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011 出発

 昨日は全然寝付けなかった。


 朝ご飯を食べて、宿のベッドでぼーっとするわたし。

 この期に及んで、動き出せずにいた。

 準備はしたつもりだし、各種技や魔法もそれなりに使って慣れた。と思う。

 それでもやっぱり怖かった。鋼竜がどんなのかわからないし。

 どれくらい大きくてどんな攻撃をしてくるんだろう。

 考えても答えの出ないことを延々と考えてしまう。

 今日は止めてしまおうか。

 天井を眺めたり寝返りをうったり、忙しい。

 そもそも人が勝てるような相手じゃないんじゃないの。勝てるような相手ならもうとっくに倒してるんじゃないの。

 どうして戦おうと思ったんだろう。どう考えてもばかだ。

 人が魔物に襲われるのは仕方ないじゃない。今までだってずっとそうだったんだから。

 たまたま知人が襲われたっていうだけ。そんなこと、この世界では普通なんだもん。

 仕事もまた探せばいいじゃない。冒険者なんかやめて、もっと内陸部に行ってさ……。

 そう思ったけど、内陸部は同じ目的の人が集まるし競争が激しそうだ。そこそこ戦える今なら冒険者の方が稼げそう……死ぬリスクは当然あるけど。相手を選べばかなり小さくリスクを抑えることはできると思う。

 じゃあ結局はここで戦っていくのか。

 はぁ、なんかもうやだな。

 そもそも人の怒りなんて、そんなに長続きしない。

 わたしの場合、冒険者に戻ってから狩りをして、金策をして、検証をして、いろいろやってる時間が長すぎた。最初に感じた怒りなんて霧散している。もともとあまり怒らない人間だったのだ。怒っているときって気持ち悪くて、早く気持ちを投げ出してしまいたくなる。

 今のわたしとしてはどちらかというと、今後起きうる魔物の被害を減らすことで未来のわたしが嫌な思いをする可能性を減らしたいというのがモチベーションと言えばそうだと思う。

 それだって良いことじゃない。言い聞かせて立ち上がる。


「よし! 行こうっ!」



 通い慣れた森への道を歩いていく。

 体力を温存したいのはあるけど、別に走ってもそう消耗しないと思う。

 無数に吸収したゴブリンの魔力で基礎体力的なものが強化されているから。だと思う。


 そのことについて、先人の知恵も情報もないから自分で検証した結果を基に考えるしかない。

 試行回数もわたし一人分しかなく、おいそれと増やすわけにもいかず、もはや妄想も織り交ぜたような、この世界で強くなることの法則。

 それでも、何も知らずに、我武者羅に、敵を倒すだけよりはいいと思う。強くなる実感は、ないよりはあった方が良いに決まっている。

 きっと強くなってる。大丈夫。

 目に入ってくる、いつもの岩。その岩が、わたしが強くなっていることを証明している。

 時にわたしを物理的にも精神的にも支えてくれて、時に力の検証に付き合ってくれた相棒だ。

 最初の頃よりかなり動いている。と言っても三十センチくらいだろうか。

 いや、これだけの岩が動くのはすごいことだと思うんだけど。押したり少し持ち上げたりもできるようになってきた。

 今日は、少し撫でてその場を後にする。

 この岩を動かすとかしていたら、無駄に体力を消耗する。さすがに。


 そうしてやってきたのは、これもいつもの森。

 ここから少し進むくらいまでの範囲はもう庭のようなものだ。何が出てきても対処できると思う。思いたい。だってまだゴブリンとしか戦ったことないし。強がってはみたけど希望的観測だ。他の魔物もいるはずなんだけど。

 今日はそこからさらに進んでいく。奥の奥。鋼竜の居るところまで。


 一応、強化魔法を各種かけておいた。

 魔法がなくてもこの辺なら戦えると思うけど、念のため。


 いつもよりだいぶ奥へ来たな、と感じていたころ、狼のような生き物が目の前に現れた、と思った瞬間には襲い掛かられていた。

 急いで剣を抜き、口を剣で抑えてから、蹴り飛ばす。

 幸い、振り払っただけのつもりのそれで足が震える程度には効いているらしかった。

 打撃の威力もだいぶ上がってる!


 そのまま躊躇せず首に剣を刺し、止めを刺した。

 これは恐らくフォレストウルフ。

 実物は初めて見たけど、森に広く生息する狼に近い魔物だ。

 そこそこ戦えれば負ける方が難しいくらいの魔物だけど、やたら好戦的で殺さなければしつこく追ってくるらしい。なのでちゃんと止めを刺すことが重要。

 フォレストウルフも討伐依頼は常設のように出ているけど、毛皮の納品がわたしには面倒だったので、今まで戦おうとはしてこなかった。それは今も変わらないから、荷物も増やしたくないし、何も取ることはせず先へと進む。


 その後も何匹かフォレストウルフと遭遇したけど、全部倒してきた。

 こんな序盤から気配を消す魔法や技を使いたくなかったし、逃げればどうせ追ってくるのが分かっている上に振り切るのは難しいから。運よく発見したパーティが戦利品として持ち帰るも良し。他の魔物が食べるのも……まぁ、この際良し。別に少し餌があったところで魔物の数に影響しないだろうし。


 特に疲れを感じることもなく、やがて森が終わりを告げる。

 眼前に広がったのは、山? 谷? こういうのを渓谷って、言うのかな。

 もちろん完全無欠なるインドア派だったわたしは、こういう大自然みたいな光景を初めて見た。割とちょっと感動している。


 山が高いのは当然として、現在値より低いところもあり、川が流れていたりする。森から流れていたのが繋がっているのかな。

 ここからでも見えるけど、斜面に生える木が段々減っていっていて、奥の方は岩山のようになっているみたい。

 ここからだとさすがに、魔物とかは見えない。

 タイラントゴートとは遭遇したくなくて、できるだけゴーレムの生息地帯を戦闘を回避しながら素通りしていきたいんだけど……。

 ゴーレムはともかく、タイラントゴートはどれだけ動きが早いか想像できない。フォレストウルフのように俊敏で、しつこく追ってくる魔物だったら、いちいち相手にしていたら鋼竜を目にする頃には疲れ切っていることだろう。それは避けたい。

 木があるところを生息地にしているのか。あるいは、岩がはだけているところか。川沿いに進んで、水を飲みに来てるところと鉢合わせたりしないか。

 うーん…… どこから行こうかなぁ。

お読みいただきありがとうございます。

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