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『光の下で燃える』

 記者会見室。

 白い壁、強い照明。

 逃げ場のない場所。


「本日より、第三者調査委員会を設置します」


 県の担当者が、淡々と告げた。


「委員は、外部の弁護士、公認会計士、大学教授――」


 高橋は、椅子に座ったまま、瞬きもしなかった。

 これは裁判じゃない。

 もっと残酷なものだ。


 調査は、徹底的だった。


 メール。

 チャット。

 議事録。

 未送信の下書き。


「この文面、どういう意図ですか」


「なぜ、この業者に連絡を?」


「“うまくやる”とは、何を意味しますか」


 言葉が、凶器になる。


 石田は、別室で事情聴取を受けていた。


 町職員たちも、一人ずつ呼ばれる。

 誰もが、疑われる。


 数日後。

 中間報告。


「手続き上の不備、多数」

「説明不足、管理責任」

「悪意の立証には至らず」


 だが、見出しは違った。


「不正認定は否定も、ずさん運営」


 炎は、また強くなる。


 最終報告の日。


 会見室は満席。

 カメラの列。


 委員長が、資料をめくる。


「結論から申し上げます」


 空気が張りつめる。


「違法な癒着、金銭の授受は確認されませんでした」


 一瞬、静寂。


 だが――


「しかし」


 高橋は、分かっていた。


「町長代行・高橋氏には、

 統括責任者として重大な監督責任がある」


 フラッシュ。


「安全対策費削減案の存在」

「広報先行の判断」

「リスク説明の不足」


 言葉が、矢のように飛ぶ。


「事実上の、失政です」


 高橋は、逃げなかった。


 マイクを握る。


「ご指摘の通りです」


 ざわめき。


「私は、

 町を“動かそう”としました」


「止まったまま、

 静かに消えていく町を、

 見過ごせなかった」


 記者が叫ぶ。


「後悔は?」


 高橋は、少し考える。


「……あります」


「でも」


 顔を上げる。


「やらなかった後悔より、

 やった責任を選びました」


 会場が、凍る。


 翌日の紙面。


「町長代行、事実上の敗北」

「町おこし、幕」


 町議会。

 不信任案、可決。


 高橋は、町長代行を解かれた。


 机を片付ける夜。

 段ボール一つ。


 商店街のおばちゃんが、入口に立っている。


「……終わっちゃったね」


 高橋は、首を振る。


「いいえ」


 段ボールを抱える。


「火は、

 誰かの役職じゃなかった」


 外に出ると、

 夜風が冷たい。


 スマホが鳴る。


 知らない番号。


「……高橋さんですか」


 落ち着いた声。


「県です。

 実は――」


 高橋は、空を見上げた。


 星は、まだある。


 公開処刑は、終わった。

 だが、物語は、まだ死んでいない。

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