第二十五章 四大元素の間
あきの
「お姉ちゃん、相談があるんだけど……」
扉を開けた瞬間、あきのは言葉を失った。
姉は――エンビ服を着たヤギ顔の男に抱きつき、頬ずりしている。
姫
「……ノックくらいしなさい」
目を閉じたまま、幸せそうに頬を寄せる。
「で、何の用?」
あきの
「草密邸の件なんだけど」
姫
「まだやってたの、あの件」
あきの
「課長が……君には難しすぎた。姫に任せて、別件をやってくれって」
姫
「アンタの次の仕事は?」
あきの
「この人を探すの。もののけの類かも」
写真を差し出す。
姫
「コイン。この人、どこ?」
宙を舞うコインが写真を覗き込み――
セント
「似た人物が二人いる」
さらりと住所を書き、あきのに渡す。
姫
「次はノックしてね」
あきの
「……何これ。なんで分かっちゃうの?」
姫
「私の癒やしの時間を邪魔しないでちょうだい」
翌日
姫
「また草密邸ね……めんどくさい」
セント
「霊体の処理は終わったよ」
姫
「問題は中ね。ここから先、異空間になってる」
外見はただのビルの螺旋階段。
だが――
セント
「中二階へ行く階段が無い。
しかも、逆回転の構造だ」
壁には四つの文字。
地・水・空・火。
セント
「四大元素の間……」
姫
「入口が“地”、正面が“水”ね」
セント
「入口に杖。正面に石板――エメラルド・タブレット」
杖を持ち上げる。
「……ヘルメスの杖か」
その瞬間、横に扉が現れ、霧の中から牛が現れた。
姫
「何……?」
手綱を求めるように近づく牛。
セントが握ると、牛は静かに歩き出す。
「地から、水へ――導いている」
石板を読むセント。
次の瞬間――
セントの身体が二つに分離した。
・水分だけのセント
・残りのセント(牛に乗る)
姫
「セント……どうなっちゃうの?」
霧の中からゼウスが現れ、雷を落とす。
水のセントは
水素と酸素の気体となり、火の柱へ。
牛に乗ったセントは――
灰となって崩れた。
姫
「三位一体……みたい」
気体は融合し、
燃え上がるフェニックスへと変化。
燃え尽きると水蒸気となり、
空の柱へ昇る。
再び雷。
光の中から――
完全なセントが現れた。
だが背中から黒い異物が抜け出そうとしている。
セントは剣でそれを斬り裂く。
黒は――
扉へと変わった。
姫
「そうやって、上へ行くのね」
姫も続く。
しかし扉は開かない。
セントは――
扉の下をくぐり、上へ吸い上げられた。
姫
「UFO!? 待って、私も!」
そこは
円形の空間。
まるでUFOのコクピット。
姫
「……何かいる」
セント
「いるな」
姫
「この前の道具(茅の輪)、出して」
・左にロウソク
・右に大きな銀杯
水を注ぐと――
銀の水面に何かが映る。
触れた瞬間、
円形の光が背中に吸い付いた。
セント
「セラフィム……天使の輪」
輪の先の、
イカのような存在に吸い寄せられる。
姫はそれを纏う。
セント
「ケルビム……」
姫はおでこを触り
「死者の額の三角布って、これのことね」
上へ行く道。
下へ落ちる道。
二人は――
落下を選んだ。
姫
「この先は……冥界ね」
鍾乳洞
姫
「出られなくなったかも……」
そこに――
草密家の御曹司。
御曹司
「助けに……来てくれたのですか」
姫
「私たちも出口を探してるの。
芥川龍之介の“蜘蛛の糸”みたいなのがあれば……」
御曹司
「でも天井に穴がない……」
セントの
天使の輪が壁を這い、
天井へ。
円形の雨が降り、
そこから――
七大天使が覗き込む。
セント
「……前にもあったな」
現れたのは
七色の螺旋階段。
三人は登る。
霧。
光。
そして――
草密家のリビング
すべて消えていた。
四大元素の間も。
御曹司
「ありがとうございます……
生きて帰れないかと」
姫
「あの世の入口と、繋がっていたのね」




