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爽やかな一日(仮)

本編も宜しくお願いします

 それはある日の出来事。メリダと俺の一日。その日はアザミが任務でいなかった。そのおかげか俺とメリダは龍之介から休暇を言い渡されていた。


 アザミが用意していた朝食をメリダと2人で食べていた時にそれは始まった。


「君の呼び名についてなのだが」


「あん?」


「やはり騎士たるもの主を敬う呼び名を決めるべきかと思ってな」


 また始まった……。頭を抱えたくなる。


「一応聞いておくが候補は?」


「マスター御主人様貴方様ダンナ様。他に何があったかな」


「全部! 却下だ!」


「むう。そう言わずに試しにやってみよう。マスター」


「……まあその程度ならまだ許容出来る」


 どうせその内飽きるだろ。ここで過剰に反応してもいい事はない。


「さて、朝風呂入るかな」


「そうか」


 おっさんの粋なはからいで俺の部屋にはそれなりに大きな温泉と呼べる程の風呂がある。風呂好きな俺からするとこの配慮は非常にやる気に繋がる。僕やれば出来る子。


「うーん。いつ見ても素晴らしい。全力で走ったら転ぶかな」


「当たり前だろう」


「うんそうだね。ナチュラルに独り言に参加してきたね」


「私が居れば独り言じゃなくなるな」


「その通り。しかし論点はそこじゃない。なんでお前は付いてきている」


「御主人様もめげないな。結局いつも誰かと一緒に入っているじゃないか」


 こいつは何を当たり前の事を言っているんだみたいに言った。しかもマスターから御主人様に変わってるし。


「俺もいつも言ってるよな。風呂は1人で入らせてくれって」


 せっかく今日はアザミがいないから落ち着いた一日を過ごせると思ったんだが、早くもそれは崩れ去る予感がしている。


「諦めろ。男の甲斐性だとでも思えばいいだろう」


「嫌だね、お前らが折れるまで俺は言い続ける。俺はひっつくのは好きだがひっつかれるのは好きじゃないんだ」


「嘘だな。抱きつかれた時一瞬顏がニヤけているのを私は知っている」


 ちっバレてたか。生身での戦闘能力が優秀なだけはあるな。


「だとしてもだ。今日はもう入っちまったからいいが明日は入ってくるな」


「ふむ。明日はアザミの日だったかな?」


「お前ぶん殴られたいのか?」


「貴方様が私を殴りたいのなら殴られよう。私の全ては君のものだ」


 しまった。こいつはこういうやつだった。


「わかったわかった。俺が悪うございました。バスタオルくらいはしろよ」


 何気なしに流していたが、当然俺はタオル一枚。ほぼ生まれたままの状態だ。そしてここは風呂。ならば今メリダの格好は? 見なくてもわかる。


「何を今更。散々人の裸体を見ているくせに」


「朝からそういう事言うのやめろ! 俺は爽やかに一日を迎えたいんだ」


 メリダのせいで既に爽やかどころかエロに片足突っ込んでるけどな。


「ふむ。風呂上がりにマッサージはどうだ?」


「お、そりゃいいな。気が利くじゃん」


 風呂が心の底から好きな俺は時間がある日は風呂に最低3回入る。1回目は朝食を摂った後。2回目はストレッチ等の各種トレーニングを終えた後に入る。3回目は皆お馴染み寝る前だ。


 ちなみに、風呂あがりにはかかさずフルーツ牛乳を飲んでいる。その際腰に手をあてて飲むのがポイントだ。


 さて、風呂にダイブするか。旅館やなんかでは大抵脱衣所に風呂に飛び込まないでくださいという注意書きがあるが、あれは早朝なんかの人がいない時間帯なら何の気兼ねも無く出来る。一応人がいても出来るが水しぶきをかぶった怖いお兄さんにヒンシュクを買うからあまりオススメはしない。


