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003 情報収集

 わたしは弱い。


 ひとまず、情報が全然足りてない。

 今のままだと勝率は間違いなくゼロパーセントだろう。

 命をかける覚悟はできたものの、投げ捨てるつもりは微塵もない。


 RTAをするにも、縛りプレイをするにも、まずは情報だ。

 わたしの挑戦はいつも、情報を集めることから始まる。情報を出来る限り集めたい。


 まずは図書館へと足を向ける。

 この世界の本は前の世界と比べると高価なので、貸出なんかは基本的にしていない。

 重要な本や価値の高い本は鎖なんかで繋がれていて、閲覧許可をもらわないといけないものもあったりする。

 けれど、魔物に関しては身近な脅威なので、比較的読みやすくなっている。

 ギルドが置いている本や資料もあって、これを読み漁るのが当面の目的だ。

 とはいえ、貯金も別にそこまで多くはないし、日数をかけすぎるとまた薬草摘みに行きながらの情報収集になるので、あまり時間がかからないと嬉しい。尤も、情報は命なので手抜きはしたくないし、時間がかかるようなら薬草摘みのために戦う練習と心構えを今一度してから臨みたい。今度はゴブリンくらい、倒せるように……。


 図書館は好きだ。

 知らない人たちが皆文字を追うという1つの目的に集中するこの一体感が好き。

 まぁ、配信にハマってからはあまり行かなくなってしまったのだけれど。

 本を読む人たちをなんとはなしに見回して、空気を味わってからわたしもギルドの本棚へ。

 

 利用者も多ければ本、というか資料自体も多いので、若干煩雑な印象を受ける。読めればいいんだけどね。


 まずはどこにどんな魔物がいるのかを調べてみる。


 この大陸の大雑把な地形や生息地なんかは、冒険者になる前、お屋敷に勤めていたころに、一般教養みたいな感じで軽く教わったことがある。

 この大陸は四つの人間の国があり、囲む形で魔物の生息地がある。四帝竜と呼ばれる四頭の竜がいて、国盗りを競っている。

 竜って人間の言葉が分かるのかな?

 それとも、竜の言葉が分かる人間がいた?

 どうして国盗りしていることを人間は知ってるんだろう。

 それとも偽の情報? 政治的な何かでそういうことになっているんだろうか。

 気になるけど…… 考えても仕方ないし、調べものを続けることにする。


 今わたしがいるこの南の国は、ライダーン王国。

 防衛だけではなく、魔物の生息地を逆に奪うことを狙って、前線に騎士を多めに派遣している国。

 隣接するのはちょっとした森と、その奥に広がる広大な渓谷。

 森にはゴブリンや虫系の魔物が。渓谷には大きさの様々なゴーレムと、気性の荒い大角を生やした山羊のような魔物、鱗の硬いアースドラゴンが確認されている。

 アースドラゴンの中でも大きく硬質な個体が四帝竜の一頭に数えられる、鋼竜ということらしい。

 忠誠なのか恐怖政治なのかなんなのかはわからないけど、下の魔物どもを使って人間の街を襲わせることができるのなら、こいつを始末しなければならない。


 時間が経ち、冷静になっても許す気は起きない。やる。

 それから魔物ごとの情報を調べて頭に入れていく。


「よし、魔物の情報は思ったより詳細に調べられたかな」


 さすがはギルドのデータである。冒険者やギルド職員などから得られる様々な情報を記してくれているのだろう。こういうのがあるおかげで冒険者の死亡率はうんと下がるに違いない。


 ゲームの攻略サイトとかを読み込んでるみたいでちょっと面白かった。こういうのならいくらでも読み込めるんだよね。ただ、ここはゲームではないから、弱点みたいなゲーム的な要素は期待できなかった。逆に言えば大体の魔法は大体の魔物にダメージを与えられるだろう。人間だって、火でも雷でも氷でも大体は弱点だ。弱点の塊と言っていい。でもゲームでそれをやっちゃうと弱すぎるから普通のものと特にダメージが入るものとを用意するのだろう。

 ただ一つ参考になったのは、魔法耐性についてだ。

 力の強いものは体の周囲に垂れ流す魔力の層があったりして、対魔法の効果を下げるらしい。

 四帝竜にもなると、生半可な魔法は体まで届かないという記述もあった。どの程度の魔法がどの程度防がれるとか詳細は全然わからないけど、少なくとも今のわたしの魔法じゃダメージは与えられないだろうな。


