序章
この小説には残酷な描写が含まれる恐れがあります
苦手な方は注意してください
日本の首都、東京。
過去には世界最大のメガシティとまでも評価された大都市であった。
しかし戦争状態にある今、車道には自衛隊の車両ばかりが往行し石油高騰のため一般車などほとんど走ってはいない。
また至る所に武装した隊員が見張りについていた。
彼らは交代で1日中同じ場所にたち続けている。
いかなる緊急事態にも備えるために。
赤レンガで造られた巨大な駅の前にはキャンプが張られ、十数人ほどの若い隊員達がいた。
しかしそのほとんどは壁にもたれて座り込んだり、地面に大の字になって寝ていた。
「眠い………」
現在となっては旧式化しつつある自衛隊の自動小銃、89式5.56mm小銃を背負った青年、天城貴章は大きな欠伸をしながら気だるさそうに立っていた。
辺りにほとんど街灯がついていないせいで空には星がよく見えた。
「交代の時間だ。」
眠そうにしていた貴章に一人の青年が声をかける。
貴章は青年の顔を確認し腕時計を見る。
時刻はすでに午前3時を回っていた。
「そうか、じゃあ後は任せたぞ。」
「了解。全く割りに合わんバイトだな。」
青年はぶつぶつと愚痴をこぼしながら交代に着いた。
「今週の仕事は終わりか…」
貴章は自宅に帰るため、暗い夜道を歩き始める。
大通りであるにも関わらず飲食店から24時間営業のコンビ二に至るまで全てが閉鎖している。
深夜であるとはいえこれまで一度も一般人に会っていない。
すれ違った数人はいずれも迷彩服を着用した屈強な男達ばかりだった。
「そこのお前、所属と名は?」
突然、すれ違った中年の男から声をかけられる。
「第一普通科連隊、第3中隊所属、天城貴章1等陸士ですが……」
「第一か、人員不足の為に非常人員を大量に動員していると聞いたが…任務への参加命令は出ていたな」
「……任務ですか?」
思いもよらない言葉に声がつまりそうになった。
「1時間程前に緊急指令が発令されてな。関東全域はこれより全面閉鎖、厳重な警戒態勢に入るとの事だ。我々は今から命令に従いバリケードの設置作業を行う、お前も直ちに作戦準備に入れ。」