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北欧おやつ時間〜夢のケーキと午後三時のフィーカ〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・焚き火コーヒー

 ここは北欧風のカフェ・午後三時のフィーカの厨房だった。


 もう数分で閉店時間だ。アルバイト店員の明日香も調理台を吹きつつ、片付けをしていたが、その表情は暗い。


 明日香は転職活動中だった。転職サイトに登録し、手当たり次第に送っていた。何とか面接まで行ける企業があり、先週、スーツを着て面接を受けていたが、結果はお祈りメールだった。転職サイトのキャリアカウンセラーにより明日香の市場価値も丁寧に指摘され、とりあえず目についた企業は受ける作戦になったが、やはり上手くいかない。キャリアカウンセラーもあんまりやる気が無いのが伝わってくる。


 ここでのバイトは楽しかったが、フルタイムでもない。所詮バイトだ。正社員職を見つける必要性もあったが、あまりにも上手くいかず、ついついため息が溢れてしまう。


「岡辺さん。もう定時だよ。大丈夫?」


 そんな時、ここのカフェ店長・雨川麦に話しかけられた。店長はフィンランド人と日本人のハーフだ。堀が深めで鼻も高い。俗っぽい言葉でいえば「イケメン店長」だ。第一印象はかなりとっつき難かったが、今は笑顔が優しく、人懐っこい人という印象に変わってきた。


 こんな時、店長の笑顔を見たら、明日香はホッとするものがある。思わず店長にお礼も言ってしまったが。


「そうだ、岡辺さん。北欧式の焚き火コーヒー飲んでみない?」

「え、焚き火? ここの庭では無理では?」


 カフェの庭は猫の額ほどだ。焚き火は無理そうだったが、そのコーヒーは再現してくれるとう。


 まずはヤカンでお湯を沸かし、そこに挽いたコーヒー粉を入れていた。


「えー?」


 その大胆な方法に驚き、明日香は変な声が出た。ハンドドリップのコーヒーと比べると、かなり大胆。野生味すらある。


 店長は明日香の驚きなど無視し、ヤカンの火を止めると、数分放置。そこに水を入れ、粉を沈めると完成なのだというが。


「本当は焚き火で作るから、もっとスモーキーというか、火の熱を感じるというか、野生味あるコーヒーなんだ」


 店長は苦笑しつつもカップにコーヒーを注ぎ、明日香に渡す。


「あ、美味しい」


 普通に美味しいコーヒーだった。フィルターなどを使わなくてもコーヒーが出来るのが驚きだ。それに焚き火でコーヒーを飲んでいる所を想像するだけで、美味しく感じるから不思議だ。確かに普通のコーヒーより粉っぽさは感じたが、焚き火で飲んだら、これはこれでワイルドでアリだ。


「本当は焚き火で飲むのが一番だけどねー」

「でも、美味しいです。こんな飲み方があったとは」

「あと、使い終えたコーヒー粉は、ちゃんとリサイクルするんだ。肥料にしたり、虫よけにもなるから」


 さすが環境への意識が高い北欧だ。明日香は使い終えたコーヒー粉の活用など全く意識した事なかった。


「大丈夫だって。使用済みのコーヒー粉だって活用できるんだ。岡辺さんの経験も全部生きるし、無駄じゃない」


 店長は励ましてくれているらしい。仕事中も暗い香していた事に気づき、明日香ははっと顔を上げた。


「あ、ありがとうございます、店長」


 明日香は再びお礼を口にしていた。

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