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姫様、新居を失いました。

新居を楽しみにしながら帰った私だったが、完成した住居に絶句してしまった。


「なんで新築を建設していたはずなのに、廃墟が出来上がってるのよ」


目の前にそびえたつ禍々しい雰囲気の、無駄にでかい洋館。中に入ったらゾンビが大量発生してそうだ。


「姫様。まさに私たちの拠点としてふさわしい館かと」


「どこが!? あの窓ヒビ入ってるわよ? ってか、木材こっちで用意してたよね?」


「まあまあ、とりあえず中に入ってみましょう。女神や千尋も今頃内部見学してるでしょうし」


「そうね。内装に期待することにするわ」


私は玄関の扉の取手を掴むが、


「建て付けがなんで悪いのよ! 新築よね?」


「姫様。防衛を重視した結果、外部から侵入しにくくなっております」


「何から防衛するの?」


なんとか扉を開けて中に入ると、


「マジで洋館ね。ホールって初めてみたわ」


広々とした部屋に目の前に空中階段。左右に扉がある。


「……なんで階段浮いてるの?」


「掃除がしやすいかと」


「落ちるわよ!! で、この扉なんだけど、取っ手がないのよね」


「何か魔導具をはめ込む穴があります。探しに行きますか?」


「これ、住宅よね?」


「姫様。向こうの部屋は拷問部屋のようです」


「住宅に必要? それ」


「はい。万が一の来客用に」


「どんな来客想定してるのよ!!」


空中階段を上がり、なんとなく右の部屋の扉を開けた。


「なんでポルターガイスト現象が起きてるのよ!」


すかさず扉を閉めてしまった。


「オカリナ。大工たちを呼んできなさい!」


「何故ですか? まだ致命的な欠陥は確認されておりませんが」


「建て直しを要求するわ!」




「リィナ様から古の悪魔姫(デビルプリンセス)が住む相応しい館にしてくれと言われたんですが」


呼び戻された大工たちが困惑していたのだが、


「普通の住宅でいいのよ。土地はあるんだから平屋でいいの。私が渡した木材まだ使ってないんでしょ?」


「いえ。地下の作戦司令室兼牢屋で全部使いましたよ」


「なんで司令室が牢屋と兼任されているのよ。てか、司令室とか牢屋とかいらないの。リビングに寝室、お風呂とトイレが別なら文句は言わないわ」


「つまらなくないですか?」


「面白さを求めてどうするのよ」


「ではリィナ様に確認してきます」


「一番ダメなやつに聞くな!! ところでそのリィナと千尋を見てない? あの洋館に入ったと思うんだけど」


「中庭を見ましたか? 家庭菜園が趣味だと申しておりましたのでそこにいるかと思います」


「中庭ってどう行けたのよ」


「ピアノがある部屋があったでしょう? 弾くことにより隠し扉が開く仕掛けになっております」


「毎回ピアノを弾かせる扉って、なんの嫌がらせよ。まあ、オカリナ。扉を破壊してもいいから連れ戻してきて」


「かしこまりました!」


と、ここまで話して気づいたのだが、


「一日でどうやってこんな洋館建てたのよ?」


「それはですね。最初は俺たちでやってたんですが、エルフたちが集まってきましてね。古の悪魔姫(デビルプリンセス)にふさわしい館を建てていると言ったら、協力してくれたんですよ」


「そのエルフたちはどこに行ったのよ?」


「館の罠にかかって森の外にある病院に次々と運ばれて行きました。つまり、この洋館は血に染められているんです!」


「曰く付き物件じゃない!」


「でも見た目は良いでしょう?」


「見た目廃墟じゃない!!」


私は叫ぶと、天から声が聞こえてきた。


【絶望の波動を発動します】


私の身体から黒い霧、いや、闇そのものが溢れ出す。


その闇が人の形を作り出していく。


「火の四天王フレア、ここに見参! 放火なら俺様にお任せあれ!」


いきなり危ない発言をした黒いビキニパンツを履いた、日焼けした全裸のマッチョが現れた。


「絶望の波動から誕生する人は裸族って決まりがあるの?」


「正装です! 姫様。俺様になんでもご命令を! ああ、燃やしたい。放火をしたい!」


「やばい奴を生み出しちゃったわね。まあ、オカリナが千尋を連れて戻ってきたらあの廃墟を燃やして無かったことにして」


「御意に!」


だが、これだけ人が募ると家が何件必要になるだろう?


なんか元々住んでいたエルフが集まってきたとか言っていたし。


城下町が頭に浮かぶが、水と家庭菜園しかないのにそんな資金はない。


「とりあえず、テントを貸してくれないかしら?」





古の悪魔姫(デビルプリンセス)よ。私がエルフ一族を束ねる長のヴィオラと申します」


オカリナが千尋を連れて戻ってきたあと、洋館を爆破しようとしたら何人かのエルフたちが中から出てきては私に挨拶をしてきた。


ヴィオラと名乗るエルフは若い少女だが、なんとなく長生きしている風格はある。


「森の先住者だっけ? 怪しい建物を勝手に建てて申し訳なかったわ」


私は頭を下げると、


「いえ、とんでもございません! 人間たちから身を隠すためにこの森に住み、さらに寄せ付けさせないために毒キノコしか生えなくしたのですが、私たちが食べる物を失い、新たな移住先を求めて、この地を捨てたのです。ですので、今この森一帯は姫様のものです!」


「で、なんでまた戻ってきたの?」


「私たちは100名程度の少数民族なのですが、新たな地を探しに分散したのですが、誰かが見つけるだろうと思って、実は誰も探していなかったことがわかりました! で、この森に人がいたので聞いてみたら居住地を作るとのこと。ならば手伝って甘い汁を吸う作戦に出たのです!」


「開き直りが清々しいわね!!」


「そんなわけで姫様。私たちをしもべにしてどうか導いてくださいませ!」


とりあえず私は毒キノコをむしってヴィオラに聞いた。


「あなたたち、毒耐性ある?」

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