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第一章「幕開け」
鋭く白い閃光が、雲の間を横切った。
金に輝く長髪を風になびかせながら、彼女は天を駆けるように翼を羽ばたかせ、飛び続けた。
やがてグレーの城壁を彼女の瞳が捕えた時、白い翼は緩やかに折り畳まれた。
「セルーセ様!敵に追われていたようですが、お体はご無事で?」
地面へとゆっくり着地する彼女を、心配そうに若い兵士が駆け寄ってくる。彼もまた、白い翼を背に纏っていた。
「心配ありません。敵は私を見失ったようです」
「しかし……」
兵士は、彼女がかばうようして手で押さえている肩を見た。傷が相当深いのか、止まらない血はドクドクと溢れ出ている。
「それよりも、父上と母上は何と仰っていましたか?」
「黒天使たちが新たな動きを見せ始めているらしいです。また戦いが起こるかもしれないと」
「そうですか……また、戦うことになるのですね」
セルーセは視線を地面に落とした。そして、仰ぐように空を見上げた。