「ダーイブ!」


「はさせない」


 小走りで飛び込もうとしたら後ろから羽交い絞めされた。当然感じる背中の柔らかな感触。余計な布が無い分、よりパラダイスな感触だった。


 アザミ程ではないが、それなりに豊かな胸。なめらかな肌。程よい筋肉がついて、引き締まった尻から太ももの脚線はネコ科の動物を想起させた。


 アザミが可愛い系ならばこちらはクール系とでも言ったところか。好みの別れるところだが、俺はどっちも大好きだ。


「何すんだよ!」


「湯船に浸かる前にせめて体を流せ」


「そんくらいいいじゃねーか。おまーはアザミか」


「ダメとは言わないが流した方がいいだろう。ほら、背中洗うからこっちに」


 いつの間に用意していたのか椅子が2つ並んでいた。メリダは片方に座ってもう片方の椅子を手でポンポンと叩いていた。


「へーい」


 絶妙な力加減で俺の背中は泡まみれになっていった。これが既にマッサージのような感じがしてくる。


「銃痕……たくさんあるな」


「ん? ああ。覚えてねーけど相当撃たれたみたいだな。まあでもよく見ないとわからないレベルだろ? 善良な市民の皆様を脅かすようなもんじゃない」


「奏の戦闘技術やこれを見ていると、記憶を取り戻さない方がいいんじゃないかと思えてくる」


「んー。あんま楽しい記憶が無いのは事実だな。でもさ、今までがあって今の俺がある訳じゃん? だから俺は思い出したいな」


「そうか。何があっても私は奏の騎士だ。それだけは覚えておいてくれ」


「わかったよ。ほら、もういいだろ? いい加減ダイブさせてくれ」


「ああ。もういいぞ。走って転ぶなよ?」


「痛え!」


 言われたそばからおもいっきり転んでしまった。


  ○


「ふう」


 やはり風呂あがりはフルーツ牛乳にかぎる。


 よくアニメやなんかで一気飲みをしているが、あれは実際にやると頭やお腹が痛くなったりするし、一瞬で無くなってしまうから俺はしない。


 ちびちびと飲むのがジャスティスだ!


「奏はそれが好きだな。美味しいのか?」


「最高に美味いぞ。一口飲むか?」


「頂こう。……んっ」


 風呂あがりの艷やかな黒髪と紅潮した頬がいい具合にマッチして、メリダの喉が上下するのが妙にエロく感じてしまった。


 いかんな。朝からムラムラするのは避けたい。据え膳が常に目の前にあるのは、それはそれで自制心が試される。


「美味しい」


「だろ? 風呂あがりはこれにかぎる。今日は休みだから風呂も好きに入れるしな!」


 メリダからフルーツ牛乳のビンを受け取り、最後の一口を飲み干した。


「では、マッサージをしよう。最近オイルマッサージというものを知ってな。アザミに試してみたんだが、好評だったんだ。さ、横になってくれ」


 龍之介にオイルマッサージ用に用意させたであろう、いつの間に部屋に置かれていた簡易ベッドに促された。


「オイルマッサージか。また面白いもんに手出したな」


「匂い付きのもあるんだが、奏はイヤだろう?」


 後ろでオイルを用意する音が聞こえた。


「ああ。てかあれか。この間甘ったるい匂いしてたのそれのせいか」


「すまない。君が嫌そうな顏をしていたのをよく覚えている」


「んにゃ、それ自体が嫌いって訳じゃないんだ。人の匂いが消えるのが嫌なんだ」


「ん? 私達の匂いの事か?」


「そうそう。お前らいい匂いするからさ、それ消えんのやなんだよね」


「ふふっ、そうか。オイル垂らすわ」


 少しヒンヤリとした液体が背中に垂らされた。


 メリダの手が腰に置かれた。オイルで抵抗が弱まった背中を駆け上っている。


「すげー。気持ちいいー」


「疲労回復に効果があるそうだ。日頃の疲れを癒してくれ」


 ヌルッ。ヌチャヌチャ。クチュクチュ。


 気持ちいいのは確かなんだが、なんか妙にエロいな。


「興奮する?」


「しねえよ」


「もう少しだけ待て。今やめたら意味がなくなってしまう」


 待てってなんだよ。何を待つんだよ。この流れはまずい。結局流されて朝から吸われるパターンだ。なんとか方向転換しなければ。


「なあメリダ。今日ってこの後予定あったよな?」


「予定? 聞いてないが」


「変だな。模擬戦のコーチ役をやるはずなんだが」


「ふーん?」


 なんかメリダの声に冷たいものが混ざった気がする。しくったか?


