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姫様。女神を救おうとします。

「では姫様。早速ですが世界征服のためにまずは拠点。つまり城です! 築城しましょう!」


張り切って巨大な鎌をブンブン振り回すオカリナに、私は首を振る。


「城どころか犬小屋すら作ったことないわよ。その前にこの森って誰かの所有地とかじゃないの?」


「関係ありません。持ち主が文句を言ってきたら脅して権利を奪えばいいのです!」


「堂々と犯罪ルート行かないで」


「じゃあバレないように抹殺しましょう」


「悪化してるだけじゃない! 駄目よ。持ち主がいて、ここに建てるなら買い取らないと」


「しかし姫様。私は人間が持つ貨幣を持ち合わせておりません」


「私も有金ゼロよ。正直今は土地よりも今夜の食事と寝床を考えるべきよ」


「食べ物なら毒キノコがわんさか生えてますから問題ないかと。寝床はそこらへんで寝ましょう」


「嫌よ。毒キノコなんか食べたら死んじゃうじゃない」


「姫様も毒耐性をお持ちでは? ならば問題ありませんよ」


「“かもしれない”で命かけるのやめて。どうやったら耐性持ちかわかるの?」


「目をこう細くすると、自らのステータス画面が現れます」


「それただの不審者の目つきじゃない?」


それでも私は言われた通り目を凝らすと——





ミナエ レベル1。


「弱っ!」


つい叫んでしまったが、これは仕方がない。


私は続きを読むことにする。


職業/古の悪魔姫(デビルプリンセス)


その下には、細かな自分の情報が数値化されている画面が表示される。


「次のページ?」


私はつい癖でその文字を押してしまうと、


いかなる状態異常に対して無効


とだけ書かれていた。


「うん。ラスボスについてそうな表記。……ていうか説明が雑すぎない?」


まだ次のページと表示されていたが、


「姫様。ご確認できましたか?」


オカリナが話しかけてきたので我に返ってしまいステータス画面を消してしまった。


「いかなる状態異常に対して無効と書かれていたけど」


「なら毒キノコを食べても大丈夫です。早速採ってきます!」


「ちょっと待ってよ。耐性があるって書かれていても、わざわざ食べたくないわよ! てか、毒キノコしかこの森に食べ物ないわけ?」


「動物がいますが、そのままかじるのはちょっと......」


「調理という概念ないの!? 例えば火を起こすとか」


「炎の魔法は使えますが、森ごと燃えます」


「手加減という概念もないのね......」


私はつい天を見上げてしまったのだった。





「結局、毒キノコを採集するんですね」


毒キノコを探しに森を歩くことにした。


「森を出て街に行ったところで買い物すらできないなら意味ないでしょ。とりあえず腹を満たさないと」


「さすが姫様。懸命な判断です」


目を輝かせるオカリナだが、できれば毒キノコは食べたくない。


しばらく歩くと、オカリナが指をさした。


「姫様。あれを」


その先には道端で倒れている人がいた。


「助けないと」


咄嗟に言って駆け寄ろうとする私だったが、オカリナが引き止める。


「何故助ける必要があるのですか?」


目つきが冷たい。


「むしろ助けない理由を知りたいわ」


「あれ、女神ですよ?」


「......今、なんて言ったの?」


「見た感じ毒耐性もないくせに空腹で毒キノコに手をつけた女神です」


魔族からしたら神は敵でしかないらしいのだが、見捨てるのも後味が悪いので湖に連れてきた。


「とりあえず水を飲ませましょう」


「そうね。見た感じ綺麗な水だから毒キノコよりはマシだろうしね。じゃあ汲んでくる」


「姫様、お待ち下さい。わざわざ姫様自らその様な真似をする必要はございません」


オカリナが水を汲みに行くかと思いきや。


「ほら、たくさん飲め」


オカリナが女神らしき人を、ゴミを捨てるような手つきで湖にぶん投げた。


「ちょ、あんた何してるのよ!」


沈んでいくと思いきや、すぐに女神がバシャバシャと溺れ出した。


「残念ながら気がついたようですね」


「これは良かった......の?」


「はい。これで自力で水を飲めます」


「発想が雑すぎるのよ!」


「た、たすけ……ごぼっ……神にこの仕打ち……!?」


「神の扱いも雑すぎるのよ!」



 


