『成果発表と反発』
疑似サバイバル週間が終わった翌週。
町役場の会議室には、住民と職員、そして記者が入り乱れていた。
「町長代行、高橋さん、今回の成果は?」
カメラの前で聞かれ、俺は軽く手を挙げた。
「はい、町の皆さんが、自分の町を使って楽しみながら交流できました。
成果は――えっと、そこそこです」
言いながら、ちょっと顔が赤くなる。
この「そこそこ」が、無人島感覚では最上級の褒め言葉だ。
拍手が起きる――半分は本気、半分は温かい笑い。
しかし、隅の方で眉をひそめる人物がいた。
農協支部長の石田さんだ。
「町長代行、遊びごとに予算を使うつもりですか?」
これが政治だ。
無人島では、誰も予算の話なんてしない。
「いや、ほら、地元の人たちが主体的に動いたんですよ」
「それが一番の問題です」
なるほど。俺の言い方が悪かったらしい。
この町では、「自分で動く=予算の無駄遣い」なのだ。
次に、カメラが商店街のおばちゃんに向く。
「面白かったわよ! 町が元気になった!」
周囲が笑顔で頷く。
その反応と石田さんの顔を交互に見ると、
まるで町全体が二分されているように見えた。
住民説明会が始まった。
「今回の成果として、空き家の活用率は――」
数字は確かに良かった。
だが、数字だけでは石田さんは納得しない。
「統計じゃなく、実感が大事なんです」
そう言われると、俺の中の無人島ルール感覚が揺れる。
無人島では数字より生存率。
町では、数字より顔色。
会場から手が上がる。
「イベントばかりで、通常業務はどうなるんだ!」
顔見知りのおじさんだ。
正直、嬉しかった。
無人島では、「文句を言う人=参加者」だからだ。
「通常業務も止めていません。むしろ、新しい交流で仕事がやりやすくなりました」
言った瞬間、会場がざわつく。
「本当か?」
「ええ、本当です」
少し笑いが起きた。
しかし、石田さんは黙らない。
「あなた、町長代行の立場をわきまえてますか?」
……ついに政治家口調だ。
しかも怒っている。
「わ、わかっています!」
必死の弁解だ。
無人島なら、ここで誰かが「まあいいじゃん」と言って場が収まる。
だが町では、石田さんがその場で議論を仕切る。
会議が終わり、外に出ると、カメラが待っていた。
「町長代行、次の町おこしは?」
俺は少し間を置く。
「……まだ考え中です」
正直すぎて笑われる。
しかし、町の一部は目を輝かせていた。
「また、何かやるんだろ?」
おばちゃんの言葉に、俺はうなずく。
反発もある。
批判もある。
だが、町が動き始めたことは確かだ。
夜、役場の机で一人考える。
無人島でのサバイバルは、敵と味方がわかりやすい。
勝者と敗者が明確だ。
町では、敵も味方も入り乱れる。
正解もない。
だが、これはこれで面白い。
俺はペンを取り、次の計画を書き始める。
「町VS町長」
それは、政治的コメディの幕開けでもあった。