「いや、聞いてないならいいんだ。俺1人で行ってくるから」


「アリーナは改修中だと聞いてるが?」


「それは……あれだろ。外でやるんだよ。きっと」


「ほとんどの機体は新兵装の開発のためにラナが使ってるそうだぞ?」


「少ない機体で防衛するための演習だと聞いている」


「模擬戦じゃなかったのか?」


「言い間違えたんだ」


「今日は休みだから風呂も好きに入れるしな! さっき君からフルーツ牛乳を貰った時にそんな事を言っていたような気がするな」


「気のせいだ」


「そうか」


 なんか覚えのある感触が背中に当たった。これは知ってるぞ、メリダの胸だ。


「何をしてる?」


「何も?」


 メリダが上下を運動を始めた。それに伴って、やわらかな感触が背中全体に広がる。


「これ明らかにマッサージじゃないだろ」


「マッサージだ」


「そうか」


 耐えろ。これに耐えればきっと終わる。この先に爽やかな一日が待ってるんだ。背中から意識を離すんだ。


 エロスとは何か? それは男にとって永遠の命題である。


 エロスとは勝ち取るものであると説いた偉人がいる。エロスとは与えられるものであると説いた偉人がいる。俺はどちらも正しいと思う。


 例を挙げよう。修学旅行における露天風呂とは、壁一枚向こうに普段から見知った女が大量にいるという極めて特殊かつ本能に問いかけるものだ。


 悶々と壁の向こうを想像する者、組体操を行ってなんとかして覗こうとする者、壁に耳をあて、壁の向こうの会話を楽しむ者。そのどれもが男として正しい行為だ。


 ここには確かにエロスが存在する。その果てに勝ち得たエロスこそがエロスであると言う者の気持ちもよくわかる。


 次に、与えられるエロスについてだが、これは主に女性が男に与えるものだ。その一点のみに焦点を絞れば、今のこの状況は与えられたエロスと言える。しかし、エロスを感じる事は出来ない。なぜか。その理由は簡単だ。あからさま過ぎるのだ。


 あからさまなエロスは、エロスではなくただのエロだ。与えられるエロスに欠かせないのはあたかも起こり得るかのような自然さだ。


 ロングスカートが風でめくれて見えるパンツ。プールで水着のヒモが取れる。これらは起こりそうで起こらない。だからこそ、起きた時にこの上無いエロスを感じる。


「む……」


 この勝負、勝った。最後まで俺は我慢したぞ。


「ありがとうメリダ。気持ちよかったよ」


「待て。まだ終わってない」


「いや、もういいんだ。すっかり元気になったよ、だからそのがっしりと押さえつけて離さない手をどけてくれ」


「正面が残ってる。さあ、こっちを向くんだ」


「……」


「どうした? 向けない理由でもあるのか?」


 忘れちゃいけない事が1つ。エロは必ず男の一部分に血液を集中させる。


「ほら、こっちを向くんだ!」


  ○


「あら? メリダ、随分と肌が艷やかね」


「ああ。アザミのおかげでな」


「ふふっ。休暇は楽しめたみたいね。それに対して奏は……」


 アザミがソファで死にかけている俺を見た。


「あらー。あらあら、随分と搾り取られたみたいね。大丈夫?」


「大丈夫に見えるか?」


「見えない」


「だろうな」


「しょうがないわね。精がつくもの作るから、それ食べて元気出しなさい」


 俺の爽やかに過ごすはずだった休日は、どこかに消え去った。何がいけなかった。風呂に入った事か?


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