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北欧おやつ時間〜夢のケーキと午後三時のフィーカ〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・ククサでフィーカを

 それは突然だった。


「明日香ちゃん、これ、プレゼント」

「え、店長なんですか? これ」


 明日香は店長からプレゼントを受け取ったが、意味がわからない。今日はなんでもない日だ。


 カフェは営業している。明日香は手伝いに来ただけで、特にいつもと比べて忙しいわけでもなく、常連さんの誕生日でもない。かといって店長や明日香の誕生日でもない。明日香の仕事も相変わらずで、プレゼントをもらう理由はない。


「まあ、帰って開けてみてよ」

「え、ええ」


 首を傾げつつ、店長からのプレゼントしてを大事に抱える。手のひらよりは大きい箱だが、一体何が入っているのだろうか。嬉しいが、戸惑いの方が勝手しまうのが正直なところ。


 シェアハウスに帰ると、さっそく箱を開けてみた。


「え? 何これ。マグカップ? いや、違う。ククサだ!」


 開けると驚いた。中にはククサがあった。


 これはフィンランド北部のマグカップ。白樺でできている。コロンとした丸いフォルムと、持ち手が特徴的だ。穴が二つあり、手触りも良いと日本でも人気だ。


 カフェでも使っていたが、店長は手入れが面倒だと言い、いつのまにか使わなくてなっていた。明日香は密かにククサを復活させようと企んではいたが。


「でもなんでククサ?」


 木の手触りは最高だが、どうも店にあるものと様子が違う気がする。ほんの少し持ち手のところとかが歪で。


「ま、これは手作り……? まさか店長が作った……?」


 戸惑っていると、昔、店長からこんな話を聞いたことを思い出す。


 確かククサは贈られた人が幸せになると言い伝えがあると言ってた。北欧では大切な人へ贈り物の定番らしい。


「大好きな人ができたら、ククサを贈ろうと思っているんだ」


 当時の店長の声、笑顔を思い出した。明日香の顔が固まる。ククサを持つ指先、コーヒーも何も入れていないのに、熱いのはなぜ?


「まさか、いや、まさか……」


 心臓の音がうるさく響くが、ネットで調べてもククサはそういった言い伝えがあるらしい。ついでにククサの手入れ方法も調べると、初めて使う時は塩水で煮たり、蜜蝋も塗る。確かに面倒くさい。


「ってククサの手入れ方法、けっこう色々出てくるな。どれが本当?」


 わからない。これはもう本人に聞いてみるのが一番だろう。


 午後三時をとっくに過ぎ、もう五時だけれど、このククサでフィーカをしたいって口実でいい?


「いいよね?」


 誰に確認する必要もない。明日香はククサを箱に戻し、大事に抱えるとカフェに舞い戻る。


「店長! 一緒にフィーカをしましょう。ちょっと聞きたいこともあるんです」


 店長をフィーカに誘うの、今日が初めてかもしれない。

ご覧いただきありがとうございました。後日談の番外編になります。ちょっと甘い感じです。リワードやブックマークなども大変嬉しく思います。ありがとうございます。



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