29
一瞬、逃げたのかもしれないとも思いました。
でも、あの感覚が、不思議な感覚が、手ごたえを伝えていたのです。
何かを消滅させたのだと。
ああ、どうか、人間でありませんように・・・・・・
いつのまにか結界も掻き消えていました。
アークは尚も注意深く辺りを警戒しながら、その黒いローブを慎重にたたみ、それ以外には何もないのを確認していました。
硬い雰囲気のまま振り返ったアークは、震える私に気付き、剣を腰の鞘にしまうと、おもむろに私を抱きしめ、優しく背中をずーっとさすってくれました。
もう大丈夫だ、怖かったろう、そう呟きながら。
私がいつの間にか、安心して眠ってしまうまで。
朝です!
どうしたらいいんでしょうか?
アークが絡みついています・・・
いや、確か、昨夜、色々あって、優しく背中をさすってくれていたはずです。
あの後どうしたんでしょうか?
記憶がありません。
「アーク。起きてください。」
なんと、背中に回った腕がさらにきつくなりました。
「ちょ、離してください、アーク!」
「ん~~~柔らかい。あったかい。気持ちい~~」
きゃああああ
ちょ
「け、結界!」
ばちぃぃぃぃん!
「うおっ!」
「ひでーなー。昨夜は大変だったんだぞ。あのままユーリは寝ちまうし、部屋に運ぼうと抱き上げたら抱き着いてきてすっごく可愛かった! ベッドに下ろそうとしたらしたで、ぎゅ~ってさらに抱き着いてきた時はマジでどうしてやろうかと思ったが・・・」
なっ
なんでそんなに嬉しそうにしながら言うんですか。
ちょ
なんかいやらしいです。
目が。
こっち見ないでください。
いーやーーーーでーーーすーーーー
ふぅ~
落ち着きました。
服は昨日のままでしたので、安心(?)しましたが、どうしようもない気分でした。
ワンピースがしわだらけでした。
でも、なんと、ビックリです、浄化してみたら、パリッとふわっと、ついでにいい匂いもして、綺麗になりました。
魔法最高です!
ファンタジーです!
さて、昨夜の出来事を少しアークと話しました。
残った黒ローブに、このあたりでは見ない文様がはいっていたらしく、そこから調べてみるとのことです。
あと、鑑定で名前が見えたことを伝えました。
「魔女アディの実験体13? なんだそれは? 魔女…魔女…うううん。そっちも調べてみるか。」
アークはそう言いながら、ちらっと流し目をしたかと思うと、言いにくそうに続けた。




