第6話 関係の終焉
私たちの恋は、精神的なものだけでなく、肉体関係にまで発展していった。相変わらずお互い歪んだ愛を有していたが、私はそれに危機感を膨らませていた。歪んだ愛は、悲劇を齎すことが多いことを知っているから。ある日、私は南に言った。
「ねぇ、南、私たちの関係、終わりにしない?」
「それって、別れるってこと?琴葉まであたしを見捨てる気?」
露骨に不安を露わにする南。
「いや、そうじゃないよ。けど、一旦距離を置こう。」
「どうして?」
「南が大好きだから。歪んだ愛は時として不幸をもたらす。バッドエンドにはさせない。あんたは、絶対死なせないから。」
南は私の顔を見て噴き出した。
「何がおかしいのよ?」
「変わったね、琴葉。前は私がいないと生きていけないほど貧弱だったのに。強くなったね。もうあたしがいなくても生きていけそうね。」
「南が生きててくれれば、その時はまたどんなことにも付き合ってあげるから。それまで我慢だよ。良いね。」
私の問いかけに彼女は黙って頷いた。これ以降、私たちは一緒にいる時間を減らし、連絡も最低限にした。結果、南は徐々に人脈を取り戻し、成績も徐々に上がっていった。自分を認めてくれる人に距離を取られたことが、逆説的に彼女に生きる意味を見出したのだ。南はまた私と付き合うことを夢見て、ひたむきに努力を重ねている。そんな彼女を私は微笑ましく思った。もう、私が彼女と付き合うことは無いだろう。歪んだ愛はお互いを泥沼に引きずり込むから。一緒に入れなくても良い。恋人じゃなくても良い。南が周りの人に慕われて、生きてくれているだけで私は幸せだ。彼女は、私にとって大切な人間だから。