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姫様。固有スキルの存在を知ります。

「ま、なんにせよ食事が先ね」


「やはり毒キノコを食べるべきでは?」


「だからなんともないとわかってても、毒物を食べたくないの!」


結局同じやり取りをしていたのだが、


「そういえば貴様は毒キノコを食べて倒れていたようだが、状態異常の耐性はないのか?」


オカリナはリィナに聞くと、


「ないのう」


「本当に女神なのか?」


「耐性がないかわりに、お主らにはないものをもっておる。不老不死じゃ。例え木っ端微塵になっても翌朝には元通りじゃ。まぁ痛いのは痛いから決して自爆はしたくないのう」


「なるほどな」


「妾の偉大さをわかったかのう?」


「いや、湖でそのまま溺れさせておいて問題がなかったんだと姫様のご命令とはいえ後悔していた」


聞いてリィナは、今にも崩れ落ちそうな顔で


古の悪魔姫(デビルプリンセス)よ。こやつは神に対してゴミとしか見ておらんのじゃが、教育はどうなっておるのじゃ?」


「教育も何もさっき会ったばっかりよ。それに私はここの世界観わからないけど、神と魔族って敵対関係なんでしょ?」


「それはそうじゃが、神魔戦争なんぞ600年前に終わったではないか。魔王が勇者と聖女に打ち取られた形じゃがな」


するとオカリナの目つきと顔色が変わった。


「そうだ。あの戦争で魔王様は敗れ、魔族は没落し、絶滅危惧種とまで至ってしまった。私の父も死んだ。だから私の手で魔族の再興を果たしてみせる! 神も人間も私の敵だ!」


「オカリナと申したか。お主の父は誰に殺されたのじゃ?」


「川に洗濯に行った際、背後から熊に襲われて死んだ」


「それは熊を恨むべきであって、戦争どころか神や人間は関係ない気がするのう」


「神や人間が熊を操ったに決まってる! あの日、風向きが不自然だった!」


「いやぁ、熊ってそんなに言うこと聞かんぞ。それに風って関係ない気がするんじゃがのう。古の悪魔姫デビルプリンセスはどう思うんじゃ? お主が魔族の頂点なんじゃろう? 意見が聞きたいのう」


