第十七章 マネージャー
神崎誠
「アリーナツアー、成功しちゃったんで」
セント
「嫌な前置きですね」
神崎誠
「僕、教祖辞めます」
「で、君に譲ります」
セント
「話が三段跳びすぎません?」
「せめて助走をください」
神崎誠
「週末アイドル“モモ色”ならぬ」
「週末教祖ですよ」
セント
「ネーミングが一番危険なんですが」
神崎誠
「ライブ感が大事なんです」
セント
「そもそも」
「僕、貴方の教団に入信した記憶が一ミリも無いんですが」
神崎誠
「細かいこと気にするタイプ?」
セント
「人生で一番大事なところです」
神崎誠
「これからは僕、マネージャーとして裏方に回りますから」
セント
「だから話を聞いてください」
「僕の同意を何一つ踏んでないですよね?」
美月
「だめよ」
「彼のマネージャーは私」
神崎誠
「は?」
「お前、公務員だろ」
「副業禁止だろ、普通」
美月
「…………」
沈黙が、都合よく肯定を意味した。
神崎誠は腕を組み、勝ち誇った顔になる。
神崎誠
「ほらな」
「だからオレしかマネージャー出来る人間はいないんだよ」
セント
「この人、論破した気になってるだけなんですが」
「論点はそこじゃありません」
課長
「神崎誠は、ミナトを失ってから静かにしてると思っていたが」
美月
「静かどころか」
「前より活発です」
「というか」
一拍。
美月
「教団が、指数関数的に増殖してます」
課長
「……危険人物が作った教団が拡大の一途、と」
美月
「地方議員を当選させました」
「次は国政だって息巻いてます」
セント
「軽く言いますね」
美月
「ヤングチューブでは毎日百万人再生」
「比例なら、確実に国会に議員を送り込めると」
課長
「……完全にインフルエンサーだな」
美月
「教義よりアルゴリズムが強いです」
セント
「現代宗教の最終形態じゃないですか」
課長
「議員を送り込んで」
「総務省特務機関に圧力をかける気か」
美月
「……たぶん」
「“ついで”みたいなノリで」
課長
「一番厄介なタイプだ」
一拍置いて、課長は書類を閉じた。
課長
「姫がこう言っている」
「“美月さんはお兄さんの監視しかしていないのだから”」
「“セント君を返してくれ”と」
美月
「…………」
課長
「私は、それを了承した」
美月
「………………」
長い沈黙。
美月
「……判りました」
淡々とした声。
しかし次の瞬間。
美月
「……あの人、絶対に余計なことします」
課長
「だろうな」
二人は、同時にため息をついた。
姫はセントに向かって言う。
姫
「私もアリーナ行った」
「感動した」
セント
「それはどうも」
姫
「だから、あんなポッと出の宗教は辞めて」
「国の命運を決める陰陽師になってみないか?」
セント
「今、僕」
「月収800万円の生活してるんですよ」
姫
「そんなの」
「スリルも何もないだろ」
セント
「スリルがありすぎて」
「ハルト達が逃げた穴埋めなんですが」
姫
「……」
姫
「こんな美少女と仕事できるぞ?」
セント
「ヤングチューブでコラボ頼まれて」
「美少女だらけです」
姫は、目に涙を溜めた。
姫
「……素直に助けてくださいと」
一拍。
姫
「助けてくれ」
「私を、支えてくれ」
セント
「……判りました」




