第十六章 神のみわざ
神崎誠は、なぜか悟りきった顔で腕を組んでいた。
背後には「入信するとだいたい幸せ」って書かれた横断幕。
神崎誠
「僕の宗教団体はね、まだ国の認可が降りてなくて資金繰りが厳しいんだ」
セント
「初手から不安しかない説明ですね」
神崎誠
「認可が取れれば固定資産税も免除」
「つまりこの世の地獄から解脱できる」
セント
「いや現世利益すぎません?」
神崎誠
「ワンステージ一万円でどうだ」
セント
「安っ」
神崎誠
「……三万出そう」
セント
「魂の値段がスーパーの特売みたいに上下しますね」
セント
「特務機関ではタダでこき使われ」
美月
「タダでこき使って悪かったわね」
セント
「そこは反省する流れですよ」
美月
「その代わり特務機関一の美貌を持つ私が一緒に寝てあげたでしょ」
神崎誠
「聞かなかったことにできる?」
セント
「できません」
神崎誠
「ていうかお前なんでここにいる」
美月
「お兄ちゃんが詐欺で捕まらないか見張るため」
神崎誠
「言い方」
神崎誠はセントを舐め回すように見る。
神崎誠
「オレにはわかる」
「彼は磨けば光る」
セント
「その前に汚れすぎてません?」
神崎誠
「特務機関にはもったいない」
「宗教向きの顔をしている」
セント
「そんな顔ある?」
神崎誠
「ではステージへどうぞ」
ステージに立った瞬間、客席がざわつく。
観客
「不滅のミナト様はどうしたの?」
セント
「今日シフト休みです」
観客
「えっ」
セント
「――魅了」
一瞬で空気が変わる。
観客の目がハートになる。
なぜか前列の老人が若返った気がする。
セント
「一人ずつ、ステージに上がってください」
列ができる。
完全にデパ地下の試食コーナー並み。
握手、握手、握手。
そのたびに手の中に金貨が増えていく。
セント
「……これ現金ですか?」
客
「信仰です!」
セント
「余計に怖い」
セントは相手を見つめる。
セント
「あなた、〇〇市在住」
「犬に嫌われてますね」
客
「当たってる……!」
セント
「娘さん、SNSの男と不倫してます」
「今すぐフォロー外させてください」
客
「ありがたきお告げ……!」
セント
「この教団にご寄付を」
「なお私が渡した金貨の方が価値があります」
客
「理屈は分からないけど納得しました!」
次の人。
神崎誠(小声)
「人生相談始まってる」
「完全にサイババ」
「いや、サイババに失礼か?」
セント
「最後に大事なことを言います」
両手を広げる。
セント
「不滅のミナトと同じく――」
「私も不滅です」
\不滅ショー!/
\なぜか紙吹雪!/
\誰が用意した!?/
最後にもう一度「魅了」。
セント
「では皆さん、また来週」
楽屋。
神崎誠
「どこで覚えたんですか、その技術」
セント
「特務機関の福利厚生です」
神崎誠
「ワンステージ百万円出しましょう」
「契約書です」
美月
「待ちなさい」
契約書を見る。
美月
「この小さい文字で『魂』って書いてある」
神崎誠
「気のせいです」
会場
「セント! セント! セント!」
セント
「アイドルになった覚えはないんですが」
翌週
神崎誠
「アリーナツアーを考えています」
美月
「一週間で?」
神崎誠
「信仰はスピード勝負」
神崎誠
「信者さん曰く、握手会形式が最高とのこと」
セント
「宗教って何でしたっけ?」
神崎誠
「アリーナを埋めてみせます」
美月
「何で自信満々なの」
神崎誠
「奇跡が量産できるので」
セント
「量産しちゃダメなやつ!」
神崎誠
「一般人も集まる土日は空けてくださいね」
セント
「……僕、知らないうちに
週末だけ神になるバイトしてません?」
美月
「時給換算するともう戻れないわね」
セント
「ですよね」




