第1話 偽りの仮面
私、夢前琴葉。白鷺高校に通う2年生。私は17歳にして、既に人生が辛い。運の良さだけで地元の進学校である白鷺に運良く入学できたものの、劣等街道を突っ走ってきた。周りのみんなが普通にできることが、私にはできない。成績も常に最下位、運動もできない、バイト先でも怒られてばかり。何の取り柄もないし、周りに迷惑をかけてばかりの人間だ。私は、そんな自分の生きる辛さを少しでも和らげるために定期的に自分を傷付けるのだった。
ある日、私が学校に着いて教室に入ると、1人の生徒が目に映った。家にいたくないと感じた私は、その日早めに家を出たのである。星宮南は、腕のバンドを取って、自分の手首を見つめていた。そこに刻まれている無数の傷を見て、私は動揺した。星宮南と言えば、クラスのアイドル的存在。友達も多く、成績優秀、スポーツ万能、教師にも一目置かれている存在だ。そんな彼女には、悩みなどないかと思っていた。苦手なこともなく、プライベートも充実しているのだから。彼女は、気配を感じ取ったのか、急にバンドを再び手首に巻き、後ろを振り向いた。
「ねぇ、あなた、見たの?」
暫く沈黙してから、私は静かに呟いた。
「見てない…」
「その反応、見たよね?」
「見てないって。」
「誤魔化しても無駄よ。正直に答えなさい。見たの?」
「は、はい…」
彼女の詰問に観念する。
「このこと、クラスのみんなには絶対秘密よ。」
「うん。」
私はそう言って、彼女の目をじっと見つめる。
「あんた、何見てんのよ?」
「あの、その、親近感が湧いたなって思って…」
「はぁ。親近感?」
「うん。私、勉強も運動も駄目駄目だから何でもできる星宮さんが特別な存在だと思ってた。けど、そんな完全無欠の星宮さんにも悩みとかあるんだなって。」
「はぁ。一緒にしないでよね。あんたは、友だちいないじゃん。勉強もできないし、運動も駄目。努力もできない。周囲から優等生だと思われてるあたしとは根本的に違うの。」
「そんなに言わなくても良いじゃん。それに、無理して本当の自分を隠す必要もないじゃん。」
「じゃあ、あんたは今の自分に満足なわけ?勉強も運動もできず、駄目駄目な自分に。」
「それは…」
私が口ごもった丁度その時、教室の中に人が入ってきた。そこで、私たちは会話を辞めた。これが、私たちの最初の出会いだった。




