表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/25

第二十二章 魔法

あきの

「ヤギさんには――エンビ服が似合うと思うの」

「……は?」

あまりにも唐突な一言。

空気が一瞬、止まった。

「何を言い出すのよ、いきなり」

あきの

「直感よ。これはもう運命レベル」

「絶対似合う。世界がそう言ってる」

姫は目を細める。

――来た。

一度言い出したら絶対に引かないモード。

「……却下」

あきの

「却下を却下」

「意味わかんない理屈やめなさい」

あきの

「ヤギ+エンビ服=正義」

「これは数式で証明できる」

「できるわけないでしょ」

沈黙。

数秒のにらみ合い。

先に折れたのは――姫だった。

「……分かったわよ」

「明日から着せる」

あきの

「やった」

即答。

勝利の笑み。

あきの

「異世界帰還の英雄よりヤギ男を選ぶとは」

「お姉様、ほんとかわいいものに弱いよね」

「…………」

図星。

反論不能。

あきの

「エンビ服は絶対だからね」

次の日

「――というわけで、これが貴方のユニフォームよ」

差し出されたのは、

完璧に仕立てられた黒のエンビ服。

セント

「…………」

無言。

だが拒否もしない。

「それと――仕込み杖」

「中にはタングステン製の刀が入ってる」

「どうせ使わないって言ったんだけどね」

セントは静かに杖を受け取る。

ゆっくり――

刃を抜く。

その瞬間。

ボウッ――

刃に、紅蓮の炎がまとわりついた。

「……は?」

予想外。

設計外。

完全に仕様外。

「そんな機能、付けてないはずだけど」

セント

「魔法」

短い。

それだけ。

「いや説明になってないのよ」

だが目は離せない。

揺れる炎は、ただの火ではない。

神域の熱。

「タングステンは耐熱性あるから壊れないけど……」

「重くないの?」

セントは無言で振る。

ヒュン。

ヒュン。

ヒュン――。

空気が裂ける音。

「……嘘でしょ」

「それ、重金属よ?」

姫が持った時は、

持ち上げるだけで腕が震えた。

なのに――

「羽みたいに振ってる……」

「他にも魔法、使えるの?」

セントは答えず、

台所のリンゴを見る。

一瞬の静寂。

セント

「――風の牙」

次の瞬間。

ザクッ。

リンゴが、

まるで透明な獣に噛み千切られたように

歯型状に削り取られた。

遅れて、風が鳴る。

「……へえ」

感嘆。

だが同時に――

背筋に走る寒気。

「その炎の剣……」

「出しっぱなしにできるの?」

セントは、うなずく。

セント

「オレは神に近い」

静かな声。

誇張も虚勢もない。

事実だけを述べる響き。

セント

「MPが尽きたことは――一度もない」

沈黙。

「……自分で神って言うんだ」

セント

「ディオニュソスは」

「ゼウス亡き後、主神と呼ばれた存在だ」

炎が揺れる。

セント

「その神に最も近い僕なら――」

言葉は続かない。

だが、必要もない。

姫は理解した。

「……なるほど」

ゆっくり息を吐く。

「想定以上の戦力ってわけね」

国家規模。

戦争規模。

いや――

神話規模。

セントは何も言わない。

ただ静かに、うなずく。

その瞳の奥には、

炎より深く、

闇より静かな、

神に連なる者だけが持つ確信が宿っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