「正直、お腹がすいたから暗くなる前に森を出たいと思ってるわ。なんならこの後すぐに熊が出てきてくれたら熊鍋にありつけるとさえ思ってるくらいよ」


「お主、なかなかドライじゃのう」


「姫様。私の仇討ちを最優先にお考えいただき、ますます忠誠に励みたく思います!」


こやつ(オカリナ)は、もしかしてポンコツなのか?」


「安心しなさい、同レベルよ」


「妾、女神なのに悲しみ」


リィナを哀れみの目で見ていると、風が少し強くなった気がした。


「姫様。あれを!」


オカリナが指をさし、その先を見ると——


大きな熊が倒れていた。


近くに落ちていたキノコを手にして私は言った。


「どうやら、これ(毒キノコ)に当たったようね」


「よかったのう、これで復讐完了じゃ」


「いや、納得いってないんだが」


「細かいことは気にするでない。結果オーライじゃ」


「600年前の話なんでしょそれ」


「……そういえばそうじゃったのう」


「適当すぎない?」


「それより、熊はどうするのじゃ?」


「もちろん食べるわよ」


「毒キノコで死んだ熊なんじゃが」


「……やめておこうか」


こうして、私たちは結局、夕食は街に頼ることにしたのだった。




森の外に出たところにあった街。


その街の名はカシュタルと呼ぶらしい。


「リサイクルショップがあればいいんだけど」


私は街の入り口にあった大きな地図を見ては探したのだが、やはりこの世界にはリサイクルショップは存在していないようだ。


「何を探しているんじゃ?」


「このフリフリドレスを売りたいのよ。晩御飯代くらいにはなるでしょ?」


「それならば道具屋じゃのう」


道具屋。取り扱い範囲が広すぎるような気がしたが異世界ではそうなんだと思うことにした。


道具屋を見つけ、入店すると身体の大きなヒゲ面の男がカウンターに座っていた。おそらく彼が店主だろう。


「私が今着ているドレスを買い取ってほしい」


私は単刀直入に店主に話しかけると、震えた声で、


「ドレスって、もしかして神々のドレスじゃねえか? よく見せてくれ! 着替えは店にあるやつなんでもいいからよ!」


こんな動きにくいドレスに価値があるように思えなかったが、私には無用なものだ。ここは衣食住に換金すべきだろうと考えた。


時間がかかりそうなので、着替えたあとトイレを借りることにしたのだが、目の前に広がる光景に、私は絶望した。


「……嘘でしょ。穴すら開いてないじゃない」


そこにあるのは、ただの「木箱」と「砂の入ったバケツ」。


いや、冷静になればわかる。


ここは中世ヨーロッパ風の異世界。


水洗トイレなんてあるはずがないし、下水道だって整備されているか怪しい。


「スローライフを送りたいとは言ったけど……衛生環境までスロー(停滞)してろなんて言ってないわよ!」


かつて日本で当たり前のように享受していた、あの温水洗浄便座のぬくもりが、今は宇宙の彼方の奇跡のように思える。


私は便座の蓋(ただの木の板)を見つめたまま、一歩も動けなくなった。


「姫様? トイレの中で何か儀式でも行っておられるのですか?」


外からオカリナの能天気な声が聞こえる。


今まで異世界だからと我慢してきたが、これはさすがに無理だ。


私は絶望を覚えた。


すると、どこからか、いや、私の頭に直接誰かが伝えてくる。


【絶望の波動を発動します】


意味がわからないから無視した。


私の身体から黒い霧、いや、闇そのものが溢れ出す。


その闇が人の形を作り出していっているのがわかった。


狭いトイレ空間に、トイレらしき木箱がある。


その木箱を跨ぐ形で上半身裸の貝殻パンツ一丁の大男が現れたと思いきや、何故かボディービルダーがやりそうなポーズを決めた。


「よりによって水回りで絶望するとは……我をお呼びですか。水の四天王アクア。参上致しました」


突然現れた変態に対して、私は悲鳴を上げることしかできなかった。


「姫様。失礼します!」


すかさずオカリナが乱暴に扉を開けては、私の目の前に立っている、貝殻パンツ一丁の裸の大男を凝視する。


「姫様。お父上ですか?」


「んなわけないでしょ! なんか突然現れたのよ!」


私とオカリナのやりとりを見ていた大男は困った顔をして、


「とりあえず場所を変えさせてください。ここは狭いし汚いし、臭います」


と、言ってくれたのであった。




道具屋に置かれていた椅子に座ると、


「改めて。俺は水の四天王アクア=マリンと申します。姫様の絶望の波動から作り出されました」


見た目は公然わいせつ罪の大男だが、中身はまともな人のようだった。


「その絶望の波動って何よ?」


「姫様。もしかしたら、ご自身のステータスに書かれているのでは?」


オカリナにそう言われたので、目を不審者のごとく細めてみた。


ステータス画面が出てきて、相変わらずレベル1だと知らされ、状態異常無効と再認識し、次のページを押す。


固有スキルとデカデカと書かれていて次の段に、知りたいことが書かれていた。


絶望の波動。


身体に込められたストレスを強制的に排出し、従者を召喚する。


なるほど。


理屈は理解した。


「で、なんで全裸なのよ?」


改めてアクアに聞くと、


「正装で登場したつもりですが」


「じゃあドレスを売った資金であなたの服も買ってあげるから、それを正装にして」


「え?」


「命令よ」


「......かしこまりました」


どうやら、姫と従者の関係は絶対らしい。服さえ着てくれたら頼りになるボディーガードになってくれそうだと考えた。それに、


「水の四天王ってことは、水を自由自在に操れるくらいできるわよね。温水とまでいかなくても水洗トイレは作れるわよね?」


するとアクアは困った顔をして、


「レベル1なんでそんな自由自在に操れませんよ。今はまだ水の元素記号が分かる程度です」


だめだこいつ。早くなんとかしないと。


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