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姫様、村の名前を決めました。

床に直接寝たはずなのに、身体はまったく痛くない。


……この身体、ほんと人間じゃないのね。


「姫様。おはようございます」


部屋から出ると、見たことのないエルフが待っていたかのように挨拶をしてきた。


「おはよう」


「姫様。食堂でヴィオラ族長がお待ちです」


言われたとおりに食堂に行くと、


「おはようございます」


ヴィオラが立ち上がって頭を下げてきた。


「おはよう。それにしてもすごいキノコの量ね」


大皿に山盛りのキノコの山。


「毒成分は見事に取り除かれていますが調味料がないので、フレア様協力のもと焼くことしかできなかったそうです」


言われたらその通りだ。


「せめて塩は欲しいわね」


「それも含めて相談がございます。この洋館を姫様の自宅にして、エルフ族は皆の住居や施設を建築する者、千尋様と共に森を開拓し開墾する者、ミール様と共に調理を手伝う者、姫様の身の回りをお世話する者に分けたいと思います」


「私のことは私がやるわよ」


「そうはいきません! オカリナ様に話を聞いたら姫様はいずれ世界征服をされるお方、ボディーガードはもちろん、姫様のスケジュールを管理する者が必要になります!」


オカリナめ。余計なことを言ったんだろう。


「あのね。私は静かに自給自足を楽しむスローライフを希望してるのよ。できたら今にでも小さな家で悠々と過ごしたいのよ」


「その場合、毎食キノコになります」


「え?」


「私が束ねたところで維持はできても発展はできません。今おっしゃった塩についてもよくわかっておりません。私たちは素材で十分だと思っております。それにオカリナ様やリィナ様、千尋様やミール様は私に従わないでしょう」


「つまり、私はスローライフは送れないわけ?」


「いえ、きちんとスケジュールを管理してもらい、日々の生活にメリハリをつけることです。姫様がそれをやればしもべである私たちも見習うことでしょう」


「なるほど」


「例えば姫様が自ら塩なるものを取りに行く必要はございません。この洋館で私たちに塩をとってこいと命じるだけでよろしいのです」


「……つまり、生活基準を良くするために知恵を使って指示役に徹してくれってことね?」


「理解が早くて助かります。では、早速姫様にお願いがございます。この村に名前をつけてください」


「村のままでいいんじゃない?」


「いずれ首都になりますので、真面目にお考え願えますか?」


「いきなり言われても思い浮かばないから皆の意見を聞いてもいい?」


そんなわけで、オカリナ、リィナ、千尋を食堂に招いた。テーブルと椅子がここにしかないからだ。


「リンゴでも食べながらどうぞ」


ミールが出してくれた。


「で、村の名前を決めたいんだけどなんかある?」


私が聞くと、オカリナが手を上げた。


「魔界がいいと思います」


「それなら聖域がいいのう」


「女神よ。それが村の名前か!」


「魔界だっておかしいじゃろう」


それを聞いて、千尋が手を上げた。


「なんとなくトランペット村とかは?」


「トランペット村……よろしい響きかと」


ミールが静かに頷く。


「じゃ、それで決定ね。はい。解散」


「いいの? 首都になるかもしれない名前をそんな簡単に決めて!」


「多数決したのよ。3票入って過半数に達したわ」


「いつの間に!?」


「トランペット村、ですか……」


ヴィオラが頷く。


「――後に世界を震わせる都市の名として、記録しておきます」


「重くない!?」


一旦休憩を取った後、私は次の話題に切り替えた。


「で、トランペット村の今後だけど、正直、塩と醤油が欲しくない?」


「私は他の食材が欲しいわ。キノコばかりじゃ飽きない? 家庭菜園レベルだけどこれがいいってのがあったら教えて欲しいかな」


「むしろ畑の範囲を広げられない?」


「色々エルフたちと試してみるよ。それにしても火と水の四天王が力を合わせて給湯器ができたのは本当便利よね」


「エルフが洋館を魔改造した魔導具が電気代わりになって生活が便利になったもんね」


「で、話は戻すけど塩や醤油、他の食材ってやっぱり輸入に頼るしかないんじゃない? ってことは輸出。つまり売れるものを開発したいよね」


悩む私。アイディアが出てこない。


「姫様。やはり他国を滅ぼして奪うのは?」


「女神の奇跡として徴収すればよいのう」


「うん。2人とも黙っておこうか」


しょんぼりするオカリナとリィナだが、


「そういえば、カシュタルの街にいた神族の医者がこの村に住みたがっていましたが、いつ来るのでしょうか?」


オカリナに聞かれて、私もハッとした。


「すっかり忘れていたわ。建築班に診療所も作ってもらわないといけないんだった。呼ぶから打ち合わせしてもらえる?」


私はヴィオラにお願いをすると、


「かしこまりました。でもどうして医者がこの村にきたがっているのでしょうか?」


「なんでもこの森に生えていた雑草がエリクサーだったらしく調べたいみたいよ?」


「なら協力を得てポーションとか作れませんかね? 綺麗な水はいくらでもございます」


「いいアイディアだとは思うんだけど、彼、結構金に汚いのよね。経済を担わせると持ち逃げとかされそうで怖いのよね」


海王ポセイドンに法外な治療費を請求していたことを思い出した。


「ならば呼ぶ前に手を打つ必要がございますが、正直、法律や税金などの分野に明るい方が欲しいです」


ヴィオラの言う通り、村として生きていくためには、やはり「法」が必要なのだ。


「私はそういうのわからないからなあ。どうしたもんか......」


私はそう言って頭を抱えていると、ヴィオラが思い出したように言った。


「そういえば、この洋館に地下に作戦会議室兼牢屋があるって言いましたよね」


「兼任している意味がわからないやつね」


「その牢屋に人間の女が勝手に閉じ込められていたんですよ。『いきなり生存が危ぶまれるスタートとかありえない!』って騒いでいたことをすっかり忘れてました「」


「忘れないであげて!」


村の統治者として初めての指示が、牢屋に閉じ込められていた人物の解放だった。

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