その後、湖から救出したのだが3人ともずぶ濡れになってしまった。


「焚き火を起こせないのはきついわね。」


「我々は寒さに耐性がありますし、風邪をひいて死ぬほど女神はやわじゃないかと思いますが」


「道徳観ないの?」


「姫様。我々にとって神は宿敵以外、何者でもありません。人間以上に抹殺すべきと進言します」


「まあまあ、女神に恩をうって損はないでしょ」


「損しかないと思いますが」


「ん......うーん.....」


どうやら目を覚ましたようだ。


「気がついたようね」


「妾はいったい......」


「姫様の寛大な心に感謝することだな」


オカリナがぶっきらぼうに言うと、女神っぽいのが起き上がっては私に言った。


「ほう。古の悪魔姫(デビルプリンセス)ではないか。2万年ぶりかのう?」


「初対面よ」


「それならそれでかまわぬ。経緯はどうであれ、妾は助けられたようじゃな」


「私はミナエ。こっちはオカリナよ」


「ふっ、ならば妾も自己紹介をせねばならぬな」


そう言い立ち上がると白き翼をバサっと広げ、


「妾は慈愛の女神リィナ。創造神、破壊神と並ぶ3大神の1人よ。って、おかしいのう」


「なにがよ?」


「ピカーって身体中から光が照らされるはずなんじゃが」


「お腹が空いてるからじゃない?」


「そうじゃのう。なんか食わせてくれぬか?」


「毒キノコしかないわよ?」


「神への扱い、雑すぎやしないかのう?」


「この世界、全体的に雑なのよ」


「否定はできません」




「とりあえず、森を出たら街があるんでしょ? 歩きながら食べ物と雨風防げる場所にありつける方法を考えない?」


どうにかこうにか焚き火をつけようとしては失敗し続け、あきらめたところで囲みながら今後の話をしてみた。


「まあ強奪するのが簡単かとは思いますが」


「そうじゃのう。今ならお主らのせいにできる」


「あんた、本当に慈愛の女神なの?」


「というか女神のくせに私たちについてくる気だったのか?」


「魔族を監視するのが神の勤めじゃ」


食事目当てなのが見え見えなのにプライドは高そう。そう見ていたのだがオカリナがリィナに堂々と宣言する。


「女神よ。私たちの目的は城を建て辺り一帯を支配し、結果的には魔族が世界征服することだ。今は没落し絶滅危惧種とはいえ、いつか再興してみせる!」


「なんじゃと!」


「ふはは。悔しがろう。しかし貴様には止められないぞ!」


「いや、お主らについていけば妾も城に住めそうじゃな。と、思ってのう」


「3大神としてのプライドはないのか?」


「ない!」


どうやらプライドはなかったようだ。


何故か安心したので2人に言った。


「あ、私は別に城とか世界征服に興味はないわよ? こじんまりとした家に住んで自給自足できたらいいなと思っているから」


これで安心してスローライフを送れそうだ。


少し安心すると、


「私と言ってることが同じなんですが」


「なんでそうなるのよ!」


「拠点を持ち他人の力を借りない生き方をするんですよね?」


「そうよ」


「そんな他種族の力を借りない生き方をしていたら、庇護を求めて仲間に入れてくれって同志が尋ねてくると思います。仲間が増えると土地が必要になります。結果的に世界征服ではありませんか?」


私は頭を抱えてしまった。確かにすでに私にはオカリナがついてきているし、会話からしてリィナまでくっついてきた。


オカリナの言っていることは極論だがあってはいるのだ。


つまり、私が求めるスローライフを送るためには世界征服が必須だと知って絶望を覚えたのであった。


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