 魔物の情報はあらかた調べたから、次は自分がどうしたら強くなれるのかを考える。


 魔法に関しては、継承の書を買って、実際に魔法を使って扱いに慣れるしかないけど、ここで一つ気になっていることがある。

 魔法の効果は、その魔法の熟練度と、魔法に込める魔力の量で強弱が決まる。

 魔力操作はどの魔法にも応用できるけど、熟練度とはつまり、この魔法はこういうものだ、と自分の中のイメージを固める作業なんじゃないかと思う。この、イメージ。前世のことを思い出したわたしからすると、ファンタジーなイメージはとてもしやすい。ゲームで、漫画で、アニメで、映画で――。常日頃から脳に染み込まされていた。

 今まで覚えた魔法も、もしかしたら今までより強く使えるかもしれない。これは要検証だ。


 武器や体術による物理的な攻撃については、以前剣を少し習ったことがある、くらいだ。

 前世の記憶はほぼ役に立たないから、機会があればまた習いたい。


 あとは、この世界の強い人というのがどれくらい強いのか、というのを知りたい。

 前の世界でも、圧倒的に強い人はいた。でもそれは、人の域を出てはいなかった。

 魔法が使えないのはもちろんのこと、素手で岩を砕いたり、剣で弾丸を斬ったりみたいな、超人的な強さを持つ人は……。

 でもこの世界は違う。剣も魔法も、魔物も竜も在る。

 それらの存在するこの世界で、どれくらい常人を越えた力が発揮できるのか。自分の強さや可能性はそれを知ることから始まると思う。

 この国の騎士は、強いと聞いたことがある。

 でも、他の国の騎士の力もこの国の騎士の力もわからないから基準がわたしの中にはない。

 加えて、おいそれと見学なんてさせてもらえないだろう。ただの足手まといなのだから。

 見学をするなら、わたしと同じ冒険者が望ましい。

 あまりお金は持ってないけど、依頼という形なら冒険者なら受けてくれる人もいそうな気がする。



 そんなわけで、やってきました冒険者ギルド。


 談笑してる人もいれば依頼を探してる人、達成報告をする人などそこそこに賑わっている。

 わたしの目的は、掲示板で依頼を探してる人。あまりお金はないので人数が少ない方が良い。できれば穴2つ異常が望ましい。

 冒険者登録証には、こなした依頼の難易度で穴を開けてもらえる。

 一つ穴で中級者。二つで上級者。三つで何でも任せて良しとみられる。

 わたしのには当然穴は開いていない。何も達成していないからね。


 邪魔にならないように壁際で、掲示板のほうを観察すること二十分くらい。

 受付でいくらか話してから掲示板で依頼書を物色する一人の女性が目に入った。

 なんだか受付の人とも仲良さそうだったし、知り合いだとしたら経験豊富そうだ。

 パーティメンバーっぽい人も周囲にはいないみたいだけど、一人で依頼を探しに来ているだけかもしれないからソロかどうかはわからない。

 でも話しかけやすそうだからこの人に声かけてみようかな。


「ねえねえ、ポニテのお姉さん」

「ん? アタシ?」

「そうです、ちょっとお話いいですか?」

「いいけど……」


ギルド内のテーブル席に移動して話を聞くことにする。


「わたしはアイリスと言います。冒険者になりたての穴無しです」

「アタシはフレズ。穴二つの冒険者やってるよ」


 おお、穴2つ! 受付でのやりとりが常連っぽかったもんね!


「お姉さん、依頼を探してたんですよね? どういったものをお探しですか?」

「そうねぇ。これって決めてたものはないんだけど、一人でできそうな軽いやつかなー」

「ソロの冒険者なんですか?」

「いやいや、パーティには入ってるよ。パーティの子が熱出ちゃってね。回復魔法はかけたしもう調子良さそうなんだけど、ちょうどいいから皆で休暇でも取ろうかって話になって。でもこれといって趣味もないし、やることもないから結局ギルドに来ちゃったってわけ」


 そっか。別にパーティ組んでても毎日一緒ってわけじゃないよね。


「よかったらなんですけど、わたしの依頼、受けてもらえないでしょうか」

「あなたの? 冒険者が冒険者に依頼ってなかなか聞かないけど……ちょっと面白そうね。内容聞いてもいい?」

「戦い方を見せてほしいんです。別に相手にする魔物はなんでもいいんですけど、5匹から10匹くらい。わたし、強くなりたくて。でも、強い人の戦いって見たことがなかったから、いろいろ勉強したいんです。あまり持ち合わせはないのですが……荷物持ちくらいはできます!」

「なるほど、感心感心。無謀にも難しい依頼に手を出しちゃう駆け出しの子とかもいる中で、慎重なのはいいことだね。いいよ、一緒に行こっか」


 鮮やかなポニーテールから受ける印象通り、とても明るく朗らかな笑顔で応えてくれた。

お読みいただきありがとうございます。

少ないですけど書き溜めた分は2日置きくらいで投稿しようと思います。

絵の締め切りとかもありますのでその後不定期になりますが落ち着いたらまた書きますのでよろしくお願いします。

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