点夜線夜4
深夜になり、いつものようにバイクにまたがり散策に出かけた。今日は祗園にやって来た。
微かな風の中をバイクの排気音がプルプルと響いた。
新興団地の中に公園があり、休憩がてら立ち寄る事にした。
大きな公園で、いたるところにベンチや街灯が設置されている。
トイレもあったので、ついでに用を足した。
トイレから出て来ると、バイクの回りに無数のコウモリが群がっている。バイクがよほど物珍しいのだろうか。参ってしまう。
仕方がないので携帯電話からインターネットを介して、『コウモリ 撃退法』を検索した。
検索結果から手頃な撃退法を見つけ出したので、黒い塊になりかけているバイクの側まで近づいた。
僕は息を吸い込み、叫んだ。
「朝が来るぞーーっ!」
すると、コウモリたちは黒い花火のように飛び散って、各々家路に着いた。
簡単な話、コウモリは夜行性だから、朝には巣に帰る習性を利用しただけの事だ。
僕はバイクの無事を確認して、シートに跨った。そして、エンジンをかけようとした次の瞬間、新興団地の家という家に灯りが灯った。
おや、どうしたことだと首を傾げていると、新興団地の家々からスーツ姿のサラリーマンが姿を現した。
皆眠そうな顔で、「いってきます」と言って玄関を出て来る。
まずい。
サラリーマンは昼行性であった。
僕の掛け声により、夜行性のコウモリたちは家に帰り、昼行性のサラリーマンは家を出ててしまったのだ。
僕は居たたまれず、そそくさとその場を離れた。