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「ユーリ、これ読めるか?」
アークは私に向き直り、手にした書類を見せてくれました。
私は恐る恐るその書類に目を向けました。
うん。
読めました。
日本語じゃありませんでしたが、すらすらと読めます。
書類に書いてあったのは、冒険者行方不明事件について、とありました。
最近、高ランク冒険者が行方不明になっている。
護衛依頼を受けた一部の冒険者が全く報告せず、そのまま行方不明となっている。
調べると、高ランクのしかも複数で受けた護衛依頼の後、そのまま行方不明となっている。
依頼内容は、ほとんど同じで、北の商都オロストへの護衛依頼。
募集要項は、Bランク以上、人数は4人、報酬は法外、なお、依頼主は不明である。
現在随時調査続行中。
私はハッとしてアークを見ました。
これって、アークが受けた依頼と同じです。
アークも私の意図を図ったように頷き、虎さんに向き直りました。
「俺が受けた依頼と同じだ。エドヴァルト、どれくらいの人数が行方不明なんだ?」
「・・・現在報告を受けているのは、32人だ。」
「なっ。ばかな。何故今まで誰も気付かないんだ!」
「一か所のギルドではなく、南の町から順番に北へ向かって何度か同じような依頼があったようだ。しかも、商都オロストへの護衛依頼だ。ほとんどが、まだ途中だと思われていたからな。ちなみに、イスラより北では一件も報告がなかった。アークの受けた依頼が一件目となるだろう。」
「俺の見た、黒ローブの3人を見た者はいるのか?」
「それなんだが、書類にあるように、依頼主は不明だ。おかしいと思わないか? ギルドに依頼したはずの依頼主を受け付けたはずの者が、誰も覚えていないという話だ。」
「誰も覚えてない? そうか、もしかしたら・・・・。」
「なんだ。何か心当たりでもあるのか?」
虎さんは怪訝そうな顔をしてアークに詰め寄りました。
「いや、俺の想像だが俺が受けた黒い霧・・・あの呪いが記憶を奪うものなら納得できると思ったんだが。」
「・・・あの、小さくなったという、呪いか? ぷっ。あ、いや、すまん。」
虎さんは、面白くて仕方ないというようで必死に笑いをこらえました。
「・・・エドヴァルト、言いたい事があるなら言え!」
「ぷっ。いや、アーク、お前の性格で子どもになったなど、面白すぎだぞ。嬢ちゃん、アークのやつ、すっげぇ生意気じゃなかったか? 変にプライド高いしな。ぷぷっ。」
虎さんは、口元に手をやり、アークを横目で見ながら私の方を見て言いました。
「子どものアークですか? 確かに私の世界の子どもと比べると、随分しっかりしてましたけど・・・あ、そういえば、おんぶにすごく怒ってました。あの時は、大人になりたい年頃なのかと思いました。」
「ユーリ! おんぶ言うな! その言い方だと、してもらったみたいに聞こえるぞ! してもらってないからな!」
アークは顔を真っ赤にして怒っていました。
虎さんは、何故か笑いを引っ込め、渋い顔に変わりました。
ん?
どうしたんでしょうか?
不思議そうな顔をしていたからか、虎さんは私の方を見て、気まずそうに言いました。




