第六話
今回はあまり面白くないです。
俺のこのごろの悩み...........それは
「......謎のヒーローD、大活躍。彼は敵か味方か!だとよ」
「.........へー」
ハムスターが新聞の記事を読みあげる。
もちろん、父親がハムスターなのが問題なのではない。
この、新聞記事が問題なのだ。
D.....とは、もちろんエクスのことである。
「.......また、ヒーローが捕まったんだとよ。正義の味方か知らんが、D一人にやられるなんて情けないな」
「.........そうだな」
最近の俺は、成り行きで数人のヒーローを倒していた。
倒していたヒーロー達は賄賂や殺人で捕まってしまっている。
けして、俺のせいじゃない..........はずだ。
「...........」
「アニキ、顔が真っ青ですよ?」
雨狼に心配される日々が続いている。
そんなある日のことだった。
「.......どうしたんだ、雨狼?」
「...........」
「ダメですね.........これ」
目の前で固まってしまった、雨狼。
姫子が雨狼の目の前で手を振るが............見えてないようだ。
その視線の先には一人の女性がいた。
「.........誰だ、あれ?」
「小林綾さんですね。知らないんですか?」
「.......知らん」
大和撫子をイメージさせる長い黒髪と彼女の振る舞いは、異性だけではなく同性も引きつけているようだ。
所々で、男女の黄色い奇声が挙がっている。
「........ご主人様の隣のクラスですよ」
呆れたように姫子が俺を見る。
........なぜが視線が痛い。
「........んで、雨狼がおかしくなったのはなんでだ?」
「それはつまり........小林さんに恋をしたからだと思います!」
.............雨狼が恋だと?
「............あの、まじめを固めて無理やり人にしたような雨狼がか?」
「........結構、酷いですね」
それからしばらく、雨狼は小林さんの行った方向をずっと見つめ続けていた。
朝、雨狼と姫子と共に登校していた時だった。
「.........あれ、小林さんじゃないか、雨狼?」
俺が視界に例の小林さんを見つけた。
「......こ、小林さん!なんて、麗しい姿なんだ......」
雨狼は完全に壊れてしまったようだ。
「おい、いくぞ雨狼」
「早く歩いてくださいよ」
「..............小林さん......」
雨狼を引っ張ろうとしたその瞬間。
「キャッ!」
前方で小林さんが拉致されようとしていた..............あの、ボーンズ達に。
お忘れの方もいるだろう。
高校二年の初日に俺の頭を殴ったあいつらだ。
「........」
ボーンズは俺に気づくと、一人が俺に会釈し、残りの二人が拉致の準備をしていた。
言ってなかったが、ボーンズとはちょっとした付き合いがある。
..........またそれは、違う機会に話すとするが。
「待て!小林さんを返せ!」
「!!!」
ボーンズに向かって雨狼は走っていく。
途中、雨狼の体はみるみる人外のそれに変わっていった。
その姿は......
「お、狼男!」
小林さんが雨狼の姿を見て叫ぶが、雨狼は気にせずボーンズ達を筋肉でとてつもなく硬くなった腕で、なぎ払ってい。
「.......!」
助けられてるのが分かったのだろう。
小林さんは騒ぐのをやめてくれる。
雨狼は小林さんに巻かれたロープを引きちぎっていく。
そして、ロープが取れた後.........
「......ありがとうございます」
小林さんは雨狼の胸に顔を埋めて、そう言った。
しかし、雨狼は..........
「ガガガガガガガガ!」
奇声を上げながら小林さんを置いて走り立ってしまった。
「...........ワヲーーーーーーン!」
そして...........遠くから狼の遠吠えが聞こえた。