事を説明したが、今分かってることをそれぞれ教えてほしい。」
アークはそう切り出すと、ハロルドさんとエイムズさんに視線を送った。
「では、私から。イスラのギルドで例の怪しい護衛依頼は、アークの受けた物だけだったが、担当者はやはり依頼者の記憶がないということです。それ以外で、依頼者の記憶がない依頼はないようです。一応昨日聞いた黒ローブの人物に心当たりのある者もいないか確認しましたが、これもいませんでした。私からは以上です。」
ハロルドさんがそう言うと、次はお前だ、と言うように、くいっとメガネを上げ、エイムズさんへ視線を移しました。
「・・・まだ、仮設が証明された訳ではありませんが・・・ユーリの事をまずは話す必要があります。ハロルド、あなたにも見えますか? ユーリのオーラ。ハロルドは確か、エルフの血を引いていましたよね?」
エイムズさんは、緑の瞳を怖いくらいに私に向けたままそう言いました。
私は、何故か何かを探るようなその瞳に、居心地が悪くなるような気がして、エイムズさんの言葉をあまり聞いていませんでした。
「オーラですか。いえ、残念ですが、少し感じるくらいで、全く見えないですね。何色です?」
ハロルドさんは、首を傾げるようにしながら私をみて言いました。
「父さん、エルフの血ひいてたのか?」
アークの素っ頓狂な声がしましたが、皆何故かそれには答えず、ただ私を見つめるばかりでした。




