最上の宝と最大の喜び!
『絶望の淵から這い上がろうとする、か弱き人の子よ。……私の声が聞こえますか?』
「な、なんだ……!? この声は……っ!」
老人は突如演説を止め、驚愕の表情で立ちすくんだ。
さっきまで熱狂していた人々も、リーダーの異変に気づき、唖然として彼を見つめている。
『あなたの、人々の心へと訴えかける言葉の数々は、我が主の元へも届きました。あなたには、我が主である「ノービス」の代弁者となり、その意志を人々に届けてほしいのです』
「……皆! 静かに!! か、神が……神が私に語りかけておられるぞ!」
老人の必死な叫びに、民衆は即座に歓声を止め、固唾を飲んで次の言葉を待った。静寂が、冷たいほどに街を支配する。
『あなたは神に選ばれたのです。さぁ、あなたの名前を教えなさい』
(ま、間違いない……。この尊い響き、本物の神の使いだ……!)
「わ、私はペリクレスと申します。……あなたは、本当に神なのですか?」
『ペリクレス。良き名ですね。私の名はリリア、慈悲深き神ノービスに仕える者です。私はノービス様の言伝通り、あなたを神の代弁者に任ずるために降臨しました。さぁ、答えを聞かせなさい』
「もちろんです、リリア様! そして、あなたの主である慈悲深きノービス様にもお伝えください。このペリクレス、命に代えても与えられた使命を果たすと!」
『そうですか。その言葉を届ければ、我が主もきっとお喜びになるでしょう』
リリアの声が消えると、ペリクレスは再び、今度はより一層の力強さを持って群衆に向き直った。
「皆、聴くのだ! 神は我々の苦難の叫びに応えてくださった! そして今、私は神の使いリリアより、神の声の代弁者としての地位を授かったのだ。皆、私の言葉を神の言葉として刻め。そして、偉大で慈悲深き神『ノービス』を称えるのだ!!」
「うおおお……っ!!」
再び爆発しかけた歓声。
しかし、それを一瞬で凍りつかせる凶悪な叫びが、広場に響き渡った。
「——ふざけるなーーーー!!!」
怒号。
一人の男の叫び声に、人々は水を打ったように静まり返った。




