第三話
つまらないですよ。
気づけば朝だった。
「.......」
凄く変な夢を見た気がしていた。
ボーッとする頭は心地好い眠気に浸かっている。
昨日の記憶に靄がかかっていて、はっきりと思い出す事ができない。
「.........眠い」
時計を探す。
時間はまだいつもより早かったので、二度寝することにする。
何か違和感を感じたが、心地好い眠気が一気に牙を剥き、俺の意識はすぐに遠のいていった。
右手が重い。
それが起きてすぐに感じたこと。
しかも、かなり痺れている。
「..........すぅ」
「.......!」
誰かの寝息が聞こえてくる。
勿論、右手側から。
「..........すぅ」
恐る恐る、顔を向ける。
そこには眠る一葉の姿が確認できた。
疲れているのだろう、ぐっすりと寝ている。
そこで、違和感の正体に気付いた。
.........ここ、俺の部屋じゃない。
客間なのだろう、和室に布団が敷かれているだけだった。
「おや。もう起きたのかい」
「?」
人の気配と共に、しわがれた老人の声が聞こえた。
「.........あの、ここはどこで、貴方は誰ですか?」
「私は一葉の祖父だ。倒れた君を私の家に一葉が連れてきたんじゃよ」
「そうだったんですか」
「この子が家に人を連れてくるンは初めてでな。君が連れてきて、ずっと看病しておった。よっぽど心配じゃったんじゃろうな」
「御剣さんが........」
一葉は幸せそうに眠っていた。
なんで、そこまでしてくれるんだろうか?
数分、おじいさんと話した。
「........んん.....」
すると、一葉が起きたようだ。
「あれ、私寝てた」
「ほれ、彼が起きておるぞ」
「真神君!」
心配そうにのぞきこんでくる。
「.......別に、大丈夫だって。なんか変な夢、見たけど」
「......夢?」
一葉は真剣に聞き返してくる。
「ああ、よく覚えてないんだけど。.......確か、ヒーローがどうとかいってた気がするんだ」
「.............変な夢ね」
一葉が心なしか顔を背ける。
それから数分話した後、ふと時計を見るとかなりの時間が経っていた事に気づいた。
「.......あの、夜遅いからそろそろ家に帰らないと」
「お、そんな時間か。なら少し、待っていてくれ」
「あ、はい」
おじいさんは部屋から出て行ってしまう。
今のうちに着替えておこう。
「あのさ、着替えたいんだけど......」
「......そう」
「............あの、部屋から出て貰えると大変助かるんですが」
「........!ごめんなさい、ボーッとしてた」
一葉は一目散に部屋から飛び出した。
「.....そんなに、慌てなくても」
数分後、おじいさんが帰ってきたときにはすでに着替えを終えていた。
「すまんの。探し物が中々見つからなくてな」
俺に四角い箱を手渡してくる。
中には腕時計が入っていた。
メインは黒で、所々に入っている金色のラインがかっこよく思った。
「これを君にと思ってな。ずっとあげる相手がおらんかっての」
「おじいちゃんは昔、時計を作っていたの。それはおじいちゃんが最後に作った時計なんだって」
そんな大切な物、貰っていいんだろうか。
「......その、貰っていいんですか?」
「これは今日から君の物だよ」
「.....ありがとうございます」
早速、時計をしてみる。
奇妙なぐらいフィットしているのを感じた。
まるで、俺のために作ったかの様に。
家に帰ると雨狼と姫子が玄関で待っていた.........正座で。
「.......なにしてるの?」
「あ、アニキ。無事でしたか!」
「無事も何も、どうしたんだよ」
「ご主人様が帰ってこられないから、乱蔵様が『陰で護衛もできないのか。優鬼が帰ってくるまで正座していろ』って。ご主人様のせいなんですからね」
「......そっか、悪い悪い」
「心配してなかったわ開けではないんですよ。........ちょっと、見ておきたい番組があっただけで」
「ほら、二人とも立って。俺はちゃんと帰ってきたんだからさ」
なんか、今日は心配されてばっかだな......とか思う。
でも、なんで正座って。
こうして、俺の高校二年の初日は幕を閉じた。