第十五章 コックリさん
ヒマリは、ミナトの遺骨を大事そうに抱えていた。
「……私たちが束になっても歯が立たなかったミナトを」
姫は腕を組み、難しい顔でうなずく。
「ええ。正直、特務機関でも無理案件だと思ってたわ」
その空気を、ぶち壊すように男が一歩前へ出る。
なぜかドヤ顔で、胸を張る。
「つまり――オレの活躍ってことだな?」
姫とヒマリが同時に無言になる。
「少しは姫にセクシャルアピールできたかな?」
美月は即座にセントを見る。
「……あの子に勝てれば、ね」
男は軽くムッとして、セントを指差した。
「おい。ちょっと武道に付き合え」
次の瞬間、男は見事な投げを――
かけたつもりだった。
セントはピクリとも動かない。
逆に、男は襟と帯を掴まれ、そのまま宙ぶらりん。
「……あれ?」
「え、ちょ、待っ」
「ゴメン! ゴメンゴメンゴメン!!
謝る! 心から謝る!! 降ろして!!」
美月はため息をついて、セントに声をかける。
「ねえ、まだ報酬もらってないのよね?」
男がまだ空中でバタバタしている横で、
「課長に私から交渉しようか?」
ニヤッと笑って、さらに続ける。
「それとも――
特務機関一の美貌を誇る、この身体で払う?」
男は即ツッコミを入れた。
「美人なのは否定しないが、
そもそも特務機関に女はお前しかいないだろ!!」
美月はケラケラ笑う。
「そこ言う? そこ言っちゃう?」
朝
「朝だぞー起きろー」
コインの声で、セントは目を開けた。
……重い。
横を見ると、美月がTシャツ短パン姿でがっちり抱きついて寝ている。
(……密着率高くない?)
美月は寝言みたいに呟いた。
「……久しぶりね、男の子の匂い……」
(起きてないよな? 起きてないよな?)
美月は満足そうな顔でセントを解放し、ストレッチを始める。
(このまま、私が面倒みちゃおうかしら)
そう考えながらランニングへ。
「楽しそうだな」
いきなり背後から声。
「うわっ!」
振り向くと、神崎誠が普通に立っていた。
「……どうやって私の居場所を知ったのよ」
「それはこっちの台詞だ」
神崎は肩をすくめる。
「魂の定着なんて証明できないだろ?
つまりオレは無実だ」
姫が口を挟む。
「泰山府君祭……それとも――」
少し考えて、適当に言う。
「コックリさん?」
「……なぜ、それを」
神崎の顔が引きつる。
姫の肩がビクッと跳ねた。
「……当たった」
「お前、今の絶対ノリで言っただろ」
「そ、そんなわけないじゃない!」
声が裏返る。
神崎は観念したように話し出す。
「あいつの指とオレの指で、コックリさんをやっただけだ」
「“その身体に乗り移ってください”ってな」
美月が叫ぶ。
「ちょっと待って!
それガチでやってたら私が首だから!!」
セントがのんびり合流する。
「ラスボス登場かと思って来たんですが……
なんですかこれ。放課後の理科室ですか?」
姫は頭を抱えた。
「禁術だと思ったら、まさかのコックリさん……
正直ドン引きだわ」
神崎はキメ顔で言う。
「コックリを笑う者は、コックリさんに泣く」
「お兄ちゃん、それどこの誰の格言?」
セントは一歩前に出る。
「神崎さん。
本当の“不死”っていうのはですね――」
そう言って、ためらいなくカリバーンJrで自分の腹をズバッ。
一瞬、全員が固まる。
――が、刀を抜くと、傷は即座に元通り。
ヒマリ
「えっ」
姫
「えっ」
美月
「えっ」
神崎
「……えっ」
神崎は、目を輝かせた。
「君だ!!
君こそ私の求めていた人材だ!!」
セント
「いや勧誘雑じゃないです?」
「共に行こう! 永遠の光を!!」
「いや宗教名それなんです?」
場の空気は、完全にゆるいのにヤバい方向へ流れていった。




