番外編短編・ルッセカッセ
わたしは猫のムンキっていうの。真っ白なふわふわな猫。自分でいうのもなんだけど、可愛い子よ。
実際、わたしは北欧カフェ・午後三時のフィーカの看板猫だから。お客様にも可愛がられてるの。このカフェ近くの住宅街で野良猫やっていたけれど、店長の雨川麦に拾われたの。雨や台風の日は店長の家で暮らしてる。その時だけ飼い猫ね。まあ、地域猫と看板猫と飼い猫の三役をこなしながら、のんびり生活中。
今日もカフェの窓際のソファに行くわよ。ここは窓からお日様が入って気持ちいいわ。ふふふ、景色もいいの。白を基調としたカフェも一望できるし、壁の北欧のオーロラやサウナの絵画も毎日みても飽きない。それに今はクリスマス時期なので、リースも飾られてるわ。これもキラキラしていて気になっちゃう。
「ムンちゃん、何をごろごろしているの?」
そこに店長の麦がやってきた。開店前だけど、もう準備が終わって暇になったみたい。わたしの横に座って一休みしてる。
元々、フィンランドと日本人の両親をもつ麦。いわゆるハーフってやつで、イケメン。でも、色々悪く言われたり、本人なりに苦労はあったみたいね。わたしにもよく愚痴っていたけれど、今日の麦は機嫌がいいみたい。目を細めてわたしの背中を撫でてるわ。
「もうすぐクリスマスじゃん? フィンランドのルッセカッセっていうパン焼いたけど、どう思う?」
って言われても。麦はルッセカッセは猫の尻尾のようなくるっとした形の菓子パンで、サフランも使ってると説明した。元々聖ルチア祭というフィンランドの伝統的なクリスマスイベントで食べるパンらしい。暗闇の中の光を象徴するお祭りなんだそうだが、日本生まれのわたしはさっぱりわからない文化ね。
「ミャオ」
わたしは小さく鳴けだけだが、今日は元バイトの岡辺明日香がカフェに来るから、楽しみなんだそう。
そうね。店長は明日香のこと大好きだってただ漏れだからね。明日香がここでバイトしている時から知ってるけど。
「ルッセカッセ、明日香ちゃんが食べたら喜ぶと思う?」
「ミャオ……」
知らない。本人に聞きなさいよ。まったく焦ったいわね。
とはいえ、上機嫌でちょっとソワソワしておる麦を見るのも楽しいもんよ。
「聖ルチア祭のこととか、フィンランド豆知識話したら明日香ちゃん喜ぶと思う?」
本当に知らないわよ。本人に聞きなさいって感じ。だからいつまで経っても恋人同士になれないのよ。
そしてカフェが開店後、すぐに明日香がやってきたわ。いわゆる繊細さんなアラサー女子の明日香だったが、今はカウンセラーの仕事をしながら、今はもう元気みたい。
「ムンちゃん!」
さっそくわたしの背中を撫でにきたわ。まあ、少し貸してやってもいいわ。明日香の手は小さいし、柔らかいから好きなのよね。正直、麦よりも。
あら?
麦は明日香をわたしに取られて、一気に不機嫌になってるわ。咳払いして、微妙な表情。
面白い。まさか猫に嫉妬?
「ムンちゃん、大好き!」
明日香は相変わらずわたしを撫でてる。笑顔だ。これはわたしもちょっと困るわ。せっかく、ルッセカッセっていう北欧のパンもあるみたいだし、今日は麦の方を向いて欲しいわ。
ご覧いただきありがとうございます。
本作はクリスチャン新聞福音版に連載された北欧のテーブルという連載コラムを参考に書きました。北欧のお菓子やパンがいっぱい紹介されたコラムで、本当に大好きな連載コラムでした(現在は連載終了しています。書籍化等されていないので、出版社のいのちのことば社でお取り寄せでしか読めない状態です)。
ちなみに明日香と同じように私もスキマバイト経由で仕事が決まり働いています。ちょっと忙しい感じですが、小説もまた書きたいと思います。今後もよろしくお願いします。




