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神から神にさせられたので、廃れた世界、街を一から再建する事にしました。  作者: 逆立ちハムスター


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緊張させる静粛

「神話、もう刻まれてるのか」

「仕事が早いですね。あれから地上では、およそ10年という月日が流れています」

「10年か……。天界で本を読んでる間に、そんなに経っちゃったんだな」


ノービスは牛の姿のまま、のっそりと辺りを見渡した。

かつて崩落していた城壁は強固に修復され、誇らしげな青い旗が風にたなびいている。枯れ果てていた大地には瑞々しい緑が蘇り、石造りの清潔な家々が整然と並ぶその光景は、もはや「絶望の淵」などではなかった。


「少し、街を見て回りたいな。みんな頑張ったんだし」

「お気持ちは分かります。ですが、まずは先にやるべきことを済ませましょう」

「……神殿への挨拶、だよね」

「ええ。安心してください。地上に降りている間は、時の流れは人々と同じ。急ぐ必要はありませんから」

「そっか。じゃあ、後で一緒に散歩しよう」

「もちろんです。では、こちらへ。参りましょう」


優雅に翼を動かす白鳥と、重厚に歩む白い牛。二人は神殿へと向かうが、不思議なことに、密集している群衆をすり抜けても誰一人として彼らに触れることはなかった。


神殿の内部は、外の喧騒とは打って変わって荘厳な空気に満ちていた。


「あの中央にいるのがペリクレスですね」

リリアの視線の先には、真っ白なヒマティオンを纏い、銀色の月柱冠を頂いた老人の姿があった。10年の歳月は彼の髪をより白く変えていたが、その眼光には民を導く者としての力強い光が宿っている。


「10年も、ずっとあんな風に頑張ってくれてたんだな……」

「感銘を受けましたか?」

「……うん。なんだか、胸に込み上げてくるものがあるよ」


そんな主人の言葉に満足げに頷くと、白鳥――リリアは凛とした声を響かせた。


『ペリクレスよ。私の声が聞こえますか?』


「……っ! おおぉ……!」

脳内に響く声に、ペリクレスは即座に反応した。


「皆、静粛に! 神の使い、リリア様がこの神殿へと降臨なされたぞ!!」


「まさか!? 神殿の完成を祝うこの佳き日にか!?」

「なんと……ノービス様は我々を見放さず、ずっと見守ってくださっていたのだ!」

「ああ、神よ! 偉大なるノービス様! 我らのこの10年の献身を、どうかお受け取りください!」


神殿内は一気に興奮の渦に包まれた。

「静粛に! 静粛になさい!!」

ペリクレスが必死に群衆をなだめる。やがて、一人、また一人と人々は口を慎み、ひざまずき――神殿は、針の落ちる音すら聞こえそうなほどの静寂に包まれた。


数千の視線と祈りが、自分たちが今立っている「何もない空間」へと注がれている。

牛の姿をしたノービスは、その信仰の重みを肌で感じていた。

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