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なんだか高級そうな宿です。
あ
私、この世界のお金持ってません。
素材売るの忘れてました。
「アーク。私、お金持ってません。先に素材売るところ行きたいです。」
「金の事は気にするな。行きたいとこは明日まとめて案内してやる。ユーリは心配するな。まぁ、ユーリがどうしても気になるなら後で俺の気に入る方法で返してくれてもいいぞ。」
アークは付け髭をなでながら、ニヤリとしました。
掴まれてた手を力いっぱい振りほどき、後ずさりしました。
やっぱり、アークは悪い大人です。
「はは、冗談だ。ユーリは可愛いな。宿決めたら飯にするぞ。いつまでも入り口ふさいでないでさっさと来い。」
アークはさっさと歩いて扉を開けて手招きしました。
慌てて中に入ると、カウンターの向こうに可愛らしい女の子が笑顔でこちらを見て言いました。
「いらっしゃいませ。ようこそ、雨宿りの宿へ。お泊りですか?」
アークは慣れた動作で手続きを済ませ、私の手を引いて二階にある部屋まで連れて行きました。
案内された部屋は上品な色合いの落ち着いた部屋でした。
ベッドが二つ、その間にランプと台、窓際に丸い小さめのテーブルと椅子が2脚あり、入り口横にハンガーラックっぽいものが一つ、トイレや風呂はなさそうでした。
ガチャッという音で、振り返るとアークが後ろ手で鍵をかけていました。
ん?
どうしてアークも部屋の中に入ってきたのでしょうか?
アークは一通り部屋の中を確認したあと、二つあるベッドのうちの一つに座りました。
「ユーリ、まぁ、こっちに座れ。」
アークはもう一つのベッドを指さして言いました。
私は言われた通りに向かい合わせになるように座りました。
「この後だが、夕飯食べた後は、この部屋から出るな。結界は必ずかけておけ。俺は少し調べ物がある。遅くなるが俺のことは気にしなくていい。」
唐突にアークはそう言うと少し表情を硬くして続けた。
「例の依頼主の目的も正体もまったくわからない状態で、追手が来る可能性もある。ユーリを巻き込みたくはないが、今日このままユーリを一人にすることは出来ない。俺たちは兄妹って事で部屋を取ってる。」
アークの護衛仲間の命を奪った人達の事です。
アークの背中を刺したり、呪いをかけたりもしてます。
もし、アークを追ってきてるとしたら、どうなるんでしょう。
私は今更ながら怖くなって俯きました。
「怖がらせてすまない。ユーリは今後、どうしたいか希望はあるか?」
アークは優しく私の手を握りました。
大丈夫だ、安心しろ、悪いようにはしない、と言われたような気がしました。
温かい気持ちになって、顔をあげました。
アークの赤い瞳が、強い光を帯びて私を見ていました。
アークは、この世界に来て初めて出会った人です。
私のことをすべて話しても、真剣に受け止めて信じてくれました。
大変な目にあったはずのアークは、私の希望を聞いてくれました。
どうしたいのか、と。
今まで誰にもそんなことを言われたことありませんでした。




