神様だって緊張する!
「いい滑り出しですね、ノービス様! こんなに鮮やかなスタートを切れるなんて素晴らしいです!」
「いやぁ~、それほどでもないってば。えへへ……♪」
リリアの珍しい絶賛に、俺はすっかり鼻の下を伸ばしていた。
「私たちも、地上の人々と同じく大いに喜びを分かち合いましょう!」
「ああ、もちろんだ! ……って、いやいやいや! まだ早いだろ!」
危うく自分まで踊り出すところだった。俺は慌てて自分を律する。
「おっと、これは失礼。あまりに力強く、不貞とも無縁な清らかな神様の登場に、つい心が浮ついてしまいました。……コホン。さて、まずは信仰力を確固たるものにするためにも、あなたの『生名』を人々に広めなければなりませんね」
「お、おう……なんだか緊張してきたぞ。ど、ど、どうすればいいんだ?」
「安心してください。主人の名を人々に知らしめるのは、代行者である天使の務めですから」
リリアが頼もしく胸を張る。
「オッケー……。それで、俺は何をすれば?」
「あなたには、神の声を地上へ届けるための『預言者』を選んでいただきます。さて、誰にしましょうか?」
俺は雲の上から地上を見下ろし、目を皿のようにして探した。
「うーん……あの老人はどうかな? ほら、さっきから群衆の前でノリノリで演説してる人。見た目もいかにも『導き手』って感じだし」
「分かりました。では彼を指名しましょう。神の名と、これからの人々の使命について、私からしっかりと言伝して参ります」
「ああ、頼んだよリリア!」
意気揚々と送り出し、リリアは地上へと向かって降下していった。
……が。
(……はぁ、どうしましょう。もし伝えている最中に噛んだり、言葉に詰まったりしたら……。あぁ、不安で押しつぶされそうです)
さっきまでの自信満々な態度はどこへやら。
リリアは真っ青な顔で、震える右手のひらに「天」という文字を書き、それをペロリと飲み込んだ。天使のくせに、めちゃくちゃ緊張に弱いタイプだったらしい。




