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第二話

ズッドーン。

世界にヒーローという職業が出来て、五年。

今は世界に正義が溢れている。

善がなんだ。

悪とされている人たちは本当に悪いのか?

だから私はそんな善を叩き潰す。


「私は悪の魔王になりたいと思っています」

今朝会った彼女、御剣一葉はそう言った。

しかも真面目に。

「御剣さんの冗談はさておき、えっと、席は........」

「先生、冗談ではありません。私は......」

「もういいのよ、御剣さん。席は.........っと」

それ以上言わせまいと、担任は言葉を重ねる。

その時、ふと担任と目が合った。

「真神君、御剣さんと一緒に机とってきてもらえる?」

「..........何で、用意してないんですか?」

「昨日、すぐに帰っちゃって」

「......は~。わかりましたよ」


ということで、事務室に机を取りに行く。

「まさか、転校生だったなんて思わなかったよ」

「そう。私も、あなたと同じクラスになれるなんて思わなかったわ」

「確かに」

一葉と誰もいない廊下を歩いていく。

当然、今はホームルーム中だからだ。

そこでふと、自己紹介のことを思い出した。

「......あのさ、魔王になりたいって、本気なの?」

「私は冗談は言わないわ。本気よ?それに、悪ってところが肝心なの」

「ヘー、そうなんだ」

「あなたも変だと思うの?」

「.........んまあ、多少は」

「そう」

一葉はうつむいて呟くように言う。

「.......特撮の正義ヒーローはもちろん、善」

「え?」

「悪の組織は名前の通り、悪」

「まあ、そうだな」

「でも、それは誰が決めたもの?組織側からすれば組織は善よ?」

「犯罪者も善か?」

「私は犯罪者たちを庇うつもりはないわ。本当の悪かなんて、わからないってことを言いたいだけ」

「本当の悪?」

「皆を苦しめている、それが私にとっての悪。悪の組織にだって私の悪に当てはまらないものは、私にとって善だと思うの」

「.......でもそんな人、居ないんじゃないか?」

「居るよ。私は知ってるの。世界の為に戦う悪の組織を。」

そう言って、一葉はやさしく微笑んだ。


「アニキ、お迎えにあがりました」

「ご主人様、早く帰りましょう!」

雨狼と姫子が放課後の教室に入ってくる。

ちなみに、全員クラスはバラバラになった。

「悪い。先、帰ってくれないか?」

「用事でもあるんですか?」

「.......ああ、ちょっとな」

実は、机を取りに行ったときに一葉にメモ用紙を貰っていた。

内容は、放課後に屋上で待つ、というものだった。

「命令ならば。さあ、行くぞ姫子」

「用事があるなら仕方ないですね。仕方ないので、雨狼と帰ります」

「.........ありがとう、二人とも」

二人と別れた後、俺は屋上に向かった。


「来てくれたんだ」

「ああ」

屋上には一葉以外、誰もいなかった。

「何の用?」

「それは、ここでは言えない」

「!」

その時だった。

不意に後ろから人の気配を感じ、急いでしゃがむ。

見ると全身タイツの男がバットを振り切った後のような格好で鉄パイプを握りしめていた。

その後ろから二人、同じような姿の男がやってくる。

「御剣さん!」

今度は、一葉の頭を殴ろうとする。

それを庇って頭に衝撃が走った。

「ぐっ!...........」

その後のことは、この一撃で意識が飛んだのだろう、正直覚えていなかった。


「........おじいちゃん、もっと大切に扱って!」

「悪い悪い。じゃがこれも目的のため。そう言ってくれるな」

聞き覚えのある声と、もう一つはしわがれた老人の声がだ

二人の会話が、だんだんと聞こえた。

「しかし、この男。通常のデータにくらべると、かなり異常じゃ。まるで人間を超えている」

「そんなわけないでしょ。彼は普通の一般人よ!」

「そうじゃったな。初めて会ったお前を助ける勇敢な青年じゃったな」

「もう、おじいちゃん!」

そう............この声は一葉だ。

照れたような一葉の声が頭に響いてくる。

身体に力が入らない。

目を開けようにも、目蓋が重く感じた。

「さあ、そろそろ仕上げじゃ」

水が流れる音と共に、身体が地面に当たるのを感じた。

「だから、おじいちゃん!」

「わかっておる。大切に扱うわい。ちょっと、ボーンズ。青年を装置に」

老人がそう言うと、身体が持ち上げられるのを感じた。

カチ、カチっと音がする。

「おっほん。青年、起きとるか?まあ、起きとっても麻酔で目蓋も開けられんじゃろうが」

「」

なんかむかつく言い方に俺は、意地でも目蓋を開けようとする。

努力の結果、薄目を開ける程度には開く事が出来た。

目に見えるのは一葉と老人、それにあのタイツの男たち。

「........み、御剣」

「お~、なんと。喋れるとは、ますますいい素材じゃ!」

「真神君!」

老人はこれから真剣な話をするかのように真剣な顔になる。

「まあ、最初は自己紹介からかの。.............私の名前は御剣大吾朗。一葉の祖父じゃ。君にはこれから私たちと共に闘ってもらうことになる。ちなみに、君には拒否する権利はない。まあ、君の性格上、拒否するとは思えんが」

「た、闘うだって?」

「そう、君は選ばれたんじゃ」

老人は俺に人差し指を突き付けて、興奮したように言った。

「これから、よろしく頼むよ!正義を滅ぼす正義のヒーロー」

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