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今更に。  作者: 高里奏
4/9

間章 宮廷騎士


「異界から異物が入りおったわ」


 突然陛下がそう呟かれた。

「異物、とは?」

「異邦者だ。つまみ出せ」

「陛下のお言葉のままに」

 そうは言ったが、それが一体どのようなものか、どこまでつまみ出せばよいのか分からない。

 ネクタイが苦しい。

 緩めようとした時、陛下のお小さい手がそれを阻止した。

「ラファエラ、似合っているのに勿体無い」

「申し訳ございません」

「ユリウスはどこだ?」

「鍛錬の最中です」

「ミカエラは?」

「カァーネは本日は門前警備にございます」

「呼んで来い」

「え?」

「我は退屈だ。ミカエラとラファエラで遊ぶことにする」

 陛下は気まぐれでいらっしゃるから、きっとミカエラが来たころには飽きられて、ほかの事をしたいとおっしゃるのだろうけれど、我々には何も言えない。

 我々は、陛下の駒だ。

 宮廷騎士団と言うのは、陛下の玩具箱でしかない。

 この、宮廷騎士たちは、兵士であり、使用人であり、そして、陛下の人形である。

 陛下は時折着せ替えをお楽しみになり、兵士同士を戦わせてお楽しみになる。

 我々の日常はただ、その繰り返しでしかない。

 陛下のお気に召さないものは全て排除し、陛下のお気に入りを集め、管理する。

 陛下は王宮と言う豪奢な籠の中で、心地よい悪夢に浸っていてくれさえくだされば、我々には何の不満もない。

 陛下と言う存在こそが、我々の存在意義なのだ。


「陛下」

「ユリウスか……異界から異邦者が紛れ込んだ」

「それは……」

 ユリウスが大きく目を見開いた。

「捕らえろ。殺しても構わぬ。この国から消せ」

 無邪気な子供のような笑みは消え、ただ、冷酷な王の顔。

 我らが陛下、デネブラ様は、それはもう、氷の微笑を浮かべられた。

「陛下のお望みのままに」

「いい子だね。ジル。ラファエラ、我は甘いものを所望する」

「ただいま」

 本当に気まぐれでいらっしゃる。

 我らが宮廷騎士団長、ユリウスの顔を見れば多少は気を良くなさって、そうして、おやつの時間になる。

 いつも変わらない。

 いつまでも。

 きっと十年後も、百年後もこれは変わらないのだろう。

 使用人を捕まえて、陛下のおやつを用意させる。

 廊下に派手な音が響いた。きっとポーチェが派手に転んだのだろう。

 まだ、昼だというのに薄暗い廊下。

 外を見れば、空に翳りがある。

 雨でも降るのだろうか。

 ただ、異界から来た異物が隠れるには丁度良い天候であるように思えた。

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