雀の恋
チュンチュン。
雀は恋をした。人間に。
雀は願った。
「神サマ、ぼくを人間の女の子にしてください!」
雀の願いは叶った。ただし、ひとつだけ。
雀は人間の〈男の子〉になれた。
悲しいけれど、恋しい気持ちは消えない。
『ぴちゅぴちゅ… 可愛い子雀、柔らかな羽根だね…』
ケガをして道端に落ちていた雀を優しく拾い上げ、手当てしてくれた優しいひと…
雀は愛しいひとの側に居たかった。
「チュンチュン…ご恩返しをさせてください」
「変な子だね。でもキミ、どこかで逢ったことがあったかい?」
「いいえ、いいえ。それはけして聞かないと約束してください。でないと〈魔法〉が消えてしまいます!」
「魔法?…ますます不思議な子だね。いいよ。聞かないでおこう」
奇妙な共同生活が始まった。
「チュンチュン。ご奉仕させてください」
雀は、料理に洗濯、掃除に風呂焚き…何でもこなした。
男はそんな雀を愛おしく感じるようになった。
けれども、男には心に決めた女性がいた。
チュンチュン。
恋しいけれど、チュン。
あのひとの幸せが、ぼくの幸せ…
雀は黙って姿を消した。
恋しいひとが、幸せな方が良い…
良いはずなのに……
どうして胸は締めつける?
どうしてこんなに苦しいの?
雀は泣いて泣いて、声も出なくなるほど泣いて、
それから、この雀だった子の姿を誰も見なくなった。
雀が身を退いて、男は幸せになったろうか。
いいえ。
雀が居なくなったあと、男は懸命に雀を探した。
思い当たる場所をくまなく探した。
それでも、雀はようとして知れず。
男は泣いた。
泣いて初めて気づいた。
雀が大切なひとだということに。
泣いて泣いて。
男は、雀との短くも優しいひと時を思い出し、胸を痛めた。
〈オシマイ〉
悲恋になってしまいました。創作ノートではハッピーエンドだったのに。
頭にひらめいたことが、ケータイのキィを打つ時に変化します。
打ちながら考えるのです。
空想だけでは、創作とは言えない。
ケータイの画面を見ながら作り上げる。形になる。
変なアタシの変なお話。
今夜はこの辺で。
読んでくださって、ありがとう。