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第八章 初任給

姫は涼しい顔で言い放った。

「アナタ達に給料を支払わないと、誰が言いました?」

「命がけの仕事です。公務員としては破格――特別時給三千円ですよ」

ケンタは腕を組み、渋い顔だ。

「でも移動時間とか、全然儲からないし」

「月で考えると、意外と金にならないバイトだよな」

その瞬間、姫のこめかみに青筋が浮かぶ。

「……そんなに“タダ”がお望みなら」

「ケンタさん“だけ”無償でもいいんですよ?」

ハルトが慌てて割って入る。

「ケンタ、すまん……お前だけタダなのに、オレは給料もらうわ」

ナギは目頭に手を当て、ポンとケンタの肩を叩いた。

ヒマリは両手を胸の前で合わせ、祈るような仕草をする。

「お前ら……本当に友達がいないな?」

ケンタが呆れた声を出す。

セントが肩をすくめる。

「オレだけは味方だからな」

「どの口が言うんだ」

ケンタは即座に返す。

「最初にオレ達を“姫の召喚獣”って言い出したのお前だろ」

姫は咳払いを一つして、話を切り替えた。

「ナギさん、ヒマリさん。アナタ達は魔物に六十八時間拘束されました」

「なので……二十万四千円です」

そう言って、二人に封筒を手渡す。

「ハルト様は六時間拘束で――」

「一万八千円です」

ハルトは目を丸くした。

「オレの小遣いより高い……」

三人は肩を組み、素直に喜ぶ。

ケンタは羨ましそうに、その様子を横目で見ていた。

すると姫が、そっとケンタの手の上に封筒を置き――そのまま顔を抱きしめた。

「アナタにだけ、あげないわけないでしょ」

次の瞬間、ケンタは姫の腕の中で崩れ落ちた。

「……失神してる」

ハルトが覗き込み、言う。

「しかも鼻血」

「姫ちゃん、ダイタンだね」

ナギが苦笑する。

「セントにいきなりキスした時もそうだけど」

ヒマリも続ける。

「かなりダイタンよね」

姫は首をかしげた。

「美少女のキスやハグって、男の子は喜ぶものじゃないの?」

「自分で“美少女”って言うんだ」

ナギが即ツッコむ。

「確信犯だね」

ヒマリも頷いた。

「仲間にしたければ、身体を許すくらいしなさいってバアヤが」

姫は悪びれずに言う。

その間もケンタは、意識を失いながら首を縦にブンブン振っている。

「だからケンタはモテないんだよ」

ヒマリがため息をつく。

「私に一途だったら、付き合ってあげようと思ってたのに」

ケンタは、姫とヒマリを交互に見比べ、品定めするような視線を送る。

「……ミナトはいいの?」

ナギがヒマリに尋ねた。

「何年も何年も待って、疲れちゃった」

ヒマリは小さく笑った。

ナギは何も言わず、ヒマリの頭を優しく撫でる。

「今の、完全にヒマリ振ったからね」

ケンタが指摘する。

助けを求めるように、セントとハルトを見る。

「なあ……」

「ケンタ、モテ期到来だな」

ハルトがニヤリとする。

「私、モテないなー」

姫がぽつりと言う。

ケンタは、そっと姫の方も見た。

「お前、将来女に振り回されるタイプだな」

セントが断言する。

「……なんかわかる気がする」

ハルトも同意した。

姫は手を叩いた。

「はい、冗談はここまで」

「仕事に行ってください」

「え、冗談だったの?」

ケンタが聞く。

「私は本気よ」

ヒマリは真顔だった。

ケンタが振り向く。

「ただし――一途な人がいいけどね」


 

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