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第十一章 廃病院

「上司はお亡くなりになりました」

「こんな美少女を物にできなくて、さぞ無念でしょうね」

ナギ

「……姫ちゃん、なんでセントの膝の上に座ってるの?」

姫はその指摘を軽く聞き流し、話を進めた。

「本日の目的地は、町外れにある旧総合病院よ」

ヒマリ

「“旧”なんですか? もう総合病院じゃないんですか?」

「半年前に潰れてるわ」

ヒマリ

「そんなわけないです」

「私、先月ミナトのお見舞いに行きました」

「愛想の悪い看護師さんもいましたし、他の患者さんも……」

「――それが問題なのです」

「電気も通っていない病院に、人が“いる”と思って?」

その言葉を聞いた瞬間、ナギは耳を塞いでしゃがみ込み、ガクガクと震え始めた。

ハルトが心配して肩を叩く。

ナギ

「ギャーーーッ!!」

「ちょ、脅かさないでよ!」

ハルト

「ミナトを救出しないとな」

ナギは話題を変えるようにセントを見る。

「そういえば、公務員宿舎に入ったんだって?」

「みさとが寂しがってたわよ!」

セントは首を振る。

「いや、姫の家に住んでる」

ナギ

「えっ?」

「お泊まり会みたいなものよ」

「昨日はいとこと妹と私とセントで、遅くまでネットゲームしてたわ」

ナギ

「……怪しい」

セント

「本当だぞ」

「風呂も寝るのも一緒だし、身体も洗ってくれるし至れり尽くせりだ」

ケンタが無言で姫を見る。

ヒマリ

「だから、あなたは私だけを見てなさい」

――グキッ。

ケンタの首から嫌な音がした。

ナギ

「まあ私は毎日ハルトと――」

ハルトは慌ててナギの口を塞ぐ。

「マ、マアマア! 異世界では夫婦だっただけだから!」

ヒマリ

「何必死に言い訳してんのよ。誰も聞いてないから」

そんなやり取りをしているうちに、車は廃病院の前で停車した。

姫は皆を連れ、建物裏の貯水タンクへ向かう。

ケンタ

「なんでこんな所に?」

「保険よ」

姫はタンクの中へ、ロザリオ、木製の蓋、白い粉を次々と放り込んでいく。

次の瞬間。

景色が歪み、院内が“再現”された。

待合室には椅子に腰かけた外来患者。

受付には看護師が立っている。

ヒマリ

「404号室、ミナト君の面会に来ました」

看護師は無言で階段を指差した。

ヒマリは小さく会釈し、歩き出す。

その背後で――

姫は看護師に白い粉を振りかけた。

看護師

「ギャアアアアッ!!」

顔がみるみる老い、皮膚がひび割れていく。

姫は蛇のようにうねるクナイを投げ放った。

正八角形。

胸元に正確に突き立つ。

「ボォッ」

看護師は炎に包まれ、崩れ落ちた。

同時に、患者たちが呻き声を上げて襲いかかる。

ナギは泣きながら炎の玉を投げまくる。

「来ないで! あっち行ってって!」

セントはカリバーンJr.を振るい、亡者を斬り裂く。

「ギャアアッ!」

亡者は燃え上がる。

ハルトは魔法の矢を連射し、

ケンタはヒマリを庇うように、雷を纏った拳で亡者を叩き潰す。

ヒマリは長い詠唱を終え、静かに告げた。

「元ある世界に還れ――聖なるウェーブ」

優しい光の波が、ヒマリを中心に広がる。

波紋が消えたあと、そこには静寂だけが残った。

亡者はすべて消え失せていた。

ケンタはヒマリの肩を抱く。

「よくやった、ヒマリ」

――ただ一人、

目を閉じたままファイヤーボールを投げ続けるナギを除いて。

ナギ

「終わったなら終わったって言ってよ!」

「私だけ恥ずかしいじゃない!」

「……この先から、強い邪悪を感じます」

ヒマリ

「ミナトのおばさんと……おじさん……」

ケンタ

「そんなわけないだろ」

ナギ

「来ないで……」

ハルトは弓を下ろす。

「知り合い相手はキツいな……」

セントは迷いなくカリバーンJr.を振るった。

亡者の首が落ち、炎に包まれる。

「オレは知り合いじゃない。残念だったな」

ヒマリ

「元ある世界に還れ――聖なるウェーブ」

光がフロア全体を満たし、亡者は消えた。

「いたたた……ひどいな」

扉の向こうから、ミナトらしき“もの”が這い出してくる。

姫は消火装置に煙を吸わせ、起動させた。

スプリンクラーが回転し、聖水が降り注ぐ。

水はミナトの身体を焼く。

「だから痛いって!」

窓ガラスを突き破り、獣のように夜へ消えていった。

ヒマリはその場に崩れ落ち、泣いた。

「……なんで、成仏してくれないのよ……」



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