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第十三章 元特務員・神崎誠

ケンタ

「聞いたぞお前。国家公務員、落ちたんだってな」

セント

「落ちたんじゃない。なれなかっただけだ」

ケンタ

「同じだろ」

「で? 給料ゼロ? 無職? 無収入?」

セント

「何不自由もない」

ケンタ

「はい出た。無敵の一言」

「だってお前、コインがあるもんな」

「でもさぁ、ゲーセンのコインを五百円玉に変えるのは、さすがにアウトだろ」

セント

「最近はやってない」

ケンタ

「じゃあ今はどうやって食ってんだよ」

セント

「エラーコイン」

ケンタ

「……なにそれ」

セント

「現物の五十円玉が化ける」

「穴なし五十円が、数十万円になる」

ケンタは数秒固まり、次の瞬間、肩を組んできた。

ケンタ

「法の抜け穴の化身かよ」

「いいから黙っててやる。今日は全部奢れ」

そこへ姫が、仁王立ちで割り込む。

「国家公務員法って、知ってる?」

一瞬で場の温度が下がる。

「犯罪歴が増えるたび、私がセントを推薦できなくなるのよ?」

セント

「魅了」

姫は一瞬、頬を赤らめてから胸を張る。

「……私が一生面倒みるから、心配しなくていいのよ」

ケンタ

「完全にホストに貢ぐ女の台詞だな」

ナギ

「ちょっと。姫ちゃんをからかって遊ばないの」

「今日は――」

ミナトの話を切り出そうとした、その瞬間。

セント

「別荘地だ」

空気が変わる。

セント

「新興宗教の拠点に使われている」

「“不死のみわざ”と称して信者を集めてる」

ケンタ

「……冗談だろ?」

セント

「教祖の教えを忠実に守れば、不死になれるらしい」

「ミナトのように、な」

沈黙。

その隙を縫うように、壁の裏から男たちが現れた。

「いつもすまんな」

「だからよ……エラーコイン作るのは、ほどほどにしとけ」

肩を叩き、男たちは足早に去っていく。

姫は小さく舌打ちし、写真を取り出した。

「私たちは、特務員が見失った女性の身辺調査に行くわ」

コイン

「この女に似た人物か」

姫は一瞬だけ目を輝かせる。

「……可愛い」

セント

「似た娘が三人いる」

無機質に、三件の名前と住所を並べる。

すると再び壁の裏から、今度は女性の特務員が現れ、メモを取りながら呟いた。

女性特務員

「エラーコインは重罪よ」

「……今回は黙っててあげる」

ウインクだけ残し、姿を消す。

セント

「あの人が、見失ったのか」

姫は壁の向こうに歩み寄り、声を荒げる。

「私たちの案件を横取りしないでください!」

「私たちはあなたの護衛です!」

「あの人たちが暴れた時、私たちがいないと――」

一拍。

「ゴホン……後の男から、奪ってきたわ」

新しい写真が差し出される。

「元特務員、神崎誠」

セント

「……そして、ミナトに魂を埋め込んだ男だ」

その瞬間、壁の裏から男たちが飛び出す。

「そいつは……どこにいる!」

セント

「ミナトと――同じ場所だ」

笑い声は、もうどこにもなかった。


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