【和志倭人伝・予告編】第35.99話 第3章:「倭国争乱」序曲
次章「第3章 倭國争乱」のワンカットを集めてみました。
こんな内容で進めていこうと思っています。
乞うご期待ください。
※この話は第3章『倭國争乱』の予告編です。
※本編再開時(1/5)に短編版に移行いたしました。
※
台与は、社殿の縁から夜空を見上げた。
そこには黒雲をなびかせた三日月が浮かんでいた。
「お持ちいたしました……」
その声に振り返ると、天叢雲剣を捧げて跪く金玄基の姿があった。
台与は、その剣にそっと手を伸ばした。
そして、ゆっくり引き抜きぬくと、剣先を月光にかざした。
時折跳ね返る月明かりが、台与の目を鋭く刺した。
台与は、もう一度、祈るようにして三日月を見つめた。
そして、呟いた。
「願わくば……我に七難八苦を与え給え……」
その声は夜の風に溶け、月の雲をかすかに揺らした。
※
「何のことはございませぬ。
大巫女は皆、貧しき者の生まれにてございまする」
そう言うと、金玄基は深々と頭を下げた。
木の彦尊は飛び上がるようにして立ち上がると、大きく叫んだ。
「そうであろう! やはり、そうであろう!……詳しく聞かせよ!」
「ははっ……」
金玄基は、にやりと笑った顔をゆっくりと持ち上げた。
※
クニトラは、眼前に居並ぶ諸国の王を無言で眺めた。
木の彦尊は満面の笑みを浮かべながら大声を張り上げた。
「先例に倣い、クニトラ王を我らが『天王』としてお迎え奉る!」
砂の彦尊はさっと両手を広げ、叫んだ。
「万歳!」
各地の王たちも一斉に両手を広げ、叫んだ。
「万歳、万歳、万歳!」
※
アヤメは金玄基の胸に顔を埋めながら、小さく呟いた。
「うちは……ひどか人と一緒になったもんたい……」
※
ウヅは駆け寄って跪くと、香取の大巫女を見上げて叫んだ。
「大巫女様……ご無事でございましたか!」
「うむ。ウヅも無事で何よりじゃ……」
香取の大巫女は大刀を下ろしながら、ゆっくりとウヅに歩み寄ると
片膝をついて、ウヅの頬に手を当てた。
「おや、まあ……お髭もこんなに伸びて……」
ウヅは込み上げる涙を堪えながら、にっこりと微笑んでみせた。
※
タケルは居並ぶ兵たちを前にして叫んだ。
「神は我らを試みたもう! ならば行こう、神々の座へ!」
※
明の彦尊は、自分を見上げる従者たちを横目で見下ろすと、にやりと笑った。
「案ずるな、神が言ったのだ。『私に従え』とな……!」
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備の彦尊はにやりと笑うと、従者たちに命じた。
「奴らを……追撃せよ!」
※
「話が違うではないか?!」
そう叫ぶと、登の彦尊は矢をつがえ、立ちどころに放った。
「これでも喰らえっ!」
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ナギサヒコは、その枕元で阿蘇の大巫女を見つめながら、囁いた。
「……今はもう、姉様とお呼びしてよろしいでしょうか?」
※
その中に、一風変わった渡来人の姿があった。
台与は掖邪狗に尋ねた。
「あの方は……?」
「言葉が通じぬのですが、ナカツヒコがどうしても……というので連れ帰った者です」
その渡来人はゆっくりとこちらを振り返ると、自分の胸に手を当てた。
「レギーナ・サケルドス・トヨ。
ルキウス・マリウス・ファルティウス、ローマより……」
※
伊声耆は辺りを見回しながら叫んだ。
「あの者はどこだ?!」
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阿蘇の大巫女は、両手ですくった湯をパシャッと顔に当てると、大きく息を吐いた。
「はあ〜……若返るようじゃ……」
「レギーナ・サケルドス・マクシマ……これがテルマエ……に、ゴザリマスル」
ルキウスは得意げに両の手を頭の裏に回した。
※
伊勢の大巫女は目を細めて伊声耆をじっと見つめた。
「ねぇ……これからは、私と一緒に牡蠣を捕って暮らさない?」
※
その時ーー
都市牛利の目が鋭く光った。
「ーー行かせぬ!」
※
続けて、久米も叫んだ。
「こんなことになったのも――台与様のせいじゃないか?!」
※
難升米は、その背中をじっと見つめながら呟いた。
「ああ……ヤマトは……どうなってしまうんだ……?」
※
「大巫女様あああああ……!」
山々に人々の泣き叫ぶ声がこだました。
唸りを上げる風だけが、その声に答えるように吹いていた。
※
お読みくださりありがとうございました。
驚かせてしまったらごめんなさい。
本話では、プロットの時系列をぐちゃぐちゃに入れ替えております。
一応、歴史的な『結果』には大筋でコミットする方向です!
第3章は新年1/5(月)20時頃の開幕を予定です。
どうぞ、これからもよろしくお願い申し上げます。
本年は誠にありがとうございました。
新年が皆様にとって良いお年でありますように!




