マニュアルなし!
「天地創造、まだなの!? せっかくやる気満々だったのに……」
「当分先のお楽しみですね。今はまず、地道に人々の信仰を集めて、神としてのランクを上げていくのが先決です」
あなたが手引き書の余白に『預言者:ペリクレス』と熱心にメモしている横で、リリアは少し誇らしげに微笑んだ。
「さて、ここからは個々の神様の『知性』が試されるフェーズです。私がアドバイスできることも、少しずつ減っていくでしょうね」
「えっ、リリア、どこか行っちゃうの!?」
慌てて顔を上げた俺に、リリアは「ふふっ」と悪戯っぽく、けれど優しく目を細めた。
「大丈夫ですよ。ちゃんと最後まで、一番近くでサポートしますから。あなたが思い描く素晴らしい世界を、一緒に実現させましょうね♪」
「……よし! やるぞー!」
数分後(地上では……)
「ノービス様。あなたの神殿が完成したようですよ」
「えっ、もう!? 早くない? 5分くらいしか経ってない気がするけど」
「天界と下界では、時の流れが違いますから。人々に長く寄り添いたいなら、地上に長く留まる必要がありますよ」
「なるほど、これが神様の時間感覚か……。じゃあ、さっそく降りてみよう。リリアも来てくれるんだろ?」
「もちろんです。どんな神殿ができたのか、気になりますもの」
「はっはっ、そうだな! よーし、行こう! ………………」
「…………」
「……リリア。どうやって飛ぶんだっけ?」
「もー。……地上に意識を集中させてください」
言われた通り、目を閉じて下界のイメージを広げる。
すると、雲を突き抜けたその先、人々の祈りの声や、新しく建てられた白い石造りの神殿が、まるで4Kモニターのように鮮明に浮かび上がってきた。
「おお……! 見える、神殿だ!」
「そうです。あとは先ほどと同じ。行きたい場所をロックオンして、力を一気に解き放つだけです!」
「よし、今度こそスマートに決めるぞ……。せいッ!!」
地上:神殿前
一陣の清らかな風と共に、まばゆい光の柱が神殿の広場に降り立った。
周囲にいた人々が息を呑み、膝をつく。
光が収まったそこには、威風堂々とした(つもりで、少し緊張気味の)新米神様と、その傍らで涼しげに羽を休める天使の姿があった。
「お、おおお……神よ、ノービス様!!」
ペリクレスを筆頭に、地上の民が地鳴りのような歓喜に包まれる。




