第四章 再会
警察
「あなた、この少年のパンチで車が跳ね飛ばされたと?
……そんな話、信じろと言うんですか」
男
「オレだって信じられねえよ」
警察
「警察も暇じゃないんでね」
「それに――あなた、この家族への接近禁止令が出てますよね?」
「いつまでしつこくつきまとうつもりですか。次は本当に捕まえますよ」
――――――
ラーメン屋の前を通りかかると、店主の怒鳴り声が飛んだ。
店主
「何度タダで食う気だ! 二度と来るな!」
ナギ
「……ケンタ、何やってんのよ」
ケンタ
「特盛り無料を毎日食ってたら、さすがにキレられた」
ハルト
「ケンタらしいな」
「で、とうとう来たぞ。召集令状」
ケンタ
「お前が呼ばれて、オレが呼ばれねえわけないだろ?」
ナギ
「“国の特務機関”? 陰陽師?」
「それに“加茂のお姫様”って、なにそれ……」
ハルト
「現代の菩薩、あるいは天使」
「オカルト界隈じゃ、密かに噂されてる存在らしい」
ケンタ
「一般人だろ? オレたちを呼び出す権利なんて――」
ハルト
「だから国家機関なんだよ。総務省の闇の部署」
「……胡散臭さ満点だけどな」
――――――
少女
「……うちのアパートで、何かあったんですか?」
女
「あんた隣の子かい?」
「男があんたんちに立てこもってね」
「警察が扉を蹴破ったって、大家さんも怒ってたよ」
「もう出て行ってもらうってさ」
少女
「セント……どうしたの?」
セント
「白霧のスペースだ」
次の瞬間。
少女とセント以外の存在は消え、そこには“扉”だけが残った。
上下左右、すべてが灰色に塗り潰された世界。
少女
「なに、これ……」
彼女は見慣れた自宅の扉へと近づく。
「……本当だ。私の家の扉」
「落書きまで、そのまま」
内側に回る。
「こっちも……塗装の剥げ方まで同じ」
興味本位でチェーンを外し、扉を開けた。
――――――
警察
「突入!」
現実世界。
少女は毛布に包まれ、女性警官に抱えられて連れていかれる。
警察
「17時07分、身柄確保」
母親も同じく毛布に包まれ、救急車へ。
医師
「ご本人が大丈夫だと思っていても、後遺症が出る可能性があります」
――――――
ハルト
「……これ、霊柩車だよな」
ナギ
「そうとも言えるわね」
ケンタ
「なんでこんな車なんだよ」
ヒマリ
「無駄に豪華よね……」
ナギ
「運転手も、冥界の案内人みたいに青白かったし――」
「きゃっ、やめてよ!」
ハルト
「ナギ、オカルト苦手だもんな」
運転手
「こちらが、お仕事の場所になります」
そこにあったのは――廃病院。
ハルト
「情報は?」
運転手
「私は、ここまでお連れするのが役目です」
「中には……言葉にしがたい魔物の類が、いるのでしょう」
――――――
担任教師
「あなた、ナギちゃんと仲が良かったわよね」
少女
「この前、初めて話しただけですけど」
担任
「修学旅行のアンケート、明日までなの」
「今日、あの子たち休んだでしょ?」
少女
「あの子たち……?」
担任
「ええ。ヒマリちゃんも」
「悪いけど、回収してきてくれる?」
――――――
少女
「ナギちゃんち、この辺なんだけど……」
「セント、付き合わせちゃってごめんね」
セントは無言でうなずく。
少女
「……あ、ここだ」
扉が開き、部屋から男が出てくる。
少女
「隣のクラスのハルト君だよね?」
「ナギちゃんいる? 修学旅行のアンケート――」
ハルト
「ナギとヒマリは、行方不明だ」
少女
「え……?」
ハルトはセントを見て、目を見開く。
ハルト
「……ギル」
少女
「この子は、セント」
ハルト
「……すまない、人違いだった」
少女
「行方不明って、どういうこと?」
ハルト
「言葉の通りだ」
「某県の廃病院で、はぐれてから戻ってない」
ケンタ
「ヒマリの家にも行った」
「だが、戻った形跡はない」
ケンタはセントを睨みつける。
ケンタ
「ギル」
少女
「この子はセントだって――」
ケンタ
「オレがギルを見間違えるわけがない」
「ここで会ったが百年目だ」
拳に雷が宿り、ギル――いや、セントへ叩きつけられる。
――ゴォォンッ!
魔力が飛散し、空気が震えた。
ギルは盾を構えている。
――伝説の盾。
ケンタ
「……この感覚、久しぶりだ」
魔力切れ。
ケンタはその場に崩れ落ちた。
ハルト
「やっぱり……ギルなんだな」
セント
「その名は捨てた」
「今は――セント」
「みさとが、そう名付けてくれた」




