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第三章 目撃

セントは校門の前に立ち、みさとを待っていた。

金髪に蒼い瞳。その姿は、この田舎の高校ではどうしても浮く。

「セント、よく私の高校わかったわね」

みさとが笑いかける。

制服の内側には、いつものようにコインが忍ばせてあった。

――ウインクする気配が、確かにあった。

「今日は何してたの?」

みさとは自然に腕を絡めてくる。

セントは淡々と答えた。

「母上殿の弁当の買い出し。

それと古物商なる処で金貨を現金に。

ゲームセンターなる処で、コインを集めていた」

そう言って、巾着を差し出す。

中には現金十八万円と、ぎっしり詰まった五百円玉。

「……多すぎでしょ」

その時、声がかかった。

「みさと、その人紹介して」

ナギだった。

みさとはあっさり言う。

「セントよ」

ナギは一瞬、目を見開く。

(……ギルじゃないんだ。びっくりするじゃない)

ヒマリが首を傾げる。

「ギルじゃなかったの?」

ナギは首を横に振った。

「じゃあね。私はミナトの病院寄ってから帰るから」

「私もハルトの部活終わり待ちだから」

「みさと、また明日ね」

二人は手を振り、校舎へ戻っていった。

「珍しいわね。神隠しの子たちと話すなんて」

みさとは小さく息をつく。

「神様――セントのおかげで、アパート追い出されずに済みそう」

その夜。

「金、用意できたのかい?」

大家が腕を組んで立っている。

「家賃三万円、六ヶ月分。払えなきゃ出てってもらうよ」

みさとは無言で、現金十八万円を握らせた。

「これで……また住んでいいよね」

大家は一瞬渋い顔をしたが、すぐに笑顔になる。

「私はね、悪いことしてでも金さえ払ってくれりゃいいんだよ」

「さすが神様」

みさとは小さく笑った。

「なんだか、運が上向いてきた気がする」

玄関に、男が立っていた。

「俺と結婚すりゃ、普通の暮らしができる」

「借金もチャラだ。何を悩む必要がある?」

みさとは答えず、巾着を差し出した。

「はい、お金」

中身は五百円玉ばかり。

「おい、いくら入ってるんだよ」

返事の代わりに、扉が閉まる。

施錠の音。

「ごめんね、セント」

「あなたにもらったお金、全部使っちゃった」

「問題ない」

セントは、もう一つの巾着をみさとの手に握らせた。

「……今日はバイトサボって、デートしようかな」

二人は街へ出た。

買い物をして、他愛ない時間を過ごす。

だが、帰り道――

男が待ち伏せしていた。

「みさとちゃん。おじちゃんがお父さんじゃ嫌なのかい?」

みさとは無視して横を通り過ぎようとする。

男が手を伸ばす。

「――っ!」

「イテテテ! 離してくれ!」

男の手を、セントが握っていた。

それは、まるで挨拶のようなシェイクハンド。

男は車に飛び乗り、セントに向かってアクセルを踏む。

――ドン。

セントがボンネットを叩く。

車体が大きく跳ねた。

さらに正面を叩くと、

車は制御を失い、後方の電柱へ激突して停止した。

人だかりができ、やがて警察と救急車が到着する。

男は担架で運ばれていった。

警官が声を張り上げる。

「目撃者はいませんか?」

――誰も、何も見ていなかった。

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