#8 見取り図
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(シデン視点──少し時間が遡ります)
「誰かいるのか?」
隠れた直後にそう声がした。
(バレたか?)
サラ、リアに目線で問うが、二人共何とも判断しようにないようだ。
(まずは様子を……)
気のせいだと思ってくれれば、立ち去るだろうしな。
「小腹が空いてな。もし、君もそうなら咎めるつもりはない。寝る前に一杯やろうじゃないか」
う……バレてる。しかも、ちょっといい奴っぽいな。
(だが、くそ……見つかる訳にはいかない)
俺やサラは勿論、リアも見つかる訳にはいかない理由がある。くそ、しかし……
(出ていくしかないか)
俺は目線で二人に隠れているように合図をすると、ゆっくりと立ち上がった。
「やっと出てきたか。ほら、一杯やろうぜ」
本当にいい奴。だが、スマン! 今は寝ててくれ!
(峰打ちだ! 朝には目を覚ますだろ!)
俺は踏み込みと共に斬撃を放った!
ザン! バタ……
男が倒れる音がする。本当に悪いことをした……
“す、凄い。一撃で気絶させるなんて”
“シデンだもん。当たり前だよ”
“でも、相手はシデンさんに気づいていましたし……よほどの達人でもここまでは”
“シデンが凄いのはまだまだここからなんたから!”
リアとサラが何やら話しているが、内容はちょっと照れくさいからノーリアクションで行こう……
(……っと、この人を起こしておいてあげないとな)
せめて楽な姿勢で──って、ん? 姿勢を変えた時に何か落ちて……
(こ、これは!)
何気なく拾ったそれはこの要塞の見取り図。今の俺達が喉から手が出るほど欲していたものだ!
“シデンどうしたの? ……って、これ!”
サラも近づいてきて、俺の手の中のものを見て驚いた声を上げる。無理もない。こんな偶然を誰が予想するだろうか。
「……! 流石シデンさん。サラの言った通りね」
リアが何かに納得したように頷いてるが……これはただの偶然だぞ?
「そ、そうよ。私の言った通りでしょ?」
サラが自慢げに胸を反らせるが……そこは否定していいとこだろ!
(とりあえず先へ行くか)
俺は男を寝かせると、見取り図に目を走らせた。
※
色々考えた結果、俺達は一旦地下部分に潜り、それから出口へ向かうことにした。
(最短経路で行きたいところだけど、さっきみたいなことを避けるためにも人がいそうや場所は迂回しないとな)
人がいそうな場所とは兵士達の居住者スペースだ。そこを避けるとなると……地下を通るルートしかないな。
(しかし、地下には何があるのかな……)
あの男から拝借した見取り図には地下が何に使われているのかについては一切かかれてなかったのだ。
(一体何が……って地下牢か)
まあ、定番ではある。が……
(女子どもばかりじゃないか)
勿論女子どもだからって言って罪を犯さない訳じゃないし、単純に“可愛そうだから止めろ!”と言いたい訳じゃない。が、地下牢は過酷な環境だ。体力のない者では例え短期間でも死んでもしまう可能性だってあるのだ。
“……酷い”
目に入ってくる光景にリアが思わず呟く。もう息も絶え絶えって人も多そうだ。
“シデン……”
“ああ”
今の俺達は目立てない立場だが……これはいくら何でも見過ごせない。
“こんな非道……国の法にも反しています! 止めないと”
“でも、どうしたら……”
思いは共有出来たが、そのための方策が俺にはない……だってしがない中年だもの。
“シデン、あれ!”
だが、答えはあっさりともたらされた。
(何だ、あれは?)
よく見ると、この空地下牢の柱は全て繋がっている。まるで鳥かごのような形状になっているその先には悪魔を思わせる薄気味悪い顔の彫刻が施されている。
「これはまさか“幻魔の牢”!」
「知ってるのか、リア?」
リアは硬い表情のまま頷いた。
「中にいるものに悪夢を見せて弱らせる魔導具です。一度中に入れば最後、起きている間は生気を吸い取られ、寝ている間は悪夢で気力を奪われる最低な魔導具です!」
き、聞くだけで恐ろしい魔導具だな。
「魔導具を隠し持っている者がいないかどうか厳正に監視しているというのに、まさか、
こんなものがまだ残っていたなんて……伯父様の言いつけに反します」
実は魔導具持っている娘が近くにいるけど……
(いや、今はそれどころじゃないな)
ここの人達にはもうあまり猶予がない。それに生気を吸い取られるというなら俺達の身も危ないし。
「リア、どうすれば壊せる? あの気味悪い顔が弱点か?」
「えっ……ええ。あれが人の生気を吸うための──でも、駄目です! 目には見えませんが、ドラゴンが乗っても割れない透明の壁が幾枚も張り巡らされているんです!」
ドラゴンが乗っても割れない……丈夫そうだな、それ。
(あの面、こっち見て笑ってないか?)
有り得ない事かもしれないが、そんな気がする。俺達の言葉が理解できるのか?
「見えるところに弱点があるのに届かない。それもまた囚人の絶望を誘う代物。あれは無視して別の方法を……ってシデンさん聞いてます!?」
構える俺を見て、リアが困惑した声を上げる。無理もないな。
(まあ、最低でもクロムタートルの甲羅くらいの硬度くらいはあるだろうな)
だが、幸い相手は動かない。威力に意識を集中すれば良い。
バッ!
俺はジャンプして気味の悪い面を剣の間合いに納める。そして、そのまま……
ザン!
いつもの音と手応えがあった!
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