姫様、食材を確保します。
街から来た道具屋の店長と、水と食料の物々交換をしたのち、
「やっぱり水だけじゃ全員分の食料は交換できないのよね。毒キノコだけじゃなく、普通の食べ物も生えるように元に戻せないかしら?」
ヴィオラを呼んで聞いてみた。
「しかし、これ以上の自然の防衛策はないかと思いますが......やはり背に腹はかえられませんよね」
仕方がないといった表情をしながら答えたのだが、
「それはそうと姫様。洋館の仕掛けなどを撤去しているのですが、2階にある悪霊部屋の主が帰ってくれないんですよね」
2階と言われて思い出す。あのヤバいポルターガイスト現象の部屋か。扉を開けた瞬間怨念みたいのが飛び回っていたからすぐに閉めたのだが。
「姫様と相性がいいと思って寝室として作ったんですけどね」
「どうやったら相性いいと思えるわけ? むしろ悪霊と相性がいい人っているの?」
「ええ。すでに呪われている方とかです」
その瞬間、
――ドンッ!!
洋館からものすごい音が聞こえた。
「ほら、もう歓迎されていますよ」
「帰ってもらって!!」
「ですから、お帰りいただけないので説得していただけませんか?」
「嫌よ。私、お化け屋敷にお金払いたくないタイプなんだから。そうよ。リィナ。あんた慈愛の女神なんでしょ? 除霊とか浄化とかしてきてよ」
「仕方がないのう。行ってくる」
リィナが洋館に行って、しばらくすると戻ってきたが、背後になんかヤバいのがいるのがわかる。
「なんか、話が通じんかったから連れてきたのじゃ」
「連れてきたんじゃなくて、取り憑かれて戻ってきたのよ!」
「女神の力で強くしといたぞ」
「強くしてどうするのよ!」
私は叫ぶと、リィナの背後にいる怨念にしか見えない影が話をしてきた。
「おまえが......悪魔の......姫か?」
言葉がわかる。
「一応そうよ」
「私は......何百年も前......勇者に肉体を......破壊されて......今も魂だけ......彷徨っている。……お願いだ。私を……解放してくれ」
「どうやったら解放できるのよ。私、除霊師じゃないわ」
「……絶望の波動を......」
悪霊がそう言うと、私に近づいてくる。
ただの影なのに、私には、手を差し出しているように見えた。
その手を握る。
【対象が絶望の波動を求めています。まだ溜まっていませんが、許可しますか?】
どこからか声が聞こえる。
「かまわないわ」
私は独り言のようにつぶやくと影が固まり出す。
アクア、フレアと似たように影が人の形として姿を見せる。
「幼女?」
私はつい見下ろしてしまった。オカリナよりも幼い子は自身の身体を確認したあと、片膝をついた。
「解放していただき、ありがとうございます」
「解放って天に召されるとかじゃないの?」
「天に召されても地獄行きなんか嫌なので、この地に留まり、皆と共に私も姫様のしもべとして働きたく思います」
確かに悪霊が天国に行けるとは思えないが、人が増えても正直困る。
「なんで幼女なの? 魔王は幼女を勇者との戦争に行かせたの?」
「魔王? いや、私はただの食堂の娘でした」
「なんで勇者に倒されてるのよ?」
「出した料理が気に食わないと村ごと焼き尽くされました」
「どんな勇者よ!」
「その後、世界を彷徨っていたらそこのエルフ様が霊を募集していたので応募したら、悪霊を募集していたらしく、演じていました」
「演技だったの!?」
「はい。本来は接客業ですので」
「適性が別方向に高いのよ!」
「今後は皆様のためにあの洋館で料理を振る舞おうと思います」
「それがね、食材がないのよ。明日の朝ごはんもないのよ。しかも100人以上いるのよ」
「この森にはいっぱいキノコが生えていますが」
「全部毒キノコなのよ。なんなら毒リンゴまであるわよ」
「私ならば固有スキル分解権能 で毒成分を分解して安全に食事を提供することができます」
思わず身を乗り出す。
「採用!」
「ありがとうございます!」
「ところで名前は?」
「ミールと申します」
「それにしても、小さいのに食堂の手伝いなんて偉いわね」
「いや、成人してました」
ミールは申し訳なさそうに続けて言う。
「……絶望の波動が少なくて、身体が成長しきれなかったんです」
「……あー」
「いえ、その……悪気はございません!」
そう言われて、納得する部分があった。
その後、洋館の内装工事が終わり普通に住むことが出来るようになった。
家具家財はないが、それは今後増やしていけばいいだろう。
「まずは食事ですね」
ミールがにこりと笑う。
「……毒抜きキノコ、百人前です」
「量が現実的すぎるのよ